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宮下浩孝

ブログについて

腫瘍内科の歴史が長い米国での臨床トレーニングの体験をシェアすることで、医学生や若い医師が腫瘍内科に興味を持つきっかけになりたいです。

宮下浩孝

2017年東京大学医学部卒業。東京大学附属病院での2年間の臨床研修、ニューヨークのマウントサイナイベスイスラエルでの3年間の内科研修を経て、2022年7月からダートマス大学にて血液、腫瘍内科フェローシップを開始。 固形腫瘍に対する新たな治療の確立に貢献したいと考えています。

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1か月間のオリエンテーション、血液/腫瘍内科外来の研修がおわり、9月はいよいよ血液内科病棟での業務となりました。私が所属している研修プログラムではこの血液内科病棟での業務が最も多忙なローテーションとされています。また、ダートマスがんセンターのあるニューハンプシャー州レバノンは冬の雪や寒さが厳しいため、夏の間のみレバノンで過ごし、冬はフロリダやハワイですごす人が少なくありません。夏も終わりに差し掛かり、10月ごろにまた暖かい地域に帰る前に一度外来を受診しておこうということで、多くの人が9月に外来を受診します。そのうちの一定割合で異常が見つかり入院が必要となるため、9月の病棟は比較的忙しくなるそうです。そのような話を聞き、戦々恐々としながら研修を開始しましたが、確かに多忙ではあったものの、たくさんの症例を経験し、非常に学びの多い1か月になったように思います。

 

血液内科病棟

ダートマスがんセンターの血液内科病棟には20床のベッドがあり、2つのチームが10床ずつを担当しています。ひとつのチームは指導医、シニアレジデント(医師2年目)、インターン(医師1年目)が一人ずつで構成されており、フェロー(後期研修医)は2つのチームいずれにも所属して最大で20人の患者さんを担当することとなります。一般的な治療や検査のオーダーはインターンやレジデントが行うため、フェローは患者さんの治療計画の立案や緊急時の対応、インターン、レジデントへの教育が主な仕事となります。指導医のバックアップのもと、同時に最大20症例を経験することで、効率的に知識や経験を積むことができるように研修プログラムが設計されているように感じました。

主な症例は急性白血病やリンパ腫ですが、慢性リンパ性白血病の方に対するVenetoclaxの導入のための入院や、難治性のホジキンリンパ腫に対する自家造血幹細胞移植といった症例は日本に比べてアメリカで頻度の高い症例かと思われます。また、難治性リンパ腫や骨髄腫に対するCAR-T療法も行っており、ニューハンプシャー州や近隣の州の病院から患者さんを紹介されることも非常に多くありました。

 

血液内科コンサルト

以上のような血液内科病棟での管理を経験することと同時に、フェローの大きな仕事の一つとして、同院の他科や他院からの血液疾患に関するコンサルトを受けるということがあります。ニューハンプシャー州には血液内科専門医が常駐していない病院も多くあります。そのような病院はダートマス大学の血液内科にいつでも電話でコンサルトできるようになっており、そのファーストコンタクトが血液内科フェローとなっています。多くの症例は原因不明の貧血、血小板減少、白血球減少に関する相談であり、必要な検査をアドバイスすることになります。中には新規の急性白血病、重症の血小板減少症、溶血性貧血など、緊急で血液内科に入院する必要がある症例もあります。このようなコンサルトを受け、トリアージを行うことで、血液疾患に対する初期対応、緊急対応を学ぶことができるようになっています。

 

1日の流れ

主な一日の業務の流れとしては以下のようになります。

7:00 – 8:30:病棟の患者さん、コンサルトでフォローしている患者さんのバイタルや検査データのチェック、必要があれば診察、骨髄生検などを行います。

8:30 – 9:00:主任看護師、ソーシャルワーカー、ケースマネージャーと退院計画に関するミーティングがあります。

9:00 – 12:00:回診を行います。(フェローが回診でのディスカッションなどを主導し、指導医が必要に応じて意見を言うことになっています)

12:00 – 17:00:コンサルトや病棟の患者さんへの対応を行います。週に1度血液病理カンファレンスと血液内科カンファレンスがあり、フェローがプレゼンテーションを行います。週に2コマ、血液内科と腫瘍内科の外来を担当しているので、コンサルトを受けながら外来も行います。

17:00 –:病棟のレジデントと夜間対応に関する打ち合わせを行い、やり残した仕事を片付けます。

このような業務を月曜日から土曜日まで行い、日曜日は休みです。平日は当直は基本的にはありませんが、土曜日は当直として、日曜日の朝まで緊急対応や患者相談を行います。

 

アメリカではフェローシップを修了したらすぐに指導医として機能することを求められます。以上のような短期間で多くの症例を経験させる研修システムによって、効率的なレベルアップを促しているように感じました。

 

10月は緩和ケアでの研修の予定です。血液、腫瘍内科ではがんに伴う疼痛をはじめとして、様々な症状のコントロールが大変重要な課題です。また、重篤な疾患の告知、積極的治療から緩和的アプローチへの移行など、緩和ケアのスキルが必要になる場面も非常に多くあります。引き続きより良い腫瘍内科医となれるよう学んでいきたいと思います。

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