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小児がんの診療と研究における最新の話題を提供したいと思います。米国のNational Cancer Instituteが発行しているCancer Bulletinや学術雑誌などから、米国発の関連ニュースを提供したいと思います。日本ではなかなか情報が入らない、新薬の治験結果なども積極的に取り上げたいと思います。

寺島 慶太

名古屋大学医学部を卒業し、6年間の国内研修後、ニューヨークで小児科レジデント研修を行う。その後ヒューストンで小児血液腫瘍および小児脳神経腫瘍フェローシップ研修を行う。現在、小児腫瘍専門医として、テキサス小児病院およびベイラー医科大学で、小児脳腫瘍の診療と研究に従事している。日本で小児脳腫瘍の包括的診療研究プログラムを立ちあげるのが目標。

寺島 慶太のブログ
2012/02/03

日本のがん対策推進基本計画(素案)について:小児がん対策 (その3)

4. 分野別施策と個別目標

7. 小児がん

(現状)

「「がん」は小児の病死原因の第1位であり、成人と異なり生活習慣と関係なく、乳幼児から思春期、若年成人まで幅広い年齢に発症し、希少で多種多様ながん種からなる。」

「一方小児がんの年間患者の数は2000人から2500人と少ないが、小児がんを扱う施設は約200程度と推定され、医療機関によっては少ない経験の中で医療が行われている可能性があり、小児がん患者が必ずしも適切な医療を受けられていないことが懸念される。」

「また、強力な治療による合併症に加え、成長発達期の治療により、治癒した後も発育・発達障害、内分泌障害、臓器障害、性腺障害、高次脳機能障害、二次がんなどの問題があり、診断後、長期にわたって日常生活や就学・就労に支障を来たすこともあるため、患者の教育や自立と患者を支える家族に向けた長期的な支援や配慮が必要である。」

「さらに、現状を示すデータも限られ、治療や医療機関に関する情報が少なく、心理社会的な問題への対応を含めた相談支援体制や、セカンドオピニオンの体制も不十分である。」

1番目と2番目のパラグラフで指摘されているように、小児がんは、あらゆる臓器や器官から発生する小児期特有ながん種の総称であり、それぞれのがん種は年間で全国で発生する患者数がたった何十人から何百人という希少がんです。ちなみに日本で一年間にがんと診断されるのは676,000人、そのうち5大がんと呼ばれる成人がんの年間患者数は、胃がん:117,000人、大腸がん:105、000人、肺がん:83,000人、、乳がん51,000人、肝臓がん:42,000人です(2005年統計)。つまり小児がんはがん全体からすれば、わずか0.3%ほどを占めるのみなのですが、それでもこどもの病死原因第1位であり、その0.3%のなかにありとあらゆるがん種が含まれます。まずは、この希少ながんに政策医療の焦点が当てられたことに素直に感謝したいと思います。

これほどまれな病気なのですが、全国で200近い施設(80の大学病院、約20の小児病院、、4つのがんセンター、約100の総合病院小児科)に症例が分散してしまい、年間数例の小児がん患者しか訪れない多くの施設で、小児がん診療が行われているのが現状です。一方、欧米の多くの国では、国の政策や専門医の主導で、患者を多くのスタッフを抱える拠点施設に集約化し、細分化されたプログラムで診療レベル向上させ、豊富な症例をもとに次世代の専門家を育成し、同時に高い研究レベルを維持しています。そのような施設で、小児がんの診療は日々進歩していますが、多くの日本の施設は1-5人しかいないスタッフで、数は少なくても種類は多彩な小児がんに対応せざるを得ず、専門性を高めるのが困難で、文献などを参考に世界の標準治療についていくのが精一杯という状況です。それでも頻度の多い白血病では、オールジャパン体制で世界の最先端レベルで多施設共同治療研究も行われていますが、多職種チーム医療が必須の固形腫瘍や脳腫瘍の分野では、とても苦労しています。

それぞれの施設で患者数が少なければ、人的資源は限られており、急性期の小児がん診療で多忙なスタッフが、長期にわたる小児がんサバイバーのフォローアップや、患者の就学・経済的などの社会的支援にまで関わらざるを得ません。良質な臨床試験に重要なデータ収集や事務的な作業も、診療の片手間に行うため漏れが多く、本来臨床試験に参加できる症例がその機会が得られなかったり、なんとか参加登録できてもデータが不十分で、本来期待される研究成果が得られないということにもつながります。

このようなさまざまな問題の原因である希少症例の分散ですが、小児専門施設の増加や、大学病院等で専門を学んだ人材が関連病院へ異動となり、新たに小児がん診療を始めるという状況もあり、むしろ分散は進む方向にあります。さらに、現在の少子化傾向です。ベビーブームのころと比べて、小児人口は半減しています。いま対策を打たなければ、日本の小児がん診療・研究レベルは、先進国の水準をできなくなる可能性があります。

(続く)

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