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熊倉純子

ブログについて

NICU(新生児集中治療室)で、毎日多くの事を学び、よい仲間に囲まれながら楽しく働いております。そんな中で、日々経験したことや、気がついたことについてお伝えできたらと思います。

熊倉純子

東京都出身。高校時代に1年間アメリカへ交換留学。日本赤十字看護大学卒業後、慶應義塾学病院で6年半ほど小児科新生児領域で看護師として勤務。看護師のキャリアを考える中、 アメリカの医療看護事情に興味を持つ。RN (Registered Nurse) ライセンス取得後、アメリカへ看護留学し、 OPT(オプショナルプラクティカルトレーニング)としてフロリダ片田舎の総合病院小児科にて1年間勤務。一旦日本に帰国し、日本看護協会に1年間勤務するも、再び渡米、アインスタインメディカルセンターNICUへ2年半勤務後、現在のペンシルバニア大学病院NICU勤務にいたる。

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「アメリカは世界の中で裕福な国家であるが、健康な国ではない」というようなフレーズが新聞* に掲載されていました。*The Wall Street Journal OPINION “Those Misleading World Health Rankings” (2/4/13) より

日本を含む13先進国の中で、アメリカは公衆衛生の指標となるHIV/AIDS、心疾患、糖尿病などの疾病率が高く、下位にランク付けされています。また、平均寿命についても、アメリカ人男性は最下位で、アメリカ人女性は日本人女性のトップ平均寿命85.98歳に対し、80.68歳と最下位から2番目となっています。

この記事ではアメリカ人の平均寿命が他の先進国に比べ短い事について「短寿命や他の健康アウトカムは、ヘルスケア以外の様々な要因によって決まっており、健康不利益の大半は臨床システムや病院や医師がどうこうできる範疇ではないところの問題が原因である。例えば致死的な自動車事故や、殺人などがアメリカの全体的な寿命を縮めている」ともコメントされています。

もう一つ、健康の指標とされるているのは乳児死亡率です。筆者はアメリカは高所得国の中で乳児死亡率が一番高いが、この結果はアメリカの医療の質を必ずしも反映してるとはいえないとし、アメリカの乳児死亡率が一番高くなっている理由としてアメリカの医療現場での技術進歩と、国によって生児出生の定義が異なる事を挙げています。アメリカの医師は他国に比べ、早産児の救命をアグレッシブに行っており、他国では死産とされ、生きるチャンスを与えられていない命がアメリカでは救命されている(あるいは、救命が試みられている)ため、アメリカの乳児死亡率は例外的に高い。−イギリスより65%高く、フィンランドとギリシアより2倍高い。残念ながら、アメリカで救命が試みられた早産児が助からなかったケースが乳児死亡率を上げている。しかし、ほとんどの早産児はアメリカの医療研究が卓越して優れているため、救命できている。早産児治療は、医療技術や医療機器の発達により目覚ましく進歩した、と述べられています。

(この記事はオバマケアよってこのようなアメリカの医療の強みが縮小されてしまうというような、共和党政権による民主党政権のオバマケアへの批判的内容で締めくくられています。)

個人的には、アメリカの乳児死亡率が高い理由がこの記事に書かれていた通りであるかは他のデータを比較しない限り断言はできないのではないかと思います。アメリカは国民の社会経済的レベルの差が幅広いため、一部の低所得者または、教育の行き届かない層の母親から生まれる児の乳児死亡数がアメリカ全体の乳児死亡率を引き上げていることもあるのではないかとも思います。日本の乳児死亡率は世界的にも低くトップクラスですが、妊婦健診受診率や母子手帳の普及等、周産期ケアの充実が大きくプラスに影響しているのだろうと感じます。

数値だけを見ると、日本は平均寿命、乳幼児死亡率、世界の医療レベルランキング (WHOデータ) などにおいても常にアメリカより優位に位置づけられています。それなのに日本からアメリカに留学する医療者が多い理由は何か、またアメリカの医療現場で働く魅力、学ぶべき事は何かと考えさせられます。今のところアメリカで働く醍醐味は、毎日さまざまな人種の同僚や患者さんと接し、自分が日本人であることを実感し多くの刺激を受けながら仕事ができるというところです。

