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反田篤志

ブログについて

最適な医療とは何でしょうか?命が最も長らえる医療?コストがかからない医療?誰でも心おきなくかかれる医療?答えはよく分かりません。私の日米での体験や知識から、皆さんがそれを考えるためのちょっとした材料を提供できればと思います。ちなみにブログ内の意見は私個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

反田篤志

2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修後、ニューヨークで内科研修、メイヨークリニックで予防医学フェローを修める。米国内科専門医、米国予防医学専門医、公衆衛生学修士。医療の質向上を専門とする。在米日本人の健康増進に寄与することを目的に、米国医療情報プラットフォーム『あめいろぐ』を共同設立。

(この記事は2014年5月号(vol104)「ロハス・メディカル」 およびロバスト・ヘルスhttp://robust-health.jp/ に掲載されたものです。)

ミネソタ州はミャンマー、ソマリアを筆頭に、ブータン、エチオピア、イラクなど20以上の国から、毎年約2千人の難民を受け入れています。メイヨーがあるオルムステッド郡は、比較的多く難民を受け入れている地域の一つです。私の働く部署は、郡衛生局の難民健康センターと連携しており、研修を通じて難民医療を学びました。

米国に移住する難民の多くは、難民キャンプなどで数年以上、時に10年や20年に及ぶ難民生活を強いられています。移住する前には、手続きに沿って結核や麻疹の検査を受け、必要に応じてワクチンや治療を受けなくてはいけません。無事米国に入国すると、受け入れる郡の担当者に連絡が届きます。国務省に承認された正規の慈善団体(VOLAGと呼ばれます)が主なコーディネーターとなり、郡の担当者と連絡を取り合い、地域への移住をサポートします。VOLAGには同じ国から来た人たちが働いていて、衣食住や移動の手助けなど幅広く支援します。

難民には、移住してから8カ月間は合衆国政府から医療保険が提供されます。ミネソタでは、入国後すぐの健康診断を推奨しており、難民健康センターで包括的な診察や検査を実施しています。VOLAGと郡衛生局の担当者は、難民全員が最初の8カ月間にこの健康診断を受け、急を要する医療の問題を解決し、かかりつけ医を持てるように努力します。というのも、その期間を過ぎると無保険になってしまう人が少なからずおり、受けられる政府サービスも徐々に減ってしまうからです。

難民の人々にとって、再定住は楽なものではありません。言語、地域社会への編入、国や医療のシステムの違いなど、あらゆる障壁が立ちはだかります。祖国で学歴や地位が高かったとしても、それが米国で役に立つとは限りません。例えば、祖国で医師だったにもかかわらず、最初の半年は全く仕事を得られず、スーパーでレジ打ちのバイトをせざるを得なかった人を知っています。今はメイヨーで(医師としてではなく)働いていますが、生活のためにはすべてのプライドを捨てる覚悟が必要だったと、その人に教わりました。むしろ、難民として入国し、安定した職を得られる人は恵まれている方です。

長い難民キャンプでの生活や、家族を亡くした経験、祖国で拷問を受けた経験などから、心に深い傷を抱えている人も多くいます。再定住による大きなストレスから、精神に不調をきたす人も稀ではありません。そのような方にサポートを提供する支援団体や組織も存在します。

私が研修を通じて感じたのは、30年以上続く難民受け入れの実績からくる知識の集積、地域に根付く移民コミュニティの広がりと、その懐の深さでした。特に、VOLAG、郡衛生局、地域医療機関が連携して、難民の人々の健康のため熱心に活動する姿勢には、感銘を受けました。このような土壌がアメリカの多様性を形作り、地域社会のつながりを生み出しているのだろうと、私には思えます。

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