麻疹・おたふく・風疹ワクチン
MMR (Measles, Mumps, Rubella) Vaccine

MMRとは、Measles(麻疹:はしか)、Mumps(ムンプス:おたふく風邪、流行性耳下腺炎)、Rubella(風疹:三日ばしか)の頭文字を取っています。これら3つのウイルスは小児期に感染しやすく、ワクチンによる予防が可能です。

麻疹は、「恋ははしかと同じで、誰でも一度はかかる。」という文学的名句がいまでも引用され誤解されていますが、決して子ども達がかかってはいけない重篤な感染症です。持続する非常に高い発熱、咳、鼻水、目やにではじまり、全身の発疹があとから出現します。急速に肺炎や脳炎などに進行し、命を落とすこともあります。発症した場合に有効な抗ウイルス治療は存在しません。

さらに恐ろしいことに、麻疹にかかった後何年もたってから、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる知能障害やけいれんが進行する難病が発症することも知られています。不幸にも麻疹発症後にこの合併症を起こしたお子さんを、日本のこども病院での研修医時代に担当したことがあります。このお子さんは、ふらつきを訴えて入院してきましたが、症状が徐々に悪化し、数年で完全に寝たきりとなり、意思疎通もできなくなってしまいました。私が転勤になった時点でも、このお子さんに回復の見込みはなく、人工呼吸器に依存した状態で入院中でした。この病気がワクチンで防げたかもしれないと思うと、とても残念です。

ムンプスは、「おたふく風邪」とも呼ばれるように、両側の耳下腺(耳の下にある、唾液を作る器官)の腫れと、発熱や頭痛が特徴的なウイルス感染症です。急性期の症状は自然に良くなることが多いのですが、比較的高率(報告によっては約10%)で髄膜炎を起こし、ひどい頭痛や嘔吐を催し入院が必要になります。このウイルスに対しても、発症後に有効な抗ウイルス治療は存在しません。精巣炎、難聴といった合併症の頻度も高いことが知られています。

風疹は「三日ばしか」とも呼ばれることがありますが、麻疹とは無関係の感染症です。発熱や発疹などいくつかの特徴的な症状が似ていることと、急性期症状の平均的な期間が麻疹に比べると短いため、このように呼ばれたのでしょう。麻疹やムンプスに比べて急性期に重症化することはまれですが、ワクチン未接種で小児期にこのウイルスに感染しなかった女性が、妊娠初期にこのウイルスに感染すると、難聴、白内障、心臓病、精神運動発達遅滞などが生まれつき発症する、先天性風疹症候群が赤ちゃんにおこることがあります。このウイルスから妊婦さんを守るには、妊娠前の予防接種しかありません。

アメリカでは、この三つのワクチンがひとつになったMMRワクチンを、12-15ヶ月と4-6歳の2回接種するのが標準的なスケジュールです。MMRVといって水痘(Varicella)ワクチンと一緒になった四種混合ワクチンを用いることもあります。日本では、MRワクチンという麻疹と風疹の2種混合ワクチンと、ムンプスワクチンを別々に接種します。

その他、詳細はこちらのリンク先を参照してください。アメリカの感染症とワクチンの公的機関であるCDCのサイトが公表している日本語の案内です。

http://www.immunize.org/vis/jp_mmr03.pdf

文責:寺島 慶太

最終アップデート:2014年1月