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桑原功光

ブログについて

大阪出身の妻と2児の子育て奮闘中。子育ては最高の小児科学の教科書です。モットーは“think globally, act locally, and love your family”。小児科・神経科・医学教育を世界で学び、グローバルな視野を持つ後進を育成することと、息子たちとアイスホッケーを生涯続けることが夢です。

桑原功光

北海道砂川市出身。2001年旭川医科大学卒業。1年間の放射線科勤務の後に岸和田徳洲会病院で初期研修。都立清瀬小児病院、長野県立こども病院新生児科、在沖縄米国海軍病院、都立小児総合医療センターER/PICUと各地で研鑽。2012年-2015年 ハワイ大学小児科レジデント修了。2015年-2019年 テネシー州メンフィスで小児神経フェロー、臨床神経生理学(小児てんかん)フェロー修了。2019年9月よりミシガン州デトロイトのChildren's Hospital of Michiganで小児神経科&てんかん医として勤務開始しました! 日米両国の小児科専門医&米国小児神経科・臨床神経生理学専門医

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北米プロアイスホッケーリーグ(National Hockey League: NHL)は、アメリカにある24のチーム、カナダにある6のチームの計30のチームからなります。1917年にカナダで設立されてから、ちょうど今年でプロリーグ100周年です。シーズンは10月から翌年の4月まで、各チームが82試合の公式戦を行います。82試合終了後、西部(Pacific、Central)、東部(Metropolitan、Atlantic)の東西それぞれトップ8チームがプレーオフに進むことができます。東西トップ8チームずつがトーナメントを行い、最後に東西の王者同士が戦い、優勝したチームが100年以上の歴史を誇る北米プロスポーツ界最古のトロフィーである「スタンレーカップ」を手にすることができます。そのため、この優勝を争うNHLプレーオフを、スタンレーカップと言います。

メンフィスにはMississippi Riverkingsというマイナーホッケーリーグがありますが、やはり一軍のNHLを応援したければ、テネシー州には「ナッシュビル・プレデターズ」があります。我が家も大ファンであり、家族みんなで応援しています。プレデターズの本拠地アリーナはナッシュビルにあるブリジストンアリーナ、我らが日系企業です。プレデターズのヘッドコーチ(監督)は、過去にカロライナ・ハリケーンの監督時代に全米優勝の実績があるピーター・ラビオレット。2014年よりプレデターズを率いて、さらに攻撃的なチームに進化させました。昨年はプレデターズのキャプテンであったシェイ・ウェバー選手と、モントリオール・カナディアンズのP.K.スバン選手のトレードが話題になりました。これは、NHLを代表する看板選手同士のトレードであり、大きなニュースとなりました。そのキャプテンを出してまで、攻撃的ディフェンダーP.K.スバンを迎えたプレデターズ、現在プレイオフに進み、大奮闘しています。プレイオフは先に4試合勝った方が次のラウンドに進むことができるのですが、今年のプレデターズは恐ろしく強い! プレイオフ第1ラウンドで優勝候補シカゴブラックホークスを4戦全勝ストレートで退け、第2ラウンド(西カンファレンス準決勝)でセントルイス・ブルースも4勝2敗を倒し、第3ラウンド(西カンファレンス決勝)でアナハイム・ダックスを4勝2敗で下して、ついに西カンファレンス優勝を決めました! テネシー州はプレデターズの話題で持ちきりです。

そのプレデターズを迎え撃つ東カンファレンス優勝チームは、昨年スタンレーカップ優勝のピッツバーグ・ペンギンズ。プレデターズとペンギンズのスタンレーカップをかけた激闘が、5月29日(月)から始まります! 全米制覇は目の前だ! 頑張れ、ナッシュビル・プレデターズ!

https://www.nhl.com/stanley-cup-playoffs

帰国時に子どもたちがホッケーを続けることができるか、それが留学先でホッケーに夢中になった子どもを持つ親の共通する悩みです。日本ではアイスホッケーはマイナースポーツ。アジアリーグでもサハリンや韓国のチームに上位を奪われ、少子化の影響もありホッケー競技人口は減少するばかり。アイスリンクは冷媒にフロンが必要ですが、先進国は2020年には温暖化対策のため、フロンを原則全廃することが決まっています。そのため、古いアイスリンクは、生き残りをかけて数年内に多額の設備投資を迫られています。日本でのアイスホッケーを取り巻く状況はとても厳しく、練習できる環境はアメリカに比べると非常に限られます。加えて、小児神経科の観点から、日本のホッケー環境でさらなる懸念事項が2点あります。

