髄膜炎菌ワクチン
Meningococcal Vaccine

髄膜炎菌は、文字通り髄膜炎や敗血症といった重篤な疾患の原因となる細菌です。米国における髄膜炎菌性髄膜炎や敗血症の発生率は、毎年10万人あたり0.5から1.5人と、それほど多くありません。しかしその症例は小児に多く、発症すると10-15%の非常に高い確率で死に至るとされています。

髄膜炎菌性髄膜炎の患者さんに初めて接したのは、まだ医学生だった頃、ロンドン大学関連病院での臨床実習に参加した時でした。20代前半の、それまでは健康な女性でしたが、発熱と頭痛の症状が現れてから1日も経たないうちに症状が急激に進行し、人工呼吸器なしでは生命が維持できない状態になっていました。病気の進行が早いのは、髄膜炎菌による髄膜炎や敗血症の特徴です。

髄膜炎とは、簡単に言うと脳を覆っている膜の炎症を指します。髄膜炎の一般的な症状は、発熱、頭痛、意識障害、吐き気や嘔吐などです。髄膜炎は細菌だけでなく、ウイルスによる感染や薬の副作用でも起こりますが、細菌が原因になっている場合、早急な治療と対応を要する病気です。また、敗血症とは、血液の中で細菌が繁殖している状態を意味します。発熱、悪寒・戦慄、意識障害などが症状としてみられます。髄膜炎と同様、早急な治療を要する重篤な病気です。

世界には、髄膜炎菌による感染の流行がみられる地域があります。特に、東はエチオピアから西はセネガルにいたるサハラ以南のアフリカの地域は「髄膜炎ベルト地帯」と呼ばれており、しばしば大流行し、多くの人々が亡くなっています。

米国では、大きく分けて2種類の髄膜炎菌に対するワクチンが使用されています。結合型ワクチン(MCV4、商品名:Menactra® もしくはMenveo®)は2歳から55歳の方が対象で、多糖体ワクチン(MPSV4、商品名:Menomune®)は56歳以上の方が対象です。髄膜炎菌にはいくつかの異なるタイプが存在しますが、これらのワクチンは、それらの中でも4つのタイプ(A、C、Y、W-135)による感染を予防します。米国ではほかにもB群と呼ばれる髄膜炎菌の流行が時折報告されますが、現時点でB群髄膜炎菌に対して有効なワクチンは存在しません。

米国では11歳から18歳までのすべての子どもに対して髄膜炎菌ワクチンの接種が推奨されています。一般的な接種スケジュールとしては、11歳から12歳の間に一回接種し、16歳になったら、ブースターといって、免疫を強化する目的でもう一回接種します。

また、2歳から10歳までの子ども、および19歳から55歳の方に対しても、髄膜炎菌感染のリスクが高い方に対してはワクチン接種が推奨されています。例として、先天的に免疫機能が低下している方、過去に脾臓の摘出を受けた方、また上に述べた髄膜炎の流行地域に旅行する予定がある場合などです。また米国では大学の学生寮に入居する際に、髄膜炎ワクチン接種の証明を求められることがあります。

その他、詳細はこちらのリンク先を参照してください。アメリカの感染症とワクチンの公的機関であるCDCのサイトが公表している案内です。

http://www.cdc.gov/vaccines/vpd-vac/mening/default.htm

こちらは、日本の感染症研究所のページです。こちらもご参照ください。

http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k05/k05_20/k05_20.html

文責:青柳 有紀

最終アップデート:2014年1月