B型肝炎ウイルスワクチン
HBV (Hepatitis B Virus) Vaccine

B型肝炎ウイルスは肝臓に慢性的に感染し、炎症を起こします。慢性感染とは、ウイルスが肝臓に住み着いてしまう特殊な状況です。一度この状況になってしまうと、自然な免疫の力ではなかなかウイルスを駆除できず、肝臓が絶えずダメージをうけ、長い年月を経て肝臓が機能しなくなり、さらに癌になる可能性が高くなります。アメリカでは現在200万人の慢性感染者がいます。

現代ではほとんどが、出産時に母から子供に伝染します。その他、血液・性行為を介して感染します。滅多にないことですが、唾液を介しての感染も報告されています。家族が慢性感染者で、日常的に接触する場合は、ほんの少しですがリスクがあるので、歯ブラシや髭剃りの共有は避けるよう勧められています。アメリカではワクチンが開発され、計画的に接種されるようになってから、患者の数が大幅に減りました。日常生活で他人から感染することはありませんが、子供が青年になり、社会活動の幅が広がると、潜在的なウイルス保持者から感染する可能性はあります。

日本では、このワクチンは”任意接種”なので、多くの人が受けていません。たしかに、母親が慢性感染者でなければ、赤ん坊に差し迫った感染リスクはありません。しかし、実は日本にいるからこそ、B型肝炎は気を付けなければいけない病気なのです。アジア、特に東アジアは世界でも最も多くの人がB型肝炎に感染している地域です。日本では全人口の2-4%, 中国では5-18% そして台湾、東南アジアでは人口の15-20%の人が慢性感染しています。アメリカでは1%以下です。

私の勤務する病院の肝臓病外来では、毎週4-5人の東アジア系移民の子供が受診しています。妊娠時検査でB型肝炎が見つかり、出生時から慢性感染になった子供たちです。中国から孤児を養子にもらって、検査したら感染が判明したという例もあります。どの子も肝臓の障害は進行していないので、外来では普通に健康に見えます。しかし成長するにしたがい肝臓にダメージが蓄積していく可能性が十分にあります。生涯にわたって定期的に肝臓の機能をモニターしなければいけません。 障害が進行してくると、薬による治療が必要になります。投薬期間が長く、副作用も多く、とても辛い治療になります。この子たちの将来には、もっと効果的な薬が開発されていることを期待するしかありません。

B型肝炎はワクチンで防げます。このワクチンは、アメリカでは出生時に接種するよう勧められています。もともと、母からの感染を出産時に防ぐために開発され、安全性が確認されたワクチンなので、生まれたての新生児に接種しても大丈夫です。 確かに産まれたばかりの子供に注射をするのは気が引けますが、ここは感傷的になるのをぐっと堪えるべきだと思います。実際自分も、わが子が生まれた次の日にワクチン注射をするというときは、胸が痛みました。必死に理性で自分を説得したのを覚えています。少し大きくなってからでもワクチンは受けられますが、間隔を開けて3回打たなければならないので、なかなか手間な通院になります。どうせ赤ちゃんの時には小児科に頻回に通うことになるので、それを機会に他のワクチンと一緒に済ませておきましょう。

その他、詳細はこちらのリンク先を参照してください。アメリカの感染症とワクチンの公的機関であるCDCのサイトが公表している日本語の案内です。

http://www.immunize.org/vis/jp_hpb01.pdf

文責:浅井 章博

最終アップデート:2014年1月