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ブログについて

ハワイは温暖な気候と全米一のCultural mixが見られ、医師としての幅広さを養うにはいい環境と感じています。
旅行だけでは見えない、ハワイ在住の魅力もお伝えできればいいなと思います。

野木 真将

兵庫県出身、米国オハイオ州で幼少期を過ごす。京都府立医大卒、宇治徳洲会病院救急総合診療科の後期研修を修了。内科系救急を軸とする総合診療医として活躍したい。よきclinical educatorとなるため、医師としての幅を広くするため渡米。2014年よりハワイで内科チーフレジデントをしながらmedical education fellowshipを修了。2015年よりハワイ州クイーンズメディカルセンターでホスピタリストとして勤務中。

野木 真将のブログ
2019/11/04

医学教育修士課程、最終年度!

 今週は大学院の対面授業(1週間)のため、イギリスのマンチェスター近辺の町に来ています。
 2017年から医学教育の修士課程(マスター)を始めていましたが、最終年度(3年目)の今年はいよいよ学位論文のため研究に集中することになります。これまでの2年間は課題の締め切りに追われてドキドキする毎日でしたが、今年はペースが変わってホッとしています。それと同時に、仕事を続けながら自分を律して学位論文(dissertation)を作成することの大変さに不安も大きいです。
 受講している修士課程は、医学教育分野での評価と認証(assessment and accreditation)を特徴としたものです。
 米国での海外医学部卒業医師の支援と認定をするECFMGから創設されたFAIMERという団体の全面サポートを受け、イギリスのCenMedicという遠隔学習が得意な団体と手を組んだ人気上昇中のKeele大学とコラボしているあたりが気に入ってます。まさに米英コラボです。日米での医学教育しか知らない自分にとっては、欧州の医学教育哲学に触れる機会は貴重でした。他の米国内私立大学のコースに比べて学費も安い(月に$500)のも嬉しかったですね。
紹介していただいたN先生には大変感謝しています。

 他にどのような修士課程があるのか興味があれば、こちらのFAIMERのサイトに一覧がまとまっていて参考になると思います。

●入学資格

 英語圏での学士課程相当の英会話能力を証明するもの(IELTs, TOEFLなど)、 決意表明の小論文(Personal statement)、推薦状(2通)、これまでの学位などを添付して申請します。
 TOEFLを受けても良かったのですが、私の場合はハワイ大学の内科レジデントプログラムを卒業したことを伝えると英会話試験は免除してもらえました。
 大学側の事務と必要な手続きのやりとりを数回して学費を払い、8月からスタートです。

●遠隔授業の概要

 これまでの2年間は、合計7つのモジュール(下記)に即して自習課題をこなすDistant learning (遠隔学習)の形でハワイから参加していました。
モジュール
      1. (学習者の)アセスメント(評価)の基礎
      2. (医学教育施設としての)認証評価とセルフレビューの基礎
      3. アセスメントと認証評価の応用編
      4. カリキュラムのデザインと評価
      5. 医療従事者に特有の教育と学習
      6. リサーチデザインについて
      7. 医学教育における管理とリーダーシップ
 隔週で送られてくる80-100ページ近いPDFのテキストを読み込み、様々な課題を2−3週毎に提出しなければなりませんでした。ホスピタリストの働き方(1週間勤務、1週間休み)で自由時間があるからなんとかこなせましたが、毎回締め切り直前まで焦っていたのが正直なところです。
 医学教育に関連した課題論文を批判的に吟味する短い課題もあれば、論文を1つ書くような大変さのものまでありました。Academic writingの練習にとても良いですが、社会科学系論文に不慣れな自分にとっては、限られた字数制限の中で逐一使う用語を定義づけ引用し、不採用の理論を批判しつつ、オリジナリティを出すという作業にいつも悩んでました。採点後のコメントに「質問に答えてない」と書かれたこともあり、凹んだ思い出もあります。
 専用の掲示板上で積極的に発言していくことも採点基準に入ります。自分としてはもっと発言したかったのですが、課題の締め切りギリギリまでかかっている身としては発言のタイミングを逃した感があったのが反省です。

●対面授業の内容

 今回の対面授業は、3年目が始まってすぐのタイミングで企画されています。ここでは学位論文に必要なスキルの講義に参加し、参加者やチューターとディスカッションをして自分の研究デザインを磨いていきます。
 1日目を終了した感想は、「刺激的」につきます。
 今までオンライン掲示板やメールでしか交流のなかったチューターや同期と顔を合わせて各国の事情や意見交換をすることにとてもインスピレーションを感じます。同期生は、大半がイギリスからですが、他にもアフガニスタン、パキスタン、インド、エジプト、シリアなどからも参加しています。
 初日は全員の学位論文研究プロジェクトの概要プレゼンを聞きながら批判的にディスカッションをするというものでした。私のチューターであるジャネットグラント先生にも直接指導していただけて光栄です。彼女は医療政策、認可、認定、カリキュラムなどのプロセス評価のエキスパートであり、WHO(世界保健機構)やWFME (世界医学教育連盟)でも活躍しています。私にとっては知識の泉と同時に豊富な経験に裏付けされた知恵の宝庫です。他にもFAIMERから参加しているチューターの方々も含蓄ある意見をどんどんくれるのでなんでも勉強になります。
 以前にこのコースに参加して学位論文研究を完了した先輩から体験談とアドバイスの講義もありました。内戦などの苦難を乗り越え、母国の医学教育システムの発展のために努力した姿にとてもインスパイアされました。
 2日目以降は、医学教育研究デザイン、システマティックレビューの実施、レファレンスマネージメントシステム、定量的研究の実施、定性的研究の実施、論文盗用を含む研究倫理、英語でのアカデミックライティングなどについてのセッションが続きます。
 4日目の目玉は、世界医学教育連盟(WFME)の会長デビッドゴードン氏を招いての認可機構についての講演とディスカッション(「教育研修施設の認証評価システムは医学教育の質を高めるか?」)です。自分自身の研究テーマとも関係していることもあり、今から楽しみでしょうがないです。締めの夕食会で積極的にディスカッションをしようと思います。

●医学教育の修士課程について思うこと

 フルタイム勤務をしながらの修士課程は大変でしたが、遠隔地からも学習できる制度があり、課題というペースメーカーに引っ張ってもらい、この2年で医学教育を個人、団体、国、時間軸など様々な角度から考察することができました。これまで考えなかったことや常識を揺さぶられること(PBLの効用など)に出会い、哲学、行動科学、心理学などが弱点の自分には最適な訓練でした。
  2020年4月から岐阜大学で日本初の医療者教育修士課程が始まると聞きます。後輩たちには嬉しいニュースではないでしょうか。
  この先も行動と省察を続けながら、「唯一解がない」とFCMEのパンフレットでも表現されていたように医学教育に向き合っていきたいと思います。これからもクリニカルエデュケーター(臨床現場での教育者)として腕を磨きながらも、システムやプロセスを分析して解決策を考えられるように頑張りたいと思います。
 私が参加しているプログラムに興味のある方は個人的に連絡いただければ詳細をシェアしたいと思います。
写真1)会場のホテル。ハリーポッターの世界観。
写真2)会場で紹介されていた推薦図書
写真3)初日のアイスブレーキングでは、グループごとに参加者の意気込みや期待することを5つずつ書き出し、みんなでカテゴライズしていくNominal groupという活動をしました。
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