あめいろぐカンファレンス

ここは、米国医療における最新の話題や論争のある題材について、あめいろぐメンバーが議論を交わす場です。

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第5回
2018年03月02日
『あめいろぐホスピタリスト』出版記念-ホスピタリストが日本の医療を救う!-
モデレーター:反田 篤志
メンバー18読者1
コメンテーター: コメントを投稿
石山 貴章
野木 真将
『あめいろぐ予防医学』に引き続き、あめいろぐ書籍化シリーズ第二弾『あめいろぐホスピタリスト』が3月8日、丸善出版から発売されます。

ここでは著者のお二人、石山貴章先生と野木真将先生をお招きし、本音ベースでホスピタリストに対する熱い想いを語っていただきます。石山先生は日米でホスピタリストとして経験を積まれ、まさに”酸いも甘いも”知り尽くした病院総合診療のスペシャリスト。野木先生は、ハワイでチーフレジデント、医学教育フェローシップを修了されたあと、現役のホスピタリストとして活躍されています。

そんな最強のお二人を迎えた今回のカンファレンス。ぜひお気軽にコメントやメッセージをお寄せください。

こちらの『あめいろぐホスピタリスト』紹介ページもぜひ訪れてみてください。
http://ameilog.com/c/conferences/conference/5
カテゴリー: 内科
9野木 真将 2018年03月12日 12:27
今回の執筆で一番苦労したのは、広い範囲のテーマをどこまで深く、どこまで絞って書くか、という点だったと思います。特に高齢者ケアと医療の質の部分でしょうか。それぞれの章が独立して1冊の本になりそうなぐらいのトピックでしたので。

ホスピタリストをしていると、「どこまで深く」「どこまでの守備範囲を責任を持って」というのはいつも考えていることなので、今回はその感覚を大事にしながら書くことにしました。

「どこまで深く」の部分はホスピタリストとしての姿勢に関わると思っています。「自分は専門じゃないから」と言って思考を停止するか、現在の知見をしっかり把握して専門医も唸るようなディスカッションをできるようにするのか、これは個人差があるように感じます。日本で研修をして専門医が常にある状況でない僻地の診療も経験した身としては、診療の深さの部分は妥協したくないですね。

一方で「どこまでの守備範囲を責任持って」の部分は、患者への責任感が指標となってくる気がします。今回の場合は「執筆で取り扱う範囲」なので読者のみなさんが対象ですが。

まえがきで反田先生が言及してくれているように、これは完全体の教科書ではないので、そこの自由度と悩ましさをバランスよく感じながら今回は楽しく執筆させていただきました。

5年後とかにもし改訂するとしたら、全く違うトピックスを選ぶかもしれません。
10石山 貴章 2018年03月12日 17:56
少しコメントが滞っておりました。すみません。

私の場合、まずは第1章でできるだけわかりやすくホスピタリストそのもののイメージを読者に持ってもらえるように、との意識がありました。最後の章も同様です。また、プラクティカルな部分では、病棟でレジデントに直接話しかけるような感じを意識していました。

どこまでの守備範囲か、はつねに悩ましいところですが。私も野木先生同様、手技以外ではある程度までサブスペシャリティー医ともディスカッションできるレベル、を目指しています。

何でもかんでもコンサルとしてしまう、あるいはコンサルトが入った状態を、私のかつてのボスは「Consultitis」と呼んで揶揄していました。この状態では、アテンディングが手綱を引ききれず、かえって患者の利益を損なう、というのが彼の口癖でした。バランスが大事かと思います。これを書きながら、この部分も書籍の中で強調できたなあ、と少し残念です。。
11野木 真将 2018年03月16日 13:57
確かにコンサルタントとの関係性には気を使います。「彼からコンサルトが来たら、きっと本当に困っているのだろう」という信頼を得られるように日々努力しています。CYA (Cover Your A**) medicineという言葉を知ったのもこちらに来てからですね。

書籍の中でもっと強調しておきたかったものと言えば、他職種の豊富さとプロフェッショナリズムの高さでしょうか。APRN, NP, PharmD, MSW, case manager, PT/OT/SLP, chaplainなど、多くの職種に支えられて現代の病棟管理は成り立っているので、そのあたりの安心感と難しさも強調したかったですね。その意味でも「コンダクター」という言葉はぴったりですね。
12反田 篤志 2018年03月17日 22:31
Consultitis、CVA medicine...素晴らしいネーミングですