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ウィーランド 栄子

東京都出身。2005年末、結婚に伴って40歳を過ぎて渡米。ナーシングホームと病院でCNA,PCTとして6年ほど働く。GateWay community college の Associate in applied science, respiratory careを卒業。2013年よりlong term acute careであるSelect Specialty HospitalでRRTとして勤務。毎日言葉の壁と戦いながら奮闘中です。

ウィーランド 栄子のブログ
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2017/03/12

米国で呼吸療法士として働いてみて「延命治療も私の重要な仕事です」

(この記事は2016年12月21日に 活動的な高度な自律的なナースのための情報サイト 日経メディカルAナーシングhttp://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/anursing/ameirogu/に掲載されたものです。該当記事をご覧になるには会員登録が必要です。)
 
 私は、アメリカに移住してもうすぐ11年になります。日本にいる時は医療系とは程遠い仕事をしておりましたが9年前、ひょんなことからコミュニティカレッジで看護助手(CAN:Certified Nursing Assistant)とPatient Care Technician(P.C.T)の資格が取得できる2つのプログラムのクラスを取り、P.C.Tとして病院で働き始めました¹。その後、働きながら呼吸療法士の資格を取得するため、米国呼吸療法士協会の指定校の一つである公立の短期大学に通いました²。

 

人工呼吸器からの離脱を療法士の裁量で判断
 私は今、アリゾナ州にある45病床のロングタームアキュートケア(長期急性期医療)の病院であるSelect Specialty Hospitalで呼吸療法士として働き始めて、3年になります。呼吸療法士の仕事は、名前の通り呼吸器管理に関することが主ですが、勤務先の入院患者はICUから直接送られてくるような重度者が多く、毎日人の命と向き合って仕事をしています。

 

 交通事故や転倒による骨折、脳神経障害、慢性肺疾患、脳梗塞、心筋梗塞、薬物中毒、肺移植など様々な原因、病状の患者が入院しています。全体の80%が人工呼吸器を装着しており、全体の90%が気管切開チューブを留置。気管切開チューブを留置していない患者でもほとんどが非侵襲的陽圧人工呼吸器であるBIPAP、ハイフローセラピー(high flow nasal cannula)、または鼻カヌラによる呼吸管理を受けています。気管内チューブを留置したまま搬送されてくる患者もいます。

 

 私の勤務する病院では、これらの呼吸器管理からのweaning(離脱)が呼吸療法士のメインの仕事です。積極的なweaningをモットーとしており、様々な医療行為を医師のオーダーなし(事後報告)に、プロトコールに沿った上で各療法士の判断で実施しています。具体的には、人工呼吸器の設定変更や着脱、動脈血ガスの採取や分析、およびその結果による対応、スピーキングバルブ使用、Aラインや胸腔ドレーンの管理、その他色々な医療行為を担当。ベッドサイドで気管内挿管や気管切開を行う際には医師の助手も務めています。

 

 1日12時間勤務で、気管切開部のケアとネブライザーによる薬剤投与から1日が始まり、ほぼ休みなしで1日が終わります。

 

 呼吸療法士の仕事をしている中で最も嬉しいのは、状態が良くなった患者が退院し、次のステップであるリハビリテーションのための病院や施設に移って行く姿を見る時です。ただ、慢性肺疾患の患者の場合、退院してもまた戻ってくるケースが多々あります。例えば、長期に渡る仕事での粉じん吸入によってじん肺を患った70歳代の患者は、私の勤務する病院に3回戻ってきました。高齢の患者は、モルヒネなどの強い鎮痛薬やロラゼパムなどの向精神薬の服用、そして長い入院生活の環境によって認知症が悪化することがよくあるのですが、この患者もそうでした。でも、仕事の合間をぬって寝ずにお見舞いに来る奥様をいつも楽しみに待っていました。とても仲の良いご夫婦で、「今でも頑張っているだろうか」と時々思い出します。

 

延命治療の中止を短時間で決断
 また、呼吸療法士の重要な仕事として、患者の延命治療中止に携わることがあります。アメリカでは、延命治療の差し控えや中止については、全州で法制化されています。毎回スムーズに短時間で決断、実施されます。

 

 ある末期のCOPDの患者は、私の勤務する病院に3回目に戻ってきた時、生命維持装置を停止することになりました。回復の見込みがない場合、医師が患者またはその家族に、comfort care(尊厳死)を打診します。同意が得られた場合、具体的にどこまでの治療を打ち切るかを話し合います。どの薬を打ち切るか、経管栄養や、人工呼吸器はどうするか――。

 

 ほとんどの場合、家族は全ての医療行為を同時に止めてしまうことを選ばれます。そして治療をやめる1時間ほど前から、家族は患者を看取るために集まってきます。そして何時間かのうちに亡くなります。10分もかからず亡くなることもあれば、ある患者は全ての治療を止めてしまったのにもかかわらず、2週間生きていました(この時は、ある理由により後見人がcomfort careを覆すことはありませんでした)。

 

 決められた仕事とはいえ、人工呼吸器を外す瞬間はとても嫌なものです。まるで自分が罪の無い人の死刑執行人になった様な気がして、毎回 「人の命」について考えさせられます。

 

 アメリカの全ての病院の呼吸療法士が私達と同じような内容の仕事をしているわけではありませんが、患者の呼吸器管理に関わる部分は呼吸療法士の仕事と位置付けられています。専門職種ごとに役割分担をすることで、治療の流れをスムーズにし、アメリカの医療の質を向上させていると思います。
1) 米国で看護助手として働くためには
米国の病院やナーシングホームで介護、看護助手として働くには、米国の看護師協会が発行するCNA(Certified Nursing Assistant)の資格が必要で、筆記と実技試験があります。Patient Care Technician(P.C.T)とは看護助手に付加できる資格で、基本の看護助手の仕事に加えて、採血、尿管カテーテルの挿入と抜去、静脈ラインの抜去、心電図のセッティングおよび解読などが行えます。

 

2) 米国で呼吸療法士として働くためには
呼吸療法士になるためには、米国呼吸療法士協会の指定校である大学、専門学校などで、数学、化学、生物学、心理学など約20クラスの必修科目(正看護婦プログラムの必修科目と同じ)を受講した後、呼吸療法士のプログラムを2年間受講します。このプログラムを卒業後、米国呼吸療法士協会の試験を受けます。試験は2段階あり、まずcertified respiratory therapist(CRT)になるための試験を受け、合格すると、自分の住んでいる州の呼吸療法士協会にライセンス取得の申請をすることで呼吸療法士として働く資格が得られます。CRTになると、さらに難易度の高いregistered respiratory therapist(RRT)の資格を取得するための試験を受けることができます。以前はどの病院でもCRTを雇いましたが、近年はより高度資格であるRRTのみを募集している病院が増えています。この他にも、呼吸療法士に付加できる資格として、乳幼児科や小児科のスペシャリスト、ICUスペシャリスト、肺機能検査技師、睡眠技師などがあり、それぞれ試験に通ることで資格が取得できます。
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