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ブログについて

現在日系のクリニックでニューヨーク近郊の日本人のかかりつけ医として日々奮闘しております。自ら海外駐在員であった経験と産業/予防医学の専門性を生かし、駐在員とその家族の健康維持に関する情報や、アメリカのプライマリーケアの一面を紹介できたらと思います。

中釜 知則

広島大学総合科学部卒業。住友信託銀行に就職しニューヨークに駐在。ポートフォリオマネージメントに従事後帰国を前に退職。 セーバー医科大学、イリノイ大学医学部産業/環境医学科卒業。ヒンズデール病院家庭医学レジデンシー、イリノイ大学産業環境医学レジデンシー修了。同公衆衛生大学院を卒業し公衆衛生修士号を取得。米国予防医学会認定医。産業医学専門医。現在マンハッタンウェルネスメディカルケアークリニックグループ総院長。

中釜 知則のブログ
2012/01/10

アメリカで臨床をしている理由(転職編)その2

いざ、メディカルスクールを目指し始動したものの、やはり難問山積。もともと文科系の僕は、まずメディカルスクールのprerequisit単位として生物、化学、物理といった基礎科学に加え、統計、心理学などを取得することから始めなければなりません。こつこつとコミュニティーカレッジに通い、何とか1年半ほどですべてを終了することが出来ました。

一方MCATとよばれるメディカルスクール入学のための標準テストの準備を進めつつ、受験する学校を調べていましたが、ある指導教官からカリブにある学校にしてみてはとアドバイスをうけました。その理由は、時間がとにかく惜しい僕にとって、3学期制で入学の機会が年3回あること、最初の20ヶ月は集中して基礎医学を学び、米国内メディカルスクールよりも短い期間で米国に戻って臨床のローテーションを終えることにが出来ることでした。デメリットは、島での不自由な生活はさることながら、入学後の基礎医学科目の20ヶ月は非常に中身が濃く、落第者数も多くて、結果として卒業できない場合も少なくないということ。また海外医学部卒業生はUSMLEも高得点で合格しなければレジデンシープログラムのインタビューさえ得られないこともあることなど。ハイリスクな賭けでした。もとより背水の陣で臨んだ僕としては、米国内医学部のインタビューと合格、入学を待つより、そのリスクを負いたいと考え海を渡ることにきめました。

僕が選んだ学校はオランダ領アンティール諸島にあるセーバー医科大学。当時、いくつかのカリブの医学校の中で全米の州から認定されている4つの学校のひとつであること、小規模なクラスでUSMLE受験までの指導がそれぞれの生徒まで行き届いていること、すでにそこを卒業した内科医の友人がいい学校だと推薦してくれたことが理由でした。

灼熱の太陽の下、ビーチには目もくれない日々が始まりました。トイレに行くのも分厚いテキストを持ち、ビーチバレーに興じたりダイビングに行く観光客を横目で見ながら図書館通いの日々でした。苦しい日々でしたが、真夜中にわずかな合間を見つけて気を紛らわそうとバルコニーに出て眺めた、まるで滝のように海原に落ちていく満天の天の川は息を呑む美しさでした。普段慢性的な水不足で満足にシャワーも浴びれず、スコールの中、頭にシャンプーをかけて外に飛び出したのも今となってはいい思い出です。毎週ブラックマンデーと呼ばれる試験があり落第者は次々と出る。結局クラスメートで最短で基礎医学課程を一緒に終えアメリカに戻れたのは当初の半分でした。

米国に帰国後シカゴで臨床科目を終え、家庭医プログラムにマッチすることができました。もとより、プライマリーケア医になりたいというのが目的でしたが、ICUのローテーションで末期の患者を診るにつき、そこに至る前にもっと患者さんが出来ることがあったのではとの思いから予防医学に興味が出てきました。産業・予防医学というフィールドがあるのを知り、もと会社員だった自分の経験を生かすにもうってつけではと思いました。イリノイ大学の産業環境医学研修医のスポットを得ることができ、同時に公衆衛生修士課程も履修することが出来ました。日々大変でしたが、南の島の生活を乗り切った自信と自負が今まで頑張って来れた力になっています。