 

4件のコメント

  1. 僕もこの記事の論調には賛成しかねます。論理展開が明確ではないですし、論点もバイアスがかかっているように見えます。寿命に自動車事故や銃による外傷の多さが影響していることには賛成しますが、乳児死亡率の高さに関して、他の国に比べアメリカが未熟児をより積極的に助けようとしているとするのは誤りです。Health Systemは病院などの医療だけでなく、医療政策や公衆衛生も含めた概念です。それらを包括して米国では結果が出ていない、というのがInstitute of Medicineの論点でしょう。それをオバマケアと関連させて論じてしまうのも無理やりな感が否めず、あまり良質な記事とは言えないと思います。

    ただ、米国のマクロの指標が悪いからと言って、そこから学ぶべきものがないというわけではありません。良くも悪くも米国は先進的な取り組みをしていますし、そこで起こる議論から学ぶ点は多いと感じます。恐らく大事なのは、様々な事柄について個別具体的に客観的に物事を吟味する視点と、文化・国家・地域特異的な環境に落とし込む際にそこから何を取り入れるべきかという判断だと思います。

    • コメント大変有り難うございます。

      「良くも悪くも米国は先進的な取り組みをしていますし、そこで起こる議論から学ぶ点は多いと感じます。恐らく大事なのは、様々な事柄について個別具体的に客観的に物事を吟味する視点と、文化・国家・地域特異的な環境に落とし込む際にそこから何を取り入れるべきかという判断だと思います。」というところ、多いに同感です。

      例えば日本では医療事故防止に対し、新人看護師時代から繰り返し教育されてきましたが、アメリカは試行錯誤の結果、医療事故防止の個人への教育を強化するというより、システムそのものにアプローチし、薬剤管理について言えば、全てコンピュータ管理し制御(事故防止という目的に加え、事故が発生したときのエビデンスとして活用)している印象があります。薬の取り出しに指紋認証システムを使用し、麻薬や、定時オーダー以外の薬の取り出しは2人の指紋認証が必要であったりします。このように、次から次へと人間の行動がコンピューター制御されていくことにやや脅威を感じます。また、看護師や看護助手が病院内でトラッキングディバイス(小さなプラスティックのタグ)を装着し、コンピューターにより患者の病室への訪室などの行動を管理するというシステムを使用していることもあります。確かに、先進的な取り組みではありますが、このようなシステムが日本に必要かは疑問があります。やはり、アメリカと日本とでは特に文化・社会的背景の差が大きいので、出来上がったシステムや、取り組みのみを吟味するのでなく、そもそもそのシステムや取り組みがなぜアメリカで必要とされていたのかという経緯まで掘下げ吟味する必要があると感じます。

  2. >看護師や看護助手が病院内でトラッキングディバイス(小さなプラスティックのタグ)を装着し、コンピューターにより患者の病室への訪室などの行動を管理するというシステムを使用

    これ本当ですか!?とても驚きました。行動を解析することで、効果的な物品の配置やプロセスの改善に応用可能な技術のようにも思えますが、行動監視目的のシステムだとしたらちょっと恐ろしいですね。逐一行動を監視されることで、労働者のモラルと意欲の低下につながりはしないかと危惧します。

    • このトラッキングディバイスから得られるデータは、スタッフの配置計画や、患者からのクレームへの対応、またはスタッフが患者のベッドサイドで費やす時間のトラッキングなどの目的で管理者に使用されていることがあるようです。そして、時にはデータが法的意味を持つ証拠となるということ、得られたデータを看護管理者が看護師個人の評価に使用することを疑問視する内容や、看護師労働組合などがトラッキングディバイスの装着を反論しているという記事を看護系雑誌や研究論文などで読んだことがあります。このように、トラッキングディバイスの装着については米国内でも賛否があるようです。

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