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齋藤雄司

ブログについて

米国の医療に憧れ、渡米後研究者から臨床医に転身。フィジシャンサイエンティストを目指すが、その後、妻が米国での内科研修を開始したため、家庭のサポートに回ることを決意。子育てにも積極的に参加。現在、日系人の多いカリフォルニア州モントレー郡で、心臓病診療に従事。内科医の妻と子供二人の四人家族。研修終了後の医師の生活、家庭のあり方、子育てなど、米国の生活に密着した情報をお伝えしたいと思います。

齋藤雄司

新潟県出身。新潟大学医学部卒業後、同大学内科研修、大学院修了。血管生物学の基礎研究に従事するためポスドクとして渡米。その後、ロチェスター大学関連病院内科レジデント、カリフォルニア大学アーバイン校循環器フェロー、カリフォルニア大学サンディエゴ校心臓電気生理フェローなどの臨床トレーニングを行う。バッファロー大学内科クリニカルインストラクターを経て、現在は、カリフォルニア州モントレー郡の開業循環器グループに所属。不整脈を含む心臓病診療に従事する。

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(この記事は、若手医師と医学生のための情報サイトCadetto.jp http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/cadetto/ に寄稿されたものです。Cadetto.jpをご覧になるには会員登録が必要です。)

ときどき、「アメリカの医療費はどれくらいですか?」とか、「アメリカではこのテストをするといくらかかりますか?」など、日本の方に聞かれます。でも恥ずかしながら、患者負担が実際どれくらいになっているのかよく知らなかったのです。というのも、診療や検査をした後の請求は、患者さんではなく保険会社にするからです。しかも通常、保険会社とはディスカウント料金で契約していますし、保険会社によっても契約料金が違い、クリニックが受け取る金額は保険によって異なります。ところが先日、保険会社を通さない患者さんのリアルな負担金額を知る機会が到来しました。

先日、私のクリニックにアジア某国から患者さんが来ました。母国での診療に疑問を抱き、私のクリニックにセカンドオピニオンを受けに来たのです。私のクリニックでは、初診の患者さんに40分枠がとってあります。普通に問診、診察をして、検査をオーダーしました。しかし、患者さんはアメリカの健康保険を持っていません。ちょっと心配になり、老婆心ながら、「アメリカは医療費が高いですからね。今日は診察だけにして、検査はお国に帰ってからされますか?」と聞きました。しかし、患者さんは母国での診療によほど不信感があるらしく、「構いません、やってください」とのこと。もしかしたら、この患者さんは、母国では相当お金持ちかもしれないと思い、それ以上とやかく言うのはやめました。

それでも、身に染み付いた貧乏人根性で、患者さんが一体いくら請求されたのか気になり、会計の担当者に聞いてみました(以下は一ドル百円換算の値段です)。初診料3万8500円、ホルター心電図2万円、心臓超音波5万円、ストレス心臓核医学試験に至っては何と21万円でした!総額31万8500円!!これがカリフォルニアで、無保険で、心臓専門医外来にかかり、外来検査を受ける際の料金です。何とも法外な感じがしますが、これがアメリカという国です。

話のついでにアメリカ医療の興味深い話をもう一つ。12月は私たちにとって大変面白い月です。今まで検査、治療を渋っていた患者さんが、「先生、やっぱり、あの検査をやってくれませんか」「あの治療を受けたいのですが」と堰を切ったように頼み込んでくるのです。そのため12月の検査、治療スケジュールはあっという間に一杯になります。年内に体を治して、すっきりした気分で新年を迎えたいのでしょうか。それもあるかも知れません。でも、もっと現実的な理由があるのです。アメリカの健康保険では、一年で支払う自己負担額の上限が決まっています(Deductableと言います)。患者さんの負担金額が、Deductableを超えた場合、それ以後はどれだけの高額医療を受けても患者さんの持ち出しは「ゼロ」です。12月は健康保険契約の最終月なので、自己負担総額がDeductableを超えた患者さんが結構出てきます。そのような患者さんたちが、雪崩を打ったように検査、治療に駆け込んでくるのが12月という訳です。

このようなアメリカ医療、どう思われますか?日本で生まれ育った私には、未だに異次元の世界をのぞいているようです。「地獄の沙汰も金次第」ではないですが、こんなんで本当にいいんだろうかと思ってしまう年末です。

6件のコメント

  1. 斉藤先生、お久しぶりです。ストレス心臓核医学検査21万円は安いように思えるのですが、カリフォルニアのがニューヨークより安いのでしょうか(笑)?実は私の夫にストレスエコーをしたところ、同僚に「請求しないでおくよー」と言われたのに、全額25万円の請求が来ました、、、。私たちの保険の情報がなぜか抜けていたそうです(病院のスタッフなのに、、、)。
    ちなみに、保険による薬のカバーに関しては、最高額が決まっている保険もけっこうあるようで、年の最初の方がいいようですね。年の半分くらいで、許容額を使い果たして薬は全額負担になってしまって困っている患者さんもいます。先週はそんな患者さんも、しばらくは大丈夫、とサンプルを請求しませんでした(笑)。

    • ユミ先生、コメントありがとうございました!そうですか、薬についてはカバーされる最高額が決まっているのですか。歯科保険のようですね。私も歯科治療にかかった金額が、保険上限を超えたときは、それ以上の治療は翌年に持ち越しますから:)
      病院とクリニックとでは同じ検査でも請求金額がかなり違うと思います。病院はクリニックの2−3倍くらいの値段で請求しているので、ストレスエコーはクリニックでは10万円くらいではないでしょうか?もちろん、保険会社からのリインバースメントにも2−3倍の開きがあります。開業循環器医が病院勤務医へと流れていく訳ですよね。

  2. 齋藤先生

    日本がいかに安くというか,アメリカが単に高いだけなのかは分かりませんが,興味深く拝見しました.
    一点だけ確認ですが,Deductableでしょうか,それともDeductibleでしょうか.

  3. Deductibleが正しいです。ご指摘ありがとうございました。アメリカの医療は、本当に異常なほど値段が高いです。余談ですが、高等教育にかかるお金も日本とは段違いです。私立大学の一年の学費は、600万円くらいまで上がっています。最近では、大学にはすごい金持ちか、すごい貧乏人(学費免除の特典がある)しか行けないと言われているほどです。親が離婚していると得られる経済的な恩恵もあるため、子供を大学に入れるためにわざと(形式的に)離婚するという手法もあるようです。どういう社会なんだか?と思ってしまいます。

  4. TV Japanで知りました。この様なSiteを探しておりました。News Letterの配布先に加えて戴けると幸いです。

    内海

  5. 内海様、ようこそ、あめいろぐへ!これからも生活に密着した生のアメリカ医療情報を提供して行きたいと思います。今後もよろしくお願い致します!

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