小さな子供を抱え、僕の無謀な冒険をずっと支えてくれた妻と、最後まで全面的に応援してくれた両親には心から感謝しています。そして訪れてくれた患者さんが以前僕が感じたように心穏やかに海外での生活を送ってもらえるよう、微力ながら力を注いでいけたらと思っています。

23件のコメント

  1. 佐々木 潤 より:

    すごいです。なんか映画をひとつ見終えた気分になりました。

    • 中釜 知則 より:

      ご感想ありがとうございます。たしかに今から振り返れば現実離れした日々でした。

  2. 野中哲郎 より:

    このお話、専門学生に聞かせてやっていいかな?希望をもつこと、トライすること。今の学生に足らないことを考えさせるに、いい話だよ。思わず涙腺が緩んだ。

    • 中釜 知則 より:

      てっちゃん、お久しぶりです。コメントありがとう。いまの日本の学生さんは元気がないようですが、奮起してこれからも日本人の気概を見せて頑張って欲しいと願ってます。それからやっぱり広大総合科学部のリベラルな教育の有効性を実感した。理系コースの専門科目が単位として受け入れられたので非常に助かりました。

  3. 浅井 章博 より:

    カリブ医学部出身の同僚たちには強い背骨のような物を感じますが、その理由の1つがわかったような気がします。南国で勉強に打ち込むのは、逆に厳しいことなのですね。

    • 中釜 知則 より:

      浅井先生、コメントありがとうございます。僕の周りの同窓生はたくましい連中が数多く居ます。メゲそうな時は彼らの活躍を励みにしました。

  4. 松本 より:

    現実離れですか、、。 南国で勉強に打ち込む難しさには同感です。(自分のステイタスも違いますが)ハワイでの勉強は難しいですが、ミネソタでは簡単でした。南国の大学は南国気分でメインランドより簡単なのかと思ってました。実際を知ることができてよかったです。

    • 中釜 知則 より:

      コメントありがとうございます。南の島はやはりバケーションで行きたいですね。今度訪れる時は短期のリゾート気分でゆっくりしたいです。ハワイも行った事無いので是非訪れてみたいです。

  5. 中川伸生 より:

    ご無沙汰しています。南山堂のほうから先生への執筆依頼はゆきましたか?アメリカ臨床留学の道の第4版の改定作業にはいっています。アメリカ臨床留学を経験するその他の方法のセクションで、第3石を経由するという項目の筆者をさがしていたので、先生を推薦しました。依頼がいっているようだといいのですが。ぜひ先生の経験を書いていただきたく思います。僕の病院にはカリブの医学生がローテーとできています。臨床のローテーションが大変みたいですね。生きのいいのから、眼がくもっているのまで、いろいろいますね。

    またNYでお会いできる日を楽しみにしています。炉辺焼きにいきましょう。

    • 中釜 知則 より:

      中川先生、こちらこそご無沙汰しております。南山堂からはご連絡頂いておりませんが、僕ができる事であればご協力させて頂きます。NYではゆっくりお話しできませんでしたね。次回はいつお越しですか。是非ご連絡下さい。

  6. 伊東 浩明 より:

    中釜様
    ご無沙汰しています。
    NYでのご活躍、とても嬉しく、家族みんなで拝見、応援しています。
    9月に長女が結婚しました。
    また、このたび、元部下がNY支店に転勤しました。
    詳しくは、中釜さんのメールに送りましたので、時間のある時に読んでください。
    では、いつか会える日を心から楽しみにしています。
    帰国の際には、必ず、連絡ください。

    • 中釜 知則 より:

      伊東さん、お元気で何よりです。コメントありがとうございます。お嬢様がご結婚されたのですね。おめでとうございます。時のたつのは早いもので、あのかわいらしい小さな女の子が花嫁姿になったのですね。ぜひ今度帰国の際はあらためてお祝い申し上げたいとおもいます。

  7. 石田 瞳 より:

    中釜先生、はじめまして。
    私は日本の医学生で、家庭医療に興味を持っております。
    先生のブログを拝見し、ぜひもう少しお話を聞いてみたいと思い、
    フェイスブックにメッセージを送らせていただきました。
    もし差支えなければご返信いただけますと幸いです。
    よろしくお願い致します。

    • 中釜 知則 より:

