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反田篤志

ブログについて

最適な医療とは何でしょうか?命が最も長らえる医療?コストがかからない医療?誰でも心おきなくかかれる医療?答えはよく分かりません。私の日米での体験や知識から、皆さんがそれを考えるためのちょっとした材料を提供できればと思います。ちなみにブログ内の意見は私個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

反田篤志

2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修後、ニューヨークで内科研修、メイヨークリニックで予防医学フェローを修める。米国内科専門医、米国予防医学専門医、公衆衛生学修士。医療の質向上を専門とする。在米日本人の健康増進に寄与することを目的に、米国医療情報プラットフォーム『あめいろぐ』を共同設立。

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前回の記事はこちらをご覧ください。

まずは保険会社に連絡を取りました。するとこのような返答が来ました。「あなたは二つの保険者番号をお持ちです。まずは片方を削除し、その後二つの情報を統合する必要があります。(契約者である)雇用主の保険担当に連絡を取ってください」。

最初は今一つ内容が飲み込めませんでしたが、まとめるとこういうことです。まず、昨年まで使っていた保険者番号が今でも有効になっていて、その番号でエコー検査を受けたため、保険手続きもそのまま行われた。したがって、その番号へのDeductibleである300ドルがエコー検査にかかった。次からの診察では、新しい保険者番号が記載されたカードを使ったため、保険手続き上では別の人が診療を受けたことになっている。そして、新番号でのDeductibleである300ドルをさらに支払う必要があった。

エコー検査で古いカードを使ってしまったこちらが悪いのですが、それにしても「それはないでしょ」と言いたくなるこのいい加減さ。早速雇用主の保険担当に連絡を取り、古い保険者番号を削除してもらうまでに二週間。保険会社がアカウントが削除されたことを確認し、二つの情報を統合して新たな請求書を発行するまでに、そこから一カ月。なんやかんやで問題は解決されましたが、これまた診療所や病院にその支払いを待ってもらうために、頭を下げながら説明すること数度。悪いことをしているわけでもないのに、支払いを猶予してもらうのはあまり気持ちのいいものではないですね。

日本では「自己責任」的な風潮の台頭もあって、皆保険制度に異議を唱えるような声も聞こえますが、国家による皆保険制度の維持は揺るがしてはいけない医療制度の根幹だと思います。皆保険制度は医療経済的にも効率がいいと言われていますが、一度でも米国での保険診療を体験したことがある人なら、数字を見せられなくても感覚的に分かるのではないでしょうか。皆保険制度には窮屈な面もあるかもしれませんが、被保険者(患者)の視点から見て、契約手続き上の面倒やそれに伴う費用、時間的コスト、ストレスなどは日本の方が圧倒的に少ないでしょう。

米国に来て診療を受ける際には、日本では想像もしなかった面倒が起ることは覚悟しておいた方がいいかもしれません。医師である私自身も、患者側に立ち、問題に直面して初めて分かったことが少なくありません。しかし、全ての可能性を考慮して、情報を事前に仕入れておくというのはかなり困難な作業です。最低限自分のかかる医師や病院が保険でカバーされているかを確認する必要がありますが、あとは問題が起こったらその度に対処するのが実践的ではないでしょうか。

私ができる現実的なアドバイスとしては、1.何が起こっても驚かない胆力を身につけ、心の準備をしておくこと。2.何か起こった際に相談できる相手、もしくは相談できる部署を確保しておくこと。3.何か起こったら、あらゆる方法を駆使して問題の解決を目指し、途中で諦めないこと。このくらいでしょうか。あまりお役にたてずすみません。

5件のコメント

  1. 西伊豆の小病院で整形外科をやっております仲田和正と申します。
    大変興味深くこのサイトを見ております。
    昔、ECFMG・VQEを取ったのですが、ついに留学はかないませんでした。
    2年ほど前、ソウルアメリカンスクールの教員が下田へ修学旅行に来て自転車で転倒、大腿骨頚部骨折で当院に入院して手術しました。米国の保険会社から頻回に電話があり、状況を説明していたのですが、退院させたと同時に、保険会社と全く連絡が取れなくなりました。
    入院費用は160万円ほどで決して安くはありませんから、大変弱り、ソウルアメリカンスクールに
    泣きついたら、驚いてすぐ立て替えてくれました。保険会社は最初から、踏み倒すつもりだったのでしょうか。それ以来、米国の保険会社が信じられないのです。

    • 仲田先生 コメントありがとうございます!それはすごい体験ですね…ソウルアメリカンスクールが立て替えてくれたのは不幸中の幸いだったのではないでしょうか。実際日本で勤務している時にそういうことが起こったら、僕もどう対処していいのか分かりません…しかしそれにしてもちょっとその対応は残念ですね。

  2. アメリカの保険会社には最初は高額請求したり、被保険者から問い合わせがあっても何回かは無視するようにというマニュアルがあると勤務していたことがある方に聞いたことがあります。そうやってむしり取れるところは取ってやろうと言うことなのでしょうか。。。

    • Bobさん それは恐ろしいマニュアルですね…本当でしょうか?ぜひ実際に勤務していた(している)人からお話しを伺ってみたいです。

  3. 初めまして。ひろぽんと申しますアメリカの大学を卒業して以来、保険会社のIT部門で働いています。レセプトを処理するシステムから始まり、今ではそのデータを下に保険会社に情報を提供しるシステム開発に携わっています。「NY研修医の出産事情(3)-保険契約の落とし穴1」を拝読したときに、「その年、新年を迎えて契約内容が変更されました。それに伴い、保険者番号も変わり、新たな保険カードが家に届きました。」とあって、どうして保険者番号が同じ保険外社内で変わるのだろうと不思議に思っていました。PPOからHMOに変えたというような場合は変わることもあるかもしれませんが、変わる必要はないはずだし、古いほうのカードは使えないはずですよね。残念ながら、たらいまわしになることはよくあることですよね。私は、病院からの請求書と保険会社からのEOBを見てから出なくては絶対に支払いはしません。EOBの額がおかしいと思ったら、保険会社に確認をしますが基本的にはEOBで記載された額以上は払いません。一度病院に余計に払ってしまうと取り戻すのは本当に大変ですよね。

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