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世界各地で子育て奮闘中のお母さん・お父さんから同業の小児科医の先生方まで、いろんな人に読んでもらえるブログを目指します。

佐々木 潤

東京医科歯科大学卒業、横須賀海軍病院を経て、ニューヨークで一般小児研修、マイアミで小児集中治療、循環器集中治療の専門研修を修了。現在は、マイアミのニクラスこども病院にて小児循環器集中治療の指導医として働いている。

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2013/07/24

米国臨床研修への道はますます厳しくなる!?

(この記事は、若手医師と医学生のための情報サイトCadetto.jp http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/cadetto/ に寄稿されたものです。Cadetto.jpをご覧になるには会員登録が必要です。)

去る3月15日に今年の米国レジデンシーマッチの結果が公表されました。そこで、この結果から見る今後の米国臨床研修の方向性を検討したいと思います。結論から言うと、外国人である我々日本人が米国で臨床研修をするのは今後ますます厳しくなりそうです。

NRMP(National Resident Matching Program)による、2011年のデータでは米国医学部出身者は1万6559人で1万5588人(94.1%)がマッチし、米国国籍を持たない外国医学部出身者では6659人が応募し、2721人(40.9%)がマッチしています。当然ですが、米国医学部出身者は非常に高いマッチ率です。

ここで、「米国国籍を持たない外国医学部出身者」と強調しているのは、近年米国市民権をもちながら海外の医学部を卒業し、レジデンシーで帰国する学生が増えているからです。その数は1991年時点で、601人だったのが2011年時点で3769人と6倍以上に増えています。しかし、その「海外」の医学部大半が、米国から目と鼻の先にあるカリブ海に位置しており、最初の2年間はそのカリブ海の校舎で講義を受けるものの、残り2年間は米国本土の病院で臨床研修をしています。つまり、米国で就職することが前提になっているのです。

そして、米国籍を持たない外国医学部出身者には必ずビザの問題が足かせとなります。ビザの発給がレジデンシー開始の7月に間に合わないことも多くあり、病院側からするとなるべく避けたい問題です。大多数が、交換留学ビザといわれ取得も容易なJ-1ビザで渡米しますが、これにはいずれ本国に2年間帰国しなければいけないという制約つきです。もうひとつのビザが、就労ビザといわれるH-1bビザですが、これは2年間帰国しなければならない制約がない反面、病院側が弁護士費用などを払わなければならず、敬遠されます。そのため最近このH-1bビザを支援しない病院が大多数になってしまいました。

私の働くマイアミこども病院でも今年からレジデントに対してH-1bビザを支給せず、その結果外国人、特にインド人が急激に減りました。インドからは永住目的で渡米する人が大多数で、彼らは特にH-1bビザを希望する人が多いからです。米国国籍を持たない外国医学部出身者のマッチ率の過去のデータ(1985~2010年)をみてみると、そのマッチ率は最低が1985年で21.6%、最高が1992年で63.4%となっています。しかし、2000年代に入ると50%台になり、過去3年間では40%台で、傾向としてはここ10年間で確実に下降線を辿っています。

その最大の原因が、米国医学部卒業生の増加です。そして、2015年にはついに米国医学部卒業生の数が、インターンの研修ポジション数を上回ると予想されています。それは、現在米国で働く医師の約25%、現レジデントの10~15%が外国人であるという事実を根拠に、米国には医師が不足しているので医学部を増やすべきとの政策がとられているからです。米国全体の卒後一年目の研修ポジションは、1991年時点では2万192だったのが、2011年現在では2万3421と増えていますが、米国医学部卒業生の数はそれを上回る速度で増えており、2017年までには約2万7000になるとの予想です。(参照:Traverso G. Residency training and international medical graduates: coming to America no more. JAMA. 2012 Dec 5;308(21):2193-4.)

そのような状況の中で、日本の医学部卒業生は毎年何人くらい米国レジデンシーにきているのでしょうか。ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)の統計によると2011年に日本の医学部出身者で米国で臨床研修するために必要なECFMGの資格を得たのは73人でした。しかし、統計がないので正確な数は不明ですが、実際にマッチに応募して研修ポジションを獲得したのはもっと少なく、私自身の個人的なネットワークを通じて得た情報を総合しても、20人前後ではないかと思います。国別で一番多いのはインドで、2000人ほどです。今後も、米国での外国医学部出身者の減少傾向は止まらないでしょう。

参照先
1. ECFMG website http://www.ecfmg.org/
2. NRMP website http://www.nrmp.org/

2件のコメント

  1. Motoko Martin より:

    佐々木先生、こんにちは。
    IMGはこれからますます厳しくなるようで現実を知らされますね。
    うちの大学はIMGがほとんどです。
    この話を研修医にしましたら、もうボクには、私には関係ないから、と言われましたよ。
    いつもいっしょに働いているパラメディックの若者がフアレス(エルパソと国境を分かち合っているメキシコの町)にある医学部に受かって1月から通うことになったというので考え直してエルパソに新しくできたメディカルスクールを狙ったら?という話をしました。
    でも、彼は大学卒ではないのでメキシコに行くほうが早道なんだそうです。
    急がば回れ、と言いますがこの若者の判断が正しいかどうかは開けてびっくり、なんでしょう。6年後にはその答えが出ます。
    よくできそうな感じの子なのでできればお金がかかってもUSAのメディカルスクールを目指してほしいと私は思いました。
    私はマイアミにむかし住んでいました。ノバを出ています。(駅前のではありませんよ)
    懐かしいです。
    キューバンコーヒー、よく飲みました。
    先生も頑張って下さいね!!

  2. 通りすがり より:

    今でも外国人は家庭医 小児科 内科 病理くらいでしか受け入れて貰えなかったのに
    こうなるとそれすら絶望的ですね。
    所で病理は何故人気がイマイチなんでしょう?
    給料もそこまで低くはないしリスクは低いので良さそうな気がしますが

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