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青柳有紀

ブログについて

アメリカで得られないものが日本にあるように、日本では得られないものがアメリカにはある。感染症、予防医学、公衆衛生学について、ニューイングランドでの日常を織り交ぜつつ、考えたことを記していきたい。

青柳有紀

Clinical Assistant Professor of Medicine(ダートマス大学)。国際機関勤務などを経て、群馬大学医学部医学科卒(学士編入学)。現在、アフリカ中部に位置するルワンダにて、現地の医師および医学生の臨床医学教育に従事。日本国、米国ニューハンプシャー州、およびルワンダ共和国医師。米国内科専門医。米国感染症専門医。米国予防医学専門医。公衆衛生学修士(ダートマス大学)。

“Dartmouth Medicine”という、ダートマス大学医学部(医科大学院)とその教育病院であるDartmouth-Hitchcock Medical Centerが発行している季刊誌に、今年のMD課程の入学者の内訳が記載されていたので、参考までに紹介します。Dartmouth Medical Schoolは全米で4番目に歴史のある医学部で、アイビーリーグに所属するの7つの医学部の中では最北に位置しています。アメリカで最初にICUが作られ、またレントゲン撮影が世界で初めて臨床で実用化された歴史ある施設です。

 

  • 今年の入学希望者総数は5250人。
  • 入学者は94人。
  • 女性の割合は52%。
  • 1人は学部生の時にずっとスターバックスでバリスタとして働いていた。
  • 5人に1人は、既に科学雑誌に論文を発表している。
  • 9%は既に修士以上の学位を持っている。
  • 14%は応募時に25歳以上であった。
  • 入学者の国籍は計7カ国(バングラディッシュ、カナダ、中国、ガーナ、日本、ナイジェリア、アメリカ)
  • 25人はアメリカ国外で出生している。
  • 16人は救急隊員として働いた経験がある。
  • 1人はソーク研究所に勤務していた。
 女性の割合が50%というのは考えてみれば当然で、当然であるべきことが当然でない日本の現状は改善されるべきです(このことについては別の機会に書こうと思います)。アメリカで医学部に入るのは印象として非常に難しいように思われますが、私はそれを説明できる立場にはありません。ただ、日本の医学部で学び、日本でのインターン時代に実習生や見学者として勤務先の病院に来た医学生たちと接触した経験から言えることは、ダートマスの医学生も、(レジデント時代に指導した)アルバート・アインシュタイン医科大学の学生も、自分の知っている日本の医学生(かつての自分も含めて)と比較して、(日本とアメリカの医療システムの違いを考慮しても)圧倒的に優秀だということです。具体的に言えば、基礎および臨床医学知識、病歴や身体所見の取り方、鑑別診断、プレゼンテーション能力、カルテや必要書類作成などの事務処理能力の点で歴然とした力の差があります。
 もちろん、アメリカの医学生がすべて優秀とは限らないし、日本の医学生でも非常に優秀な方もいると思いますが、少なくとも私が一緒に働いた経験のあるこの2校の医学生に関してはそう言えます。悲しいけど事実は事実なので、彼らを見習って自分も努力しようと日々励みにしています。

7件のコメント

  1. 能力の差は、人生経験の差からも来てると思います。14%が25歳以上ということは、平均は23-24ぐらいでしょうか。日本人は卒業生の平均が24-25でしょうから、その差は大きいと思います。私は、日本も一般大学4年間卒業してから医学部に入るシステムに変える、もしくはそういう学校を半分ぐらい作るのがいいと思っていますが、不思議なことにアメリカ人の医師には”高校からストレートで6年間の学校の方がいい!”という人もいるのです。理由は学費の節約です。隣の芝というやつでしょうか。

  2. 浅井先生:先生はコロンビアにいたので、やはりアメリカの医学生の中でも特に優秀な学生たちを指導していたと思うのですが、それって年齢の差が大きいのでしょうかね。僕は、医学部のあり方は多様であるのがいいと考えていて(多様性が社会の活力につながると思うので)、従来の高卒医学部コースだけでなく、いわゆるメディカルスクールも同じ数だけあればいいと思っています。確かにアメリカの医学部の授業料の高さを考えれば、高卒医学部コースが羨ましくなりますね。しかも日本の国立の授業料なんてこっちでは考えられないくらい安いですし。

    • そう言われて思い出してみれば、コロンビアの学生は印象として平均年齢が若そうでした。高校、カレッジとストレートに優秀だった人が集まっているような印象です。”Book Smart”な印象があります。課せられたタクスは確実にこなしてきます。逆に、日本の学生に近い印象があります。

      それよりも、社会経験の長さが如実なのは、例えば、コロンビアの学生は、一緒にローテートしている学生内での競争意識が高く、同級生より良い評価を得ようという姿勢が如実でした。準夜勤帯まで一緒に働くことがあったのですが、こちらが帰っていいと言うまで絶対帰ろうとはしないし、自分の言動が一緒に働く医師たちにどういった印象を与えるかということを、ちゃんと意識していました。”世慣れ”というか、世間の厳しさを知っているという点において、やはり20代の前半か後半かというのは大きな意味があると思います。

  3. 私がメディカルスクールに入る前に通ったPostbaccalaureate Premedical Programに通いましたが、これは既に学部を卒業した人がcareer changeをして医学部に行こうとしている人達のために、受験に必要な科目を取るプログラムです。私のクラスには弁護士・経営コンサルタント・バンカー・IT関連の職歴の人達が沢山いました。こうしたプログラムは全米にあり、多様なバックグラウンドの医学生を輩出するのに一役買っており、また医学部の方も「個性」のある学生を求めているのだと思います。

    • 川名先生:コメントありがとうございます。多様性はこの国の活力の源泉だと思いますし、日本人である僕らがこの国で医者としてアメリカ人や他国の人と肩を並べて働いていること自体、考えてみれば驚くべきことなのかもしれません。いろいろなバックグラウンドを持った同僚と働くことは刺激になりますし、それによって自分の可能性も開けるような気がしています。

  4. 日本でも学卒で医学部入学してくる人たちは目的意識が高かったです。日本で新たに4年生のメディカルスクールを創設するのは(もちろん既に議論が始まっているのは知ってます)時間がかかると思いますので、もっと学卒枠を増やせばいいと思います。医学部定員を増やした数年前に学卒枠をもっと増やすべきだったと思います。あと地方枠ですね。地元に残る人を増やすために。

    • 地方枠は重要ですね。もっと言うと、地方に他県から研修医を集められるような優秀な教育病院を医学部とともに充実させる必要がありますね。

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