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金一東

ブログについて

アメリカの一町医者として、内科・小児科を中心にしたプライマリ・ケアの実践、医学生・研修医の指導、公衆衛生大学院での勉強、クリニックの経営などを通じて、関わってきたアメリカ医療の一面を私流の独断と偏見に基づいて語りたいと思います。

金一東

岡山大学卒業。横須賀米海軍病院、徳洲会病院で研修後、外人相手のクリニックでプライマリ・ケアを。渡米し、内科・小児科の合併研修。スクリプス・クリニック勤務後、日本人相手のクリニックの院長に。コロンビア大、SDSUの公衆衛生大学院で疫学を勉強。医療過誤の研究にも関心あり。将来の夢は、本を出版すること。

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私は、カリフォルニア州はメキシコ国境に近いサンディエゴという街で、日本人相手のクリニックで働いている内科医兼小児科医です。私は医療制度の研究者でも、健康保険の専門家でもありません。ただ過去に2度、公衆衛生大学院でアメリカの健康保険の勉強を若干したのと、アメリカで17年以上医師をしていて、自分なりに健康保険について勉強してきたので、少しはアメリカの健康保険について語れるのではないかと思っているのです。ただ、専門家ではないのであくまでも「たわごと」として読んでいただければ幸いです。

 

アメリカの健康保険の特徴

アメリカの健康保険の特徴を考えてみましょう。アメリカの医療の特徴と言い換えてもかまいません。いくつも特徴があるかと思いますがここでは、以下の4点に整理してみます。ただ、これは単なる私の感想です。

1)国民皆保険制度がない

2)健康保険の基本は民間の健康保険である

3)健康保険の大半は、雇用を通じて付与される

4)基本的に自由診療である

以下、簡単に説明してみましょう。

 

国民皆保険制度のない国

アメリカは、他の多くの先進国が採用している、国民皆保険制度のない国です。国民の誰もが保険に入れて、医療機関にアクセスできる、という制度がアメリカには存在しないのです。日本の健康保険制度は、何らかの健康保険に入らないといけない強制保険に基づいていていますが、アメリカは基本的に国民(市民)任せなのです。従って、アメリカには全国民が対象になる健康保険制度なるものは存在しません。

このコンセプトをまず理解しないとアメリカの健康保険についての理解は困難になります。すなわち、アメリカでは国が行っている公的健康保険というのは65 歳以上の人が対象のメディケアや貧困者対象のメディケイド(カリフォルニア州ではメディキャルと呼ばれています)などごく限られたものだけなのです。そのメディケアですら、65歳で自動的に付与されるのではなく、何年も保険料を払ってその権利を獲得しないと入れません。

すると、公的保険を持っていないアメリカ人は健康保険をどうしているのでしょうか?答えは、民間保険に入っているか、健康保険そのものを持っていないかのどちらかなのです。無保険者の数が4000万人以上に上りますが、無保険者を含む公的健康保険を作ろうとする動きはすべて共和党やAMA(アメリカ医師会)、あるいは保守的な人たちによってことごとく反対されてきています。最近では、オバマ大統領が提唱した公的保険も共和党の反対で実現しませんでした。

(続く)

 

 

4件のコメント

  1. サンディエゴで2008年にお会いして以来です。その節はお世話になりました。あれから、アメリカの医療制度も大きくかわろうとしていますが、クリニックにはどんな影響が始まっているのか、現場からの声はとても貴重です。病院の勤務医には”経営”という感覚が薄く、実感がわきません。ブログの続き楽しみにしています!

    • 浅井先生、お久しぶりです。コメントありがとうございます。シカゴでご活躍されているようですね。知識としてしっていたアメリカの健康保険というものが、実際にクリニック経営をして(私は雇われているだけですが)健康保険を扱って今まで見えていなかったことが見えて来ました。ただ、それだけでもアメリカの健康保険というのは理解できなくて、やはり大局的な知識も必要になってきます。健康保険の話題では、いろいろおもしろい話もありますので、そんな話もこれから紹介していきます。

  2. お久しぶりです。保険のはなし、アメリカの医療をしるには必須ですよね。もっともってかいてくださいませ。またシカゴかサンディエゴでおあいしましょう。

    • 中川先生、コメントありがとうございます。忙しくてなかなか続きを書くことができませんが、できるだけ、シリーズを続けたいと思います。また、読んでください。保険の歴史にも触れる予定です。

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