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熊倉純子

ブログについて

NICU(新生児集中治療室)で、毎日多くの事を学び、よい仲間に囲まれながら楽しく働いております。そんな中で、日々経験したことや、気がついたことについてお伝えできたらと思います。

熊倉純子

東京都出身。高校時代に1年間アメリカへ交換留学。日本赤十字看護大学卒業後、慶應義塾学病院で6年半ほど小児科新生児領域で看護師として勤務。看護師のキャリアを考える中、 アメリカの医療看護事情に興味を持つ。RN (Registered Nurse) ライセンス取得後、アメリカへ看護留学し、 OPT(オプショナルプラクティカルトレーニング)としてフロリダ片田舎の総合病院小児科にて1年間勤務。一旦日本に帰国し、日本看護協会に1年間勤務するも、再び渡米、アインスタインメディカルセンターNICUへ2年半勤務後、現在のペンシルバニア大学病院NICU勤務にいたる。

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日本で看護大学を卒業し新卒として就職したのは10年ほど前になるので、少し現在の就職活動と状況が異なっているかもしれませんが、今回はアメリカでのRNの就職活動について日本の場合と比較してお伝えしたいと思います。

日本では看護大学在学中に都内の大学病院(看護師数1000人前後)2カ所へ願書を提出し、筆記試験と小論文および面接を経て、特に問題なく就職が決まりました。当時の大学のクラスメイトも皆同じように就職が決定していたように記憶しています。日本の大学病院や総合病院では、毎年4月に新卒100人程度を一度に大量採用するというのが主流でした。

一方、アメリカでは日本のように年一度の一斉大量採用ということがなく、ポジションの空きに状況に応じて、随時採用しています。募集状況は、病院のホームページで閲覧できるようになっており、各ポジション(例:○○病棟の日勤、○年経験者)へ直接応募する仕組みになっています。日本のように、病院に応募し、採用後に勤務病棟が決定する受け身的な就職活動とは異なります。また、勤務帯についても、応募時に選択し、日勤であれば、常時日勤者となります。病院によってはローテーションを条件として採用しているところもありますが、数週間単位のローテーションとなっており、日本のように一週間の中でめまぐるしく3交替勤務を強いられることは決してありません。私が応募したNICUの経験者のポジションの応募条件には、RN免許のほかに、NRP (新生児心肺蘇生プログラム)・ BLSなどのCRPライセンスに加え、レベル3のNICU経験2年以上、4年制看護大学卒業というような内容が盛り込まれています。

アメリカの病院就職では、新卒より経験者の就職の方が圧倒的に有利です。病院の採用ページで、「新卒採用していません」という掲示を目にしたことがあるくらいです。有名な看護大学を卒業したアメリカ人新卒RNでも就職に苦戦しているケースはよく見聞きします。私のアメリカでのRN経験は2 年目ですが日本での看護師経験6年半があるという意味では、新卒RNよりも就職には有利のようでした。病院が新人看護師を採用したがらない理由は、教育にかかるコストと時間が病院への経済的負担となるとともに、即戦力として使えないということのようです。

日本では「同じ職場で長く続けるのが美徳」というような考え方が今も少なからず残っていますが、アメリカでは様々な場所で多く経験を積んでいる方が評価されます。(もちろん一カ所での経験が短すぎるのは問題ですが)。日本のように退職金や、終身雇用の考え方がないということもあり、組織に依存することなく、よい雇用条件・職場環境を求め次の職場を探すということは日常的に行われています。

実際に病院に応募する際には、病院独自のオンラインフォームに加え、レジュメ(日本のような書式はなく、自分で作成していく。)や推薦状など就職に有利となりそうなものを準備し添付送信します。オンラインフォームの記入は、日本の見開きの履歴書一枚とは訳が違い、膨大な項目となっており、何時間もかけ埋めていくことになります。これらの書類に加え、病院によっては業者委託した適性検査が必須となっていることもあります。これまた膨大な質問項目でした。

全ての送信が完了すると、すぐに病院から受信完了の自動配信メールが届きます。その後、時期は病院によってまちまちですが、書類審査を通過し採用の可能性があれば、数日から数週間のうちにリクルーターから電話連絡があります。その電話のやり取り次第で面接につながることもあれば、それっきりになるケースもあります。そのため、昼間はいつも携帯電話と突然の電話インタビューに応じる事ができるようメモを肌身離さず持っていっていました。人気の高いポジションや、有名な病院などでは一つのポジションへの応募が多いことから、病院側から連絡が無い場合は、こちらから売り込みの電話をし、自分の書類に目を通してもらうよう働きかけるなど積極性が求められます。面接では、リクルーター(人事)、ナースマネジャー(病棟師長)、教育担当者、病棟のスタッフRNなど、それぞれと面接を行います。ある小児病院ではshadowingといって、半日程度、自分の応募した病棟のRNに付き、仕事内容を見学&体験が採用プロセスとして組まれていました。shadowing終了後、簡単な感想/アンケートを提出し、担当RNから応募者への評価も、採用の合否に影響するという仕組みになっていました。管理者からの目線のみでなく、すでに働いているRNからみて、応募者を同僚として受け入れたいと思うかという視点での評価は日本ではあまり無いような気がします。面接を通し「自分が即戦力として働くことができる」ということをいかにアピールするかということが重要であると感じました。面接の対策としては、想定問答をつくり何度も練習をするということにつきました。とくに、日本での看護師経験については使用していた医療機器や、患者のクリティカルレベル、看護師としての役割などについて細かく説明をし、日本での経験を加味してもらえるよう、何がどこまできるのかということを具体的に伝えるよう努めました。

面接後は、即日または数日後に採用の連絡があり、その後、オリエンテーションを経て、病棟勤務が開始します。

このように書いてみると、アメリカでの就職活動はスムーズなように感じられてしまうかもしれませんが、実際には、アメリカでの最初の就職活動では全米70余病院にアプライし、面接にこぎつけたのが2箇所。そして、2度目の就職では10病院程度に応募し、面接までこぎつけたのが2箇所、そして最終的に採用されたのが現在勤務している病院でした。最初の就職活動は開始から採用内定までに2ヶ月間を要しました。当時はカリフォルニア州で看護留学中であり、そのプログラム修了直前に労働許可の申請(全てのカリキュラム修了見込み時点で申請ができます)をしました。労働許可が下りた後も就職がなかなか決まらず、労働許可期間が減って行く中、ひたすら毎日アプライし続けるという焦りとの戦いの毎日でした(Optional Practical Training 期間は、労働許可が下りた時点で就職が内定していなくても、労働許可が下りた日から1年間と決まっています)。カリフォルニアに住んでいたので、フロリダ州とルイジアナ州の病院から面接のオファーが来た際には、それぞれ病院のホームページで住所を確認し、すぐにフライトを予約しました。面接当日に飛行機を乗り継ぎ、空港からはGPSを頼りにレンタカーで病院まで直行、面接後日帰りで家に帰るという繰り返しでした。ルイジアナ州の面接に行った際には、あまりの異国情緒溢れる雰囲気に、半日でホームシックにかかったのを覚えています。今、こうして振り返ってみても、受かるかわからない面接に多額の交通費を支払い、見知らぬ土地に一人で出向いていくという何とも adventurous な日々だったと思います。

RNに限らずとも、アメリカでの就職は以下のような点が日本と大きく異なります。とくに個人情報に関しては、日本とは正反対であることに驚きます。

  • 個人情報:人種、性別、宗教、年齢、生年月日、証明写真などは一切使用しないのが原則です。面接においても、これらの情報に加え、既婚であるか、子供がいるかなどを尋ねる事も違法とされています。
  • 犯罪歴チェック:指紋を提出し、犯罪歴がないことを証明します。また、NICUや小児科など、子供に関わる職業に応募する際には、とくに幼児、児童虐待歴がないことの証明も必要になります。
  • ドラッグスクリーン:尿検査(病院で医療者の監督のもと行う)
  • リファレンス:過去の上司、同僚からの推薦や評価の提出(最近では、病院が業者を使い、オンラインアンケート形式にて前職場の上司や同僚からの情報を得るシステムになっています。)

10件のコメント

  1. 元気にしているようで何よりです。これからも頑張ってください。

    • コメントありがとうございます。大変ご無沙汰しておりますが、今後ともよろしくお願い申し上げます。

  2. 異国情緒あふれるルイジアナ州というのは、確かにそうですね。南部は、特にディープサウスは、建物も、人種も、食べ物の味も、英語も、みんな違いますよね。ホームシックになったのもうなずけます。アメリカもいろいろですが、あのエリアだけは本当に特別なものを感じます。

    • 齋藤先生、

      はじめまして。コメントありがとうございます。
      ディープサウスは本当に独特の雰囲気です。面接では「本当に1人でここで暮らせると思う?」ということを何度も確認されました。一年働いたフロリダの病院も、フロリダといえどアラバマ州のボーダーまで一時間というペンハンドル、北西地域でした。住んでみると、人は温かくとても親切で一度もホームシックにかかることはありませんでした。

  3. はじめまして。私もこの就職活動の苦労、よーくわかります。CNM(助産師)やNPの世界はさらに壮絶。私は今やりたい仕事をするために、週に三日、片道100マイル通勤しています(大阪から名古屋くらい?笑)。面接で自分をいかにアピールするかも、本当に大変ですよね。私は日本での経験やアメリカでの経験を説明するのに、面接官の承諾を取ってからiPadで写真やグラフを見せながら行いました。結構好評でした。

    これからもよろしくお願いします。

    • はじめまして。NPの就職は更に狭き門なのだろうと想像しています。アメリカ人でさえNPの免許を持っていながら、NPとして就職ができずにRNとして働いている人がいることは見聞きしています。片道100マイルはさすがに大変ですね。面接でグラフや写真を見せながらというのは考えつきませんでした。今後ぜひ試みたいと思います。今後ともよろしくお願い致します。

  4. はじめまして。私現在日本でTV番組制作に携わっている者です。
    現在「アメリカの看護」について取材を進めております。
    そこでアメリカのナースに関する情報についてお話をお伺いできる方を
    探しておりましたところ、こちらのブログを拝見しコメントさせていただきました。
    お話を伺わせていただくといってもTV出演やインタビューの類ではなく
    実際にアメリカで働いている看護師の方にアメリカの看護師の仕事内容を何点か
    質問させていただきたいのですが、ご教授願えませんでしょうか?

    もし可能であれば直接メールアドレスの方にご連絡いただけるとありがたいです。
    お忙しいところぶしつけなお願いでお手数おかけいたしますが
    ご協力いただければ大変助かります。
    よろしくお願いします

  5. こんにちは。
    現在オーストラリアでワーホリにきていて、ナーシングホームで働いています。
    アメリカ人の婚約者がいまして、将来アメリカに行くことがあると思うので、RNの道を意識し出したところです。
    最初にアシスタントナースとして働くかもと思い、今働いている上司やRNにリファレンスレターを書いてもらった方がいいかなと思うのですが、ファシリティマネージャーとRNでしたらどちらがいいと思いますか?またそれはアメリカでのRN就職活動中にも有効でしょうか?英語圏で働いたということは少し有利になってほしいなと思うのですが…
    私も日本でNICU看護師でした。また日本でのNCPRのライセンスは有効なのでしょうか?
    お返事お待ちしています。よろしくお願いします。

  6. コメント失礼します♫
    あたしは今年一年で語学の勉強をしようと考えています。
    日本にいる間にnclexも受けようと考えてましたが、フルタイムで夜勤をしながら勉強はなかなか厳しく、語学の勉強で手一杯になることが予想されます、、、(>_>)
    質問なのですが、カリフォルニアのどこの学校に通われましたか?>____<

    • コメントありがとうございます。私が修了したプログラムはUniversity of California, Riverside Extension の International Education Programs の1つ Global Nursing Review Program というコースですが、残念ながら今はそのプログラムは修了後の就職やビザ取得が容易ではないことなどからクローズしているようです。

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