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反田篤志

ブログについて

最適な医療とは何でしょうか?命が最も長らえる医療?コストがかからない医療?誰でも心おきなくかかれる医療?答えはよく分かりません。私の日米での体験や知識から、皆さんがそれを考えるためのちょっとした材料を提供できればと思います。ちなみにブログ内の意見は私個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

反田篤志

2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修後、ニューヨークで内科研修、メイヨークリニックで予防医学フェローを修める。米国内科専門医、米国予防医学専門医、公衆衛生学修士。医療の質向上を専門とする。在米日本人の健康増進に寄与することを目的に、米国医療情報プラットフォーム『あめいろぐ』を共同設立。

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(この記事は、2013年2月4日に若手医師と医学生のための情報サイトCadetto.jp http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/cadetto/ に掲載されたものです。Cadetto.jpをご覧になるには会員登録が必要です。)

メイヨーにも、ついに電子処方箋がやって来ることになった。日本ではついぞ見たことがない仕組みだが、NYの病院では昨年導入され、現場の熱い支持を獲得した。

「では、リピトールとラシックスを処方しておきましたので」
「あれ先生、処方箋は?」
「もう薬局に送っておきましたよ。いつもの薬局でお薬はもらえます」
「え、どういうことですか?」
「それがですね…」(ニヤリ)

診察時には、電子カルテの画面にその患者さんの服用薬リストが表示されるので、その中から今回処方したい薬を選べばよい。患者さんのかかりつけの薬局は、あらかじめ助手が聞き取ってシステムに登録してあり、“E-prescribe”(電子処方)ボタンをクリックするだけで、その薬局に電子処方箋が送られる。

このシステムは患者にとっても医者にとっても画期的だ。まず、患者さんが紙の処方箋を持ち運ばなくて済む。クリニックから近所の薬局に行く間に、処方箋をなくしてしまう事態(これが結構ある)を防げる。また、処方箋の有効期限が切れてしまった場合、以前はクリニックまで紙の処方箋を取りに来なければならなかったが、電話一本で再発行して薬局に再送してもらえるようになった。遠方の人にとっては服薬コンプライアンスの向上にもつながるだろう。

医師にとって有難いのは、発行済の処方箋の参照や、調剤薬局とのやりとりが楽になったこと。電子処方箋では、薬局での処方箋の写し間違い、打ち込み間違いといった人的エラーが入り込む余地が無いので、「いつ何を処方したか」が食い違うことはまずない。患者さんがいつ薬を受け取ったかも、システム上に登録されたかかりつけの薬局に電話すればすぐ分かる。

星の数ほど薬局があるNYでは、かかりつけ薬局を調べるだけでも一苦労だった。薬の容器を持参してくれれば電話番号が書いてあるのだが、「薬局に行ったが薬がもらえなかった。薬局の名前は忘れてしまった」などと言われた日には、Googleマップで患者さんの住所から薬局の所在を割り出し、電話番号を調べるだけで5分10分かかることもざらだった。しかも、やっと見つけた薬局に電話をしたら「そのような処方箋は受け取っていません」などと薬剤師に言われ、仕方なく再度処方箋を書くといった二度手間も度々だった。

これらの苦労を一気に取り去ってくれた電子処方箋。一度その味を知ってしまうと、やめられない。メイヨーに来る日が待ち遠しい。(ちなみに、7月19日現在すでに導入され、とても好評です。)

1件のコメント

  1. 確かに、過去の処方内容が参照と引用できてとっても便利ですよね。
    当クリニックでは管理薬品(麻薬)などは電子処方できず、従来の紙処方箋になるので、Re-fillしたと思って次の患者さんの対応していたら、プリンターに出ているoxycodoneの処方箋を患者さんに渡し忘れてしまうことが導入当初はありました。

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