ワクチン情報集
ヒトパピローマウイルスワクチン
HPV (Human Papilloma Virus) Vaccine
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、皮膚や粘膜を介して感染し、いろいろな疾患の原因になるウイルスです。このウイルスがおこす病気でもっとも深刻なものが女性の子宮頸がんです。HPVには非常に多くの型が存在し、子宮頸がんを引き起こすタイプは性行為によって感染しますが、感染時には男性女性ともに無症状です。子宮頸がんを引き起こすタイプのHPV感染を予防するワクチンがHPVワクチンです。
アメリカでは、このワクチンを11歳から12歳の間に女児に対して接種することが推奨されています。HPVワクチンはすでに感染したHPVに対しては効果はありませんが、性的に活発になる思春期が始まる前にこのワクチンを接種して感染を予防することによって、子宮頸がんの発症率が下がることが証明されています。このワクチンの接種は9歳から26歳まで可能です。6ヶ月の間に合計3回の接種を行います。
現在2つのワクチンが認可発売されています。ひとつは子宮頸がんの主な原因である2種類のHPVを予防し女性のみが対象のCervarixです。もうひとつは、男性にも発症する尖圭コンジローマ(性器にできるイボのような病変)の主な原因である2種類のタイプを加え、合計4種類のHPVを予防し男性にも接種可能なGardasilです。これらは日本国内でも承認済みで、2013年4月1日から、予防接種法に定められた定期接種となりました。しかし、ワクチンとの因果関係が否定できない持続的な疼痛が接種後に見られたことから、この副反応の発生頻度等がより明らかになり、適切な情報提供ができるまでの間、積極的な接種を積極的に推奨しないという対応が、2014年1月の段階でとられています。
このワクチンを接種しても、子宮頸がんの発生を完全に防ぐことはできないため、子宮頸がんスクリーニングは必要です。また、HIVなどを含めた他の性病の予防効果はないため、性感染症に関する正しい知識とコンドーム使用による予防について、子どもたちに教育することの重要性に変わりはありません。
11歳や12歳の女児のなかには、第2次性徴が始まっておらず、まだまだ性感染症とは無関係そうな子どもたちも多いのですが、ティーンエイジャーの行動は、両親を含めた大人には予測不可能です。子宮頸がんリスクについては、HIVや妊娠のリスクと同様に、家庭や学校で子どもたちとオープンに話し合って、正しい知識に基づいた予防をすることが重要です。
その他、詳細はこちらのリンク先を参照してください。アメリカの感染症とワクチンの公的機関であるCDCのサイトが公表している案内です。(英語のみ)
Cervarixについて:http://www.immunize.org/vis/vis-hpv-cervarix.pdf
Gardasilについて:http://www.immunize.org/vis/vis-hpv-gardasil.pdf
文責:寺島 慶太
最終アップデート:2014年1月