ニュースが慌ただしく変化していくので、迅速性を優先してツイッターなどで情報を得ることが増えてきました。 それぞれの見出しが短く、リンクをクリックしても中身も短いことが多いので、時には複雑な事項が簡素化されてかえって分かり […] » 続きを読む

ニュースが慌ただしく変化していくので、迅速性を優先してツイッターなどで情報を得ることが増えてきました。
それぞれの見出しが短く、リンクをクリックしても中身も短いことが多いので、時には複雑な事項が簡素化されてかえって分かりにくいことがありますね。そして、最近気になるのは返信欄などのコメントが「その情報ほんま?」ということに基づいている時です。
時間はかかりますが、なるべく情報元を検索し自分の目で確認したいですね。
今回の記事では、2020年にたくさん出た医学論文のうち、情報源が怪しかったり、研究手法が怪しいとのことで撤回された論文を紹介したいと思います。
世に出るときは派手に知られるのですが、退く時はひっそりと消えるので、気をつけないと誤った情報源として出回り続けてしまいますね。
やや専門性の高い内容になりますが、正しい知識が少しでも多くの人に伝わるように書きました。
自身で撤回論文の情報についていきたい場合は、“Retraction watch”などの親切なまとめサイトがあります。
2020年は科学界が超特急で進んだ年で、科学論文の投稿数も加速度的に増えた年でした。
昔は専門家や科学者同士の査読と内容検証を済ませてから公開されていた論文も、BMJ紙とYale大学などが管理するMedRxiv(メドアーカイブと読みます)や BioRxiv(バイオアーカイブと読みます)のようなプレプリント(査読完了前の論文)を公開するサイトを通じて迅速性優先で発表されましたね。
新型コロナウィルス関連の論文だけでも、こちらのサイトにこれまで12,000本ほど掲載されています。
ここでは研究者の倫理観とデータの信頼性頼みになりますが、一つ一つの論文が政策決定や治療行為決定に与えるインパクトが大きいことを考えると心配にもなります。迅速に出る情報は使いようによっては毒にも薬にもなり得ますので、読む側の慎重さが重要ですね。
残念ながら、中にはデータの信頼性や研究手法が再現できないなどの不備が確認されて、後に撤回されたものがあります。
2020年に撤回された論文は1,650件、うちコロナ関連は61件!
インパクトの大きかった撤回論文に関して紹介します。
1番インパクトの大きかった論文撤回と言えば、超がつくほど有名な医学雑誌Lancet誌とNEJM誌の両紙から撤回された2つでしょう。
前者は、ヒドロキシクロロキンの治療効果に関する論文で、後者は 血圧降下薬のACE阻害薬に関する論文でした。
問題のLancet論文が発表された5月はトランプ大統領がちょうどヒドロキシクロロキンに関してツイートして大きく注目されていた時期です。
そんな、「大統領お墨付き」のはずの薬の効果が乏しい、または死亡率を増やすという観察結果をまとめたものでした。慌ててWHOや英国MHRAなどが進行中の臨床試験を中断する事態になりました。
イリノイ州に拠点をおくSurgisphere社は、6つの大陸にまたいで、671もの病院から集めた約10万件ものCOVID症例のデータを元に計算したと報告していました。
しかし、どう考えても当時発表されていたCOVID確定症例数を上回るデータで、辻褄が合わなかったのです。
検証しようと編集者や共著者が元のデータの公開を求めたところ、データ元のSurgisphereという会社が拒否したのです。
このデータ会社、2008年に血管外科医のサパンデサイ氏がわずか数人の従業員と立ち上げて運営していましたが、実績と規模ともにとうてい世界有数のデータベースにカウントされるものではありませんでした。叩けばどんどんとホコリが出てきて、怪しさが明るみに出てきました。
そもそものデータの捏造や信頼性が疑われても仕方がない行為に対して、とうとうこちらのデータベースに関連する論文は軒並み7月頃には撤回となりました。その元論文を引用したエディトリアルなども全て影響を受けました。
パンデミック初期にヒドロキシクロロキンの有効性を主張したフランスのDidier Rauolt氏も引用していた、こちらのプレプリントの論文も撤回されました。
他のヒドロキシクロロキンに関する臨床試験の結果が次々と発表され、やがてこの薬はCOVID診療の臨床現場では使われなくなりました。
同社のデータを用いて発表された別のもので、抗寄生虫薬のイベルメクチンが治療効果があるとした以下の論文があります。
中南米の国ではこのデータを大幅に信頼して、国内の治療ガイドラインにイベルメクチンを含めたり、臨床試験を組んだりしました。元の論文がSSRNサーバーから撤回されてからも、しばらくはイベルメクチンは使用継続されていきました。
ようやく7月以降にWHOの中南米支局が「イベルメクチンをCOVID-19の治療に使用するのは、科学的根拠に乏しいため警戒しないといけない」と声明を発してから、10月にブラジル、ペルーやボリビアなどの国内のガイドラインから撤回されるまで3ヶ月以上かかりました。
5月から7月までのわずか2ヶ月の間の出来事でしたが、この一連のデータ会社絡みの論文が与えた影響は甚大で、論文撤回されてからも、その影響は長引いています。
米国内科学会が発行する有名な雑誌Annals of Internal medicineからも、話題になった論文が撤回されました。
”Effectiveness of Surgical and Cotton Masks in Blocking SARS-CoV-2”と題するこちらの論文は、「マスクには新型コロナウィルスの拡散予防効果がない」と主張するもので、多くのマスク拒否主義者によってソーシャルメディアで宣伝されました。
しかし、詳細を確認してみたらたった4名の被験者から出した結論であり、筆者らがPCR検査のLODというコンセプトを誤解していたことも分かり、撤回されました。
さらに科学的根拠に乏しいものとして、5G電波回線の技術がCOVID-19を引き起こして拡散させているという論文の撤回もありました。
“5G Technology and induction of coronavirus in skin cells” と題する問題の論文は、Journal of Biological Regulators and Homeostatic Agents という学術誌に掲載され、すぐに撤回されますが、イギリスでの電波塔の破壊行為などに影響を与えたとされ「2020年に発表された最低の論文」という悪名がつくことになりました。
ちなみにこれらの5G関連論文に筆者として名前があるMassimo Fioranelli氏は他にも5つの撤回論文に関連しており、その一つは「地球の核にあるブラックホールが、電波と人間のDNAを4次元的につなげるのに関係している」と主張するものでした。
2020年にはビタミンDをサプリメントとして服用することでCOVID-19が予防できるのではないか、という論文がいくつか発表されましたが、そのうち数本は「根拠となるデータや患者数が少なすぎる」との批判を受けて撤回されています。
撤回されたのは、以下の3本
全く効果がないという結論を出すには不十分な結果ですが、こうしたサプリメント系の論文は玉石混交なので気をつけないといけません。
以上、全てではありませんが2020年に話題となって撤回された論文とその影響を簡単に紹介しました。
専門家でも難しい判断が必要なのですが、発表された論文を批判的に吟味する訓練を医療従事者は受けていますし、日常診療でも使っています。
ソーシャルメディアはバイアスにまみれた世界です。
自身の行動をガラッと変える前に、自然科学系論文をたくさん読んでおり、信頼できる人に相談することをお勧めします。
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