エクモスペシャリストのパム 前回までのあらすじ
~仕事ができない人と思っていたエクモスペシャリストのパム。ところが、彼女の僕に恋人をみつけてあげようパワーは強力であった。僕の電話番号を書いた紙を、パムが透析レジデントのリサに渡してから一週間。鳴らぬ電話。彼女の安否が心配される~
朝エクモの人達を見る、いわゆるエクモ回診が日課になっています。先日エクモ回診をしていると、パムが話しかけてきました。
「ヒロ、どう、連絡きた?どう?」僕はよく英語わかんないな雰囲気を出しつつ(実際にわからない)、「彼女最近みないけど休んでるのかな?」と聞くと、「昨日もプラズマフェレーシスしに来てたわよ」とのことでした。どうやら彼女は無事に生きているみたいだ。
「ヒロ、それでどうなの、連絡きたの?」としつこく聞くパムに、「いや、来てないよ、ありがとう、パム」、と哀愁を出しながら言うと、キューピッド魂に火がついたのか、
「ヒロ、彼女は興味ありそうだったわよ、シングルだし、ヒロからの連絡を待ってるんだと思うわ、連絡するべきよ。でも、連絡先は恥ずかしがって教えてくれなかったのよね」
いや、それ絶対だめなやつでしょ、と思いましたが、間髪いれずにパムの攻撃は続きます。
「ヒロ、ペイジしなさい、ペイジ。彼女リサっていうの、番号0000だから、この名前の人この人しかいないから。私調べておいたから。」
ペイジとは、いわゆるポケベルみたいなもの(ペイジャー)で連絡をとることを言います。ペイジャーは医師やPA、APN(スーパーナース)が常備していて、緊急の用事や情報交換などに用いられる連絡ツールです。
写真のような画面から文章を入力し、自分の番号などを伝えて相手から連絡が来るのを待つといったスタイルです。直接返信できなかったり、わざわざ病院のコンピューターからアクセスしないと送れなかったりと色々と不便です。勤務初日に渡されて最初のうちはなんかかっこいいかもと思って持ってましたが、2日でめんどくさくなり、ペイジを携帯のメールにダイレクトで転送できることがわかったのでもうペイジャーは持ち歩いていません。逆になんでみんな持ち歩いてるのか謎です。家で探したらおそらくずっと前に電池切れになったペイジャーがみつかりました。
「ヒロ、彼女は連絡したくないんじゃないの、ヒロが興味ないんじゃないかって心配しているのよ、だからヒロの方からペイジするべきよ」
いまだかつてこれほどまでにポジティブな考え方ができる人に出会ったことはありませんでした。でもなんだか、パムの言ってること、信じてみようと思いペイジしてみました(コンフォタブルゾーンからの逸脱が今年の抱負です)。
2日経ちましたが特になんの動きもありません。ペイジがうまく機能していない可能性が考えられるので、病院のITサービスに連絡してみようと思います。
北原 大翔先生への質問はこちらまで↓
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若手心臓外科医の会 (http://jaycs.jp)で留学ブログを担当。
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