Skip to main content
中嶋優子

ブログについて

中嶋優子

東京都出身、札医卒。USNH Okinawaでインターン後しばらくは様々な職場で麻酔や救急, 浪人、アイスホッケーをしながらフラフラ。ある時、アメリカで救急のトレーニングをすることを決め、Yale Emergency Medicine Residency, UCSD EMS(Emergency Medical Services) and Disaster Medicine Fellow,Clinical Research Scholar Fellowを経て Emory University Department of Emergency Medicine Assistant Professor。Metro Atlanta Ambulance Service Medical Director。米国救急専門医, 米国EMS専門医。国境なき医師団日本副会長、麻酔科医・救急医として海外派遣にも参加しています。

久しぶりの投稿をさせて頂きます。相変わらず新型コロナが猛威をふるいまくって前代未聞に綱渡り状態な米国の医療現場でヒィヒィ言いながら働きまくっています。数々の国境なき医師団の海外派遣や10年以上前から米国ERで強烈なウイルスや雑菌に暴露されまくりの自称最強の免疫系を勝手に自負している私がこの度ファイザーの新型コロナワクチンを受けてみた経験を共有させて頂きたいと思います。

接種状況

米国での新型コロナワクチンですが2021年1月13日現在で米国で大体3000万回分出回っていて1000万人強の人々が接種済なようです*。ワクチン接種は優先順位をつけて段階的にやっています。接種フェーズを1a,1b,1cに分けていて1a は医療従事者と長期療養施設入所者、1bは75歳以上、社会で必要不可欠なエッセンシャルワーカー(消防士、警察官、郵便局員、スーパー店員、公共交通機関、学校の先生など)、1cは65-74歳、16-64歳で基礎疾患を持つ者、その他のエッセンシャルワーカー(食品関係、金融、I T、法律、公衆衛生など)です**。コロナワクチンの費用は税金で賄われており受ける側は全て無料です。接種を行う医療施設側の医療行為の費用はHHS (US Department of Health and Human Services米国保健社会福祉省)のCARES Act Provider Relief Fundという約18 兆円の国家予算から支払われます。

 

現場の医師達は興奮、熱望

医療者はフェーズ1aとして真っ先にワクチンを受けさせてもらいました。私たち現場の医師の間ではこのワクチンは喉から手が出るほど切望されていて、解禁になったと同時に予約が殺到、予約システムがパンクする事態が発生していました。これは私の勤務する病院システムだけではなく、全国的にもそういう傾向が見られました。全国の救急医のいくつかのFacebookのグループでも皆まだかまだかと切望する声が氾濫しており、接種の際には喜びでいっぱい、中には感極まって接種時に涙する救急医も数々見られたし、「目ん玉刺されてでも受けたい」という意気込みの救急医も結構みられました。ワクチンが頼みの綱だ、希望の光だ、という声が多数見られています。私自身はコロナ流行の最初は「どうせインフルエンザと同じくらいの感じでしょ」と、期待していませんでしたがコロナワクチンを知れば知るほどこれは信頼できる、頼みの綱だという感触がどんどん強くなっていきました。

 

看護師、救急隊員は意外とそうでもないらしい

一方、看護師や救急隊員は医師ほどワクチンを熱望していない、というか懐疑的な人たちも結構います。私の周りでは看護師さんは大体50%くらい、救急隊員は30-40%の接種希望率くらいです。その懐疑心を払拭するのにワクチンの安全性をプロモーションをしましょう!という病院や組織からの御触れが出ています。私も所属しているNAEMSP(EMS学会)やメディカルディレクター協議会でもEMS要員の接種希望率の低さを問題視していて、医師がソーシャルメディアなどでワクチン接種しました〜、みたいなポストをすることが推奨されており、接種会場では記念撮影グッズや撮影用バックグラウンドが病院で準備されていたりします。

1回目1222

私は自分の所属の大学病院、メディカルディレクターをしている救急搬送組織とどちらででも接種することができたのですが救急隊員の接種率の向上のためと同居の家族も接種対象だったので自分の救急搬送組織で受けました。そして州のパラメディックの処置範囲にワクチン接種は入っていますのでパラメディック候補生にドキドキされながら打ってもらいました。私は国境なき医師団の海外派遣でこの世に存在するあらゆる予防接種をほぼ受けておりますがそれらに比べたらかなり細い針で容量も少なく、ほぼ痛みは感じませんでした。副反応ですが、打ったところの腕が少し重い突っ張った感じが24時間くらい続いただけでした。連続夜勤の合間に受けましたが接種後も普通に連続夜勤を続けました。これでまぁまぁ抗体が作られているはずです。やったっ。

 

2回目111

ファイザーのワクチンは1回目接種後21日後に2回目を接種することになっています。2回目はちょうどパラメディック候補生の試験期間中で幹部の元看護師や元パラメディックのベテラン組が接種係をしていました。1回目のペーペー候補生と同じくほぼ何も感じませんでした。接種後そのままパラメディック候補生の口頭試験に参加したりして、約12時間後に「今日2回目の予防接種完了〜いつもと同じ慢性疲労感しか感じていません(超余裕)!」と調子こいたFacebookのポストをアップしました。が、なんとその2時間後に結構な悪寒と吐き気と頭痛に襲われました…。イブプロフェンを飲んで布団に入ったら割とすぐ良くなりましたが、合計2時間くらいは不快な症状でした。その次の日は倦怠感はあるものの、普段から慢性疲労なのでいつもと有意に違うレベルなのかどうかよくわからない程度でした。もちろん普通に働きました。この副反応は元々あると言われていたので予想外ではなかったのですがちょっぴり自分はめちゃくちゃ予防接種を受けているので例外ではないかと思っていました。ごめんなさい。他の同僚も大体1回目はほぼ副反応は無し、2回目の方が副反応が顕著だったということをよく聞きます。これは「自分の免疫系が全力で抗体を作っている証拠だ!やったー!」ということで副反応が出ると皆Mっぽく喜んでいます。私も抗体がもうかなり結構出来上がっている状態かと思います。これでほぼほぼ守られている感じです。

 

懐疑派

米国にはやはり懐疑派の人たちが結構います。色々理由はありますが、こんなに早く出るのは怪しい、とか不妊症になる、とかデマを信じている人が多いと思います。身近な看護師や救急隊員にも思ったより懐疑派がいるのはちょっと意外でした。テッパンのCDC様はもちろんワクチンは安全かつ効果的とし、接種を勧めています。同僚や全国の救急医のディスカッション、CDCや各学会のレコメンデーションを見ているとどこも接種を推奨しており少なくともこのワクチンはリスクより利益がだいぶ大きいと言えると思います。確かに100%の予防効果ではないし、未解明なことも多いですが「無いよりはあった方が絶対良い」。毎日キョーレツなコロナまみれな患者さんを治療している最前線コロナ歩兵としては2時間くらいの悪寒でとりあえず中等症〜重症のコロナ症状を高確率で防げるなら全然大歓迎です。現在、PPEの着用などは同じようにしていますがなんだか追加の透明なPPE鎧をつけているみたいで安心のレベルが一段階アップしています。現場の人間はこの世で100%の信頼性のあるものは無いと重々わかっています。何事もRisk-Benefitの天秤です。このBenefit >>> Riskのワクチン開発研究、承認、ロジスティクスなどなどに携わってくれた皆様に感謝申し上げます。

<追記>

最近、全国の救急医の投稿や同じ職場の同僚で見たり聞いたりしているのですがワクチン接種後の抗体をスタディで接種前後で毎週測っている人たちがいます。予定通りくらいのタイミングで抗体が現れているようでますますこのワクチンは効果があることを目の当たりにしています。

https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#vaccinations

**https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccine

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。


バックナンバー