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「うちに来たいか?来たいのなら、なんとかしましょう。」

MDアンダーソン癌センターのディビジョンヘッドから、この言葉をもらったときのことは忘れないでしょう。やっとスタートラインに立つことができた。アメリカトップの臨床現場で勝負する権利を与えてもらえそうでした。

2010年の2月。予想以上に寒かったヒューストンで、私はMDアンダーソン癌センターの血液・腫瘍内科フェローシップの面接にのぞんでいました。予定表が最初に配られたときには多少の不安がありました。その日は肝心のプログラムディレクターが不在。強い影響力を持っていると言われていたディビジョンヘッドの名前もリストにありません。できればフェロー選考の過程で影響力のある人と面接をしたかったので多少戸惑っていました。

ちょうど3人目の面接が終わったところです。突然、コーディネーターが近づいてきて、「ヘッドがこれから面接をしたいと言っているから4人目は最後に回しましょう」と伝えてくれました。最初はいまひとつ状況がつかめませんでした。

「私は全員とは面接しないが、一人目の面接官が推薦してきたので特別に面接することにしたんだ。今日は、ほんとは休日なんだけどね。」確かに、最初の面接官が終わり際に「ここに来ることを真剣に考えるといい」とは言ってくれていました。ただのリップサービスだと思っていましたが。面接の最後にヘッドから冒頭の言葉を頂いたとき、たぶんこれでここには入れそうだな思いました。

「血液悪性腫瘍の分野で一流のPhysician Scientistになりたい」という長期的な目標を達成するためには、アメリカのトッププログラムでフェローになるしかありませんでした。そう思った時からキャリア戦略は始まっていたのです。何としてでも一流プログラムに入りこまなければアメリカにわざわざ来た意味がない。そのためには、何を成すべきか?と問い続ける日々でした。

私は新潟大学を卒業後、虎の門病院で内科前期研修を終えました。その後、Nプログラムを通じてニューヨークのベス・イスラエル病院で内科レジデントとして働き始めました。私はベス・イスラエルの内科プログラムの評価を述べられる立場にはありません。はっきりしていたことは過去の卒業レジデント統計を見ると、血液腫瘍の分野では、自分が行きたいと思っていたプログラムにポジションを獲得した人がほとんどいなかったことだけです。自分自身に他人を圧倒するような実績があるわけでもありません。

「このプログラムの中でたとえ最高の評価をもらったとしても一流プログラムの選考の網には引っかからないだろう。」何かしらの+αが必要でした。幸い病棟業務に慣れるのに時間はかからなかったですし、アメリカのレジデント研修は虎の門時代に比べればずいぶん楽でした。空いた時間でキャリアアップをするしかないという結論になりました。

具体的に、どんな戦略をとったかは次回以降に述べたいと思います。

少なくとも内科領域においては、もうアメリカ帰りが珍しい時代ではありません。留学体験記、米国でのレジデント研修記はちまたに溢れています。その中で、もし私の経験が何かに役立つとしたら、レジデントをサバイブするだけでなく、さらにプラスαの努力をどうすべきかについてかもしれません。それを、みなさまと一緒に考えていけたらと思っています。

 

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