Skip to main content
宮下浩孝

ブログについて

腫瘍内科の歴史が長い米国での臨床トレーニングの体験をシェアすることで、医学生や若い医師が腫瘍内科に興味を持つきっかけになりたいです。

宮下浩孝

2017年東京大学医学部卒業。東京大学附属病院での2年間の臨床研修、ニューヨークのマウントサイナイベスイスラエルでの3年間の内科研修を経て、2022年7月からダートマス大学にて血液、腫瘍内科フェローシップを開始。 固形腫瘍に対する新たな治療の確立に貢献したいと考えています。

★おすすめ

12月の研修は腫瘍内科コンサルトとして入院患者さんの悪性腫瘍の管理、治療に関するコンサルテーションを行いました。悪性腫瘍に関する質問であれば、原発巣や進行度、また、確定診断がついているか否かに関わらずコンサルトを受け、検査や治療についてアドバイスします。当院では、腫瘍内科の外来診療では臓器特異的な診療体制になっていますが、入院コンサルトでは臓器横断的な診療を行っており、フェローにとっては大変貴重な学びの場となります。

 

腫瘍内科コンサルト

当院では血液内科病棟はありますが、腫瘍内科病棟は存在していないため、固形がんに対する入院化学療法が必要な患者さんはHospital Medicineが主科となり、腫瘍内科はコンサルタントとして診療に関わります。日米を比べるとアメリカでは化学療法を入院中に行うことは非常にまれであり、真に緊急性があり、外来化学療法が不可能であるものに限られます。具体例としては、気道や脈管を圧迫している肺小細胞がん、頭頚部がん、あるいは胚細胞腫瘍などがあげられます。

一方で、腫瘍内科コンサルトの理由の多くは化学療法の導入ではなく、進行がんに対してすでに外来薬物療法を行っている方が何らかの理由(薬物治療による副作用やその他独立した疾患)で入院した際に、がんの治療をどうするか、というものが多いです。近年特に増えているものとしては、免疫チェックポイント阻害剤に伴う有害事象(pneumonitis, hepatitis, colitis など)の管理についての質問があります。また、外来での薬物治療が奏功せず、がんがさらに進行し、全身状態の不良で入院された方に対して、今後の治療オプションの情報提供を行い、療養目標を再設定するお手伝いをすることもあります。

さらに、初発の進行がんと思われる病巣が見つかった患者さんにおいては、どの部分から生検を行い、ほかにどのような検査を行うべきかという質問を受けることもあります。基本的には推定される原発巣に対して、最も進行したステージを与える遠隔転移巣を生検することが理想的とされますが、侵襲性や病巣の大きさなどを検討して最適な生検部位を決定していきます。腫瘍内科が生検を行うわけではないため、Interventional Radiology、Surgery、Pulmonology、Urologyなど侵襲的な手技を行う診療科との連携が重要となります。また、がん種によって腫瘍マーカーが重要であるもの、あてにならないものなどさまざまであるため、どのような血液検査が妥当かという点についてもアドバイスを行います。

普段は10-15名の患者さんを担当し、1日に1-3件の新たなコンサルトを受けるという流れで勤務します。新規のコンサルトをメインに、指導医とディスカッション、回診を行います。毎週異なる指導医が入院担当となるので、各患者さんのマネジメントに関して複数の目でチェックされることとなり、安全性も担保されているように感じます。

また、ダートマスがんセンターはニューハンプシャー州で唯一の指定がんセンターであることから、他の病院からの電話での相談を受けることもあります。トリアージはフェローの仕事であり、緊急性の高い症例は当院に搬送し、必要であれば化学療法を導入します。

 

当院では人員の関係から腫瘍内科コンサルトを担当するフェローが凝固異常コンサルトも担当します。凝固異常コンサルトに関しては、2023年5月にふたたび腫瘍内科コンサルトを担当するので、その際に詳しく記載いたします。

 

1月からは2か月間、VA(退役軍人病院)で研修を行います。ダートマスがんセンターが高度で専門的な治療を行う一方で、VAでは血液/腫瘍内科領域におけるCommon Diseaseを扱います。もちろん指導医は常駐していますが、一般的な疾患の治療がメインであるため、フェローが比較的独立して診療を行えるようになっており、一人前のMedical Oncologistになるためのとても良いトレーニングになると期待しています。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。


バックナンバー