1. 子供の睡眠時間: 日本では通年アイスリンクが限られています。アイスホッケーが有名な北海道苫小牧ですら、通年リンクがないのは驚きでした。

http://icerink.blog.so-net.ne.jp/skaterink201306

限られた時間と施設で、多くのチームが練習をすることもあり、子どもですら早朝、もしくは夜遅くからの練習が組まれることがあるのが日本の実情です。氷上の練習不足を陸上トレーニングでは完全に補うことはできません。ホッケーの練習は、やはり氷の上で行うことが大事です。National Sleep Foundationでは、学齢児童6-13歳では、9-11時間の睡眠が必要とされています。もしも夜9時から小学生が練習開始したら、終わるのは10時頃になります。帰って、お風呂入って寝た場合、就眠は11時前後になるかもしれません。そして翌日7時に起きたとしたら、8時間睡眠で、この年代にはまだ十分な睡眠とは言えません。子どもの睡眠不足は成長、発達に問題を起こします。日本のホッケー少年・少女を取り巻くアイスリンクの少なさは、神経学的発達にも大きな影をもたらしかねません。

2. 体当たりと脳震盪: ホッケーの醍醐味の一つは、氷上の格闘技と呼ばれるように、激しい体当たりが多いことです。しかし、最近ではこうしたコンタクトスポーツが「慢性外傷性脳症」を引き起こす可能性があり、懸念が広まっています。古くから知られている例は「あしたのジョー」です。ジョーはパンチドランカーになりましたが、まさにそれが慢性外傷性脳症です。最近ではアメリカンフットボールで話題になり、2016年にはウィル・スミス主演の映画「コンカッション」でも取り上げられました。アメリカでは、小児科や神経科でコンタクトスポーツの話題をする時、慢性外傷性脳症は常に話題にでます。実はヘルメットでは脳震盪は防ぐことはできません。脳震盪の原因は頭蓋への衝突そのものです。コンタクトスポーツで、どこまで魅力を失うことなく子どもたちの安全を守れるか、というのはみんなで議論して、頭蓋衝突の危険性を最小限にすることが重要です。

私自身は日本では少年たちにホッケーを教えたことがありませんが、日本では小学校低学年のような幼いうちから体当たりを教えているチームもあるようです(今はもうないと信じたい)。アメリカやカナダでは、小学生は体当たりを禁じているところが一般的です。

以上、2点が小児神経学からみた日本のアイスホッケーの懸念材料です。しかし、これらは正しい練習方法の普及や、練習時間を配慮することで改善されていくのではと期待しています。

日本のアイスホッケーの最大の問題の一つは、止まらない競技人口の低下です。競技人口がこのまま減少するとさらに人気が下がり、観戦者の絶対数も減少して、プロチームも養えない。結果として、日本のプロチームも弱くなるという悪循環があります。日本では、まずアイスホッケー競技人口そのものを増やさなくてはいけないと思います。しかし、多くの方は中年以にホッケーを続ける環境がなく、体当たりによる怪我を恐れたり、体力が若い人についていけなくなるため、さらにホッケー離れが止まらないのが日本の現状です。アイスホッケー本場カナダでは、体当たり禁止、実力によってチームを分ける社会人リーグ「ビアリーグ」があり、中年以になっても、安全にホッケーが楽しめる環境があります。日本でも最近になり、このビアリーグがついに北海道の釧路や苫小牧で始まったようです。これは中年ホッケーファンにとって朗報ですね(運動後のビールはさらに楽しみです)。

また、最近では、アイスホッケー女子日本代表「スマイルジャパン」が2大会連続となる五輪出場を決めました。最近の日本アイスホッケー界で一番の明るいニュースでしょう。ぜひアイスホッケー人気の追い風となってほしいです。

スポーツは子どもにとって、肉体のみならず、チームワークや社会性を鍛える貴重な場です。そして親子間で共通の話題を持つきっかけにもなります。アメリカ小児科学会では、15歳までは一つのスポーツに専念せず、様々なスポーツを経験させるのが良いとしています。アイスホッケーも是非いかがですか。

以上、アメリカ南部から、親子ともにアイスホッケーを楽しんでいるルボーナー特派員がお知らせしました。

2件のコメント

  1. 桑原先生、初めまして。シカゴで内科レジデントをしている平井と申します。夫は日本人で同じくシカゴで循環器フェローをしております。アテンディングのポジション探しの中でメンフィスの病院が候補に挙がっていて、いくつかメンフィスでの生活についてさらにお聞きしたいことがあるのですがもしよろしければ添付のメールアドレスの方でやりとりをさせて頂けませんでしょうか?よろしくお願いいたします。

    • 平井先生。初めまして。了解しました。メールを送らせていただきますね。

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