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宮下浩孝

ブログについて

腫瘍内科の歴史が長い米国での臨床トレーニングの体験をシェアすることで、医学生や若い医師が腫瘍内科に興味を持つきっかけになりたいです。

宮下浩孝

2017年東京大学医学部卒業。東京大学附属病院での2年間の臨床研修、ニューヨークのマウントサイナイベスイスラエルでの3年間の内科研修を経て、2022年7月からダートマス大学にて血液、腫瘍内科フェローシップを開始。 固形腫瘍に対する新たな治療の確立に貢献したいと考えています。

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2023年3月の研修はフェローシップ1年目では2度目の外来での研修でした。前回はフェローシップが始まって間もない2022年8月に外来ローテーションを行いました。平日10コマ中6コマの外来診療にあたるという構造で勤務します。どの指導医のクリニックを選択し、どのような疾患の診療にあたるかを自分で選択できるため、今回は以下の6つのクリニックを選択し、研修しました。

 

General hematology clinic

こちらの外来では、血球数や分画の異常、あるいはリンパ節腫大や脾腫など、まだ診断が確定していないものの、血液疾患が疑われる症例を主に扱いました。血液疾患といっても疾患は数限りなく存在しており、同時に非常に多くの検査項目があるため、必要十分な検査で診断にたどり着くことは頭を使う作業です。骨髄生検は多くの場合で非常に有用ではありますが、侵襲的な検査であり、患者さんへの負担が大きいため、なるべく生検なしで診断がつけられるように検討しています。

 

Hypercoagulability and thrombosis clinic

血液疾患でも特に凝固系の異常に関する診察を行います。深部静脈血栓症や肺動脈塞栓症を発症した方のうちで、かかりつけ医や入院担当医が遺伝性、あるいは二次性の凝固異常を疑った際にコンサルトされます。頻度の多い疾患としてはFactor V LeidenやAntiphospholipid syndromeがあります。悪性腫瘍に対する化学療法のレジメンなどに比べて、治療選択のもとになるエビデンスが確立していないことがしばしばあるため、各症例のバックグラウンドを細かく吟味したうえで治療することが肝要です。一方で、血友病やVon Willebrand Diseaseなどといった出血傾向を伴う疾患も診察します。

 

Cellular therapy clinic (myeloma)

骨髄移植やCAR-Tといった細胞治療を必要とする患者さんを診察する外来です。当院ではニューハンプシャー州やメーン州、バーモント州から骨髄移植やCAR-Tを必要とする患者さんを受け入れているため、多くの患者さんがこの外来を訪れます。指導医のバックグラウンドの関係からほとんどが多発性骨髄腫の患者さんです。もちろん移植やCAR-Tそのものは入院にて行いますが、入院前の適応評価や、退院後のフォローアップなどを主に外来で行っています。CAR-Tは比較的新しい治療法であり、まだまだ長期フォローアップのデータも不足しているので、この外来でそういった患者さんを診察できることはとても良い経験になります。

 

Thoracic oncology clinic

主に肺がんを扱う外来ですが、指導医ががんセンターの治験の責任者をしていることから、治験に組み込まれている患者さんが比較的多いクリニックです。治験は医師一人でできるものではなく治験コーディネーターなどと密接にコミュニケーションをとりながら診療、研究にあたっています。

 

GI oncology clinic

主に消化器がんのクリニックですが、神経内分泌腫瘍(膵臓や虫垂から発生する比較的まれな腫瘍)の患者さんを多く診察しています。神経内分泌腫瘍は一般的にはゆっくりと進行する疾患ですが、急速に進行したり、症状のコントロールが難しかったり、その治療には難しさもあります。近年では分子標的薬に加えて177Lu-DOTATATE(lutathera)という放射性医薬品を使った治療も行われており、とても興味深い疾患です。

 

Breast medical oncology clinic

乳腺腫瘍内科は米国の腫瘍内科において非常にメジャーな分野であり、乳がんの発生頻度や術前術後化学療法が多く使用されることから、多くの患者さんが入選腫瘍内科外来で診察を受けています。乳がんはがんのステージだけでなく、その生物学的、遺伝学的特徴をもとに最善の治療を決めるという、Precision Oncologyの概念が最も早く取り入れられたがん種の一つであり、その内科的治療はとても細分化されています。近年ではOvertreatmentの問題を解決すべく、どのような特徴を持った患者さんはより少ない治療で十分か、といった研究が活発に行われています。

 

4月はリサーチのローテーションとなり、臨床業務は非常に少なくなります。研究は血液腫瘍内科のフェローシップにおいてはとても重要であり、ある程度の研究業績を出すことが終了要件の一つにさえなっています。次回の記事では私が取り組んでいる研究について記載したいと思います。

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