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小林美和子

ブログについて

小林美和子

世界何処でも通じる感染症科医という夢を掲げて、日本での研修終了後、アメリカでの留学生活を開始。ニューヨークでの内科研修、チーフレジデントを経て、米国疾病予防センター(CDC)の近接するアメリカ南部の都市で感染症科フェローシップを行う。その後WHOカンボジアオフィス勤務を経て再度アトランタに舞い戻り、2014年7月より米国CDCにてEISオフィサーとしての勤務を開始。

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肺炎球菌ワクチン(大人) Pneumococcal Vaccine (Adults) 

肺炎球菌はその名前の通り、肺炎の原因になる他、髄膜炎(脳や脊髄を覆っている髄膜に菌が感染することで生じます)、菌血症などの原因となる菌で、時として死に至るような重篤な感染を起こします。抗生剤が使用されている現在においても、この菌が血液感染して菌血症になった場合の死亡率は15-20%程度といわれています。また、髄膜炎は重篤であるのみならず、後遺症を残すことのある怖い病気です。私も研修医の頃、肺炎球菌による髄膜炎にかかり、後遺症のため髄膜炎にかかった時以降の出来事に関しては長く記憶することができない方を担当したことがありました。

この菌は多くの人の鼻や喉に常在しており、なぜ時として病気を引き起こすのかはよくわかっていません。成人では高齢者(65歳以上)、喫煙者、脾臓を摘出する手術を受けた人、免疫力が病気や治療によって弱っている場合などに特に肺炎球菌に感染しやすいとされています。以前に私が担当したケースでは、病気のために脾臓をとる手術をした40代の若い方が、肺炎球菌によるひどい菌血症をおこし、治療にもかかわらず結果として幼いお子さんを残して亡くなられました。今でも強く記憶に残っています。

肺炎球菌は90種類以上あるとされていますが、大人用ワクチンは、最も病気に関連するとされる23種を対象としています。小さい子供(小児用参照)、あるいは免疫力が弱っている場合は、接種をしても免疫がつかない場合があります。

肺炎球菌ワクチンは、菌血症や髄膜炎など重篤な感染症に対して特にリスクを減少させる効果が高いとされています。肺炎に対する予防効果をはっきりと示すデータは出ていません。アメリカでは、65歳以上の全ての人は、特別な理由がない限りワクチンを受けることが推奨されています。65歳未満でも、免疫力が低下している人、糖尿病や腎臓病など内科疾患のある人、脾臓の摘出術を受けた人などがワクチンの対象になります。日本では原則自費であるものの、地方自治体によっては高齢者などへの公的補助をおこなっています。なお、脾臓の摘出術を受けた方への接種は日本でも保険適応となっています。

その他、詳細はこちらのリンク先を参照してください。アメリカの感染症管理の公的機関であるCDCのサイトが公表している案内です。

http://www.cdc.gov/vaccines/vpd-vac/pneumo/default.htm

日本語のサイトはこちらが分かりやすくまとまっていますので、ご参照ください。

http://www.know-vpd.jp/vc/vc_nw_haienkyukin_adlt.htm

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/pneumococci1.html

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