      石田さん、
      コメントありがとうございます。最近は日本でも総合医療への興味が高まっているようですね。僕にお答えできる事があればいつでも。

      • 石田 瞳 より:

        中釜先生
        ご返信ありがとうございました。
        一度先生のオフィスを実際に見学させていただくことは可能かを伺いたく、再度フェイスブックの方にメッセージを送らせていただきましたので、ご確認いただけますと幸いです。
        どうぞよろしくお願い致します。

        • 中釜 知則 より:

          いつでも遊びに来てください。

          • 石田 瞳 より:

            中釜先生、日程について、Facebookとe-mailの両方に同じメッセージを送らせていただきました。ご確認の程よろしくお願い致します。

  8. 大礒明雄 より:

    中釜先生
    お久しぶりです、ご活躍いつも嬉しく拝見させて頂いております。
    こちらにあるSDAクリニックの野崎先生の奥様がよろしくおつたえくださいとのことでした。 グアムに来ることがありましたら是非お立ち寄りください。まだグアムの医師免許をお持ちでしたら、アルバイトも大歓迎です。

    • 中釜 知則 より:

      大磯先生、

      お久しぶりです。グアムでの生活はいかがですか。SDAクリニックでの1ヶ月の海外研修でしたが、野崎先生ご夫妻はじめ皆さんに大変良くしていただいたのにご無沙汰してしまって申し訳なく思っております。なにとぞよろしくお伝えください。そちらでの生活は懐かしい限りです。ぜひまた訪れてみたいと思っています。その際はご連絡させていただきます。(残念ながらグアムの免許はテンポラリーでした。)先生はNYにこられる機会はありませんか?

  9. Y.A より:

    中釜先生、
    明けましておめでとうございます。いつもお世話になっています。
    この前「コメントしていいですか」と聞いた者です。
    遅くなりましたが、改めて記事を拝見して、感動してます。

    ここまでの道のりは私なんかが想像出来る以上に大変だったでしょうし、決心されるにも相当勇気がいったと思います。
    うまくは言えませんが、先生がお医者さんを目指したときに思ったとおり、今は先生は心細くアメリカで暮らす私たちにとって本当に救いを与えてくれる存在です。海外という特別な場所で暮らしていると、日本にいる以上に色々なことが不安になります。そういう時に、日本語で親身に相談に乗ってくれる先生のようなお医者さんがいることで、どんなに心身共に助けられてきたか分かりません。

    そして、私自身20代後半になり将来についてどうしていいかわからなくなる時もありますが、記事を読んで、私もまだ何かを始めるのも遅くないのかな、と勇気が出ました。

    あまりの心配性で、いつもちょっとしたことで駆け込ませて頂いてますが、これからもどうぞよろしくお願いします!

    ゆみ

  10. 中釜 知則 より:

    ゆみさん

    コメントありがとうございます。海外生活での不安を和らげることに少しでもお役に立つことができ、今までの苦労もおおいに報われた気がします。今後ともできるだけ多くの方々にそう言っていただけるようクリニックスタッフ一同、鋭意努力していきたいと思います。
    今後とも気が付いたことがあればご遠慮なく、ご指導よろしくお願いいたします。

  11. 宮内 より:

    中釜先生

    初めまして。宮内と申します。
    セーバー医科大学ではありませんが、同じカリブにあるロス医科大学を卒業し、7月からアメリカで研修医として働く予定の者です。
    只今J-1VISAの申請のための政府証明書を取得しようとしているのですが、日本の医師免許を持っていないと発行できないと言われ、困っています。
    先生はどのようにしてVISAを取得したのでしょうか?
    なにか教えていただけたら幸いです。
    よろしくお願いします。

    宮内

    • 中釜 知則 より:

      卒業おめでとうございます。日本の医師免許がないとJ-Visaが取れないとは知りませんでした。宮内さんのバックグラウンドがわからないので正確なアドバイスはできませんが、米国の移民政策は世界情勢、政治や経済の影響を大きく受けダイナミックに変更されます。私の場合、もう20年近く前になるので現在とはずいぶん違うと思います。ビザに関しては今後各州の免許取得にも大きく影響してきます。移民に詳しい弁護士に相談し最もアップデートされた情報取得を強くお勧めします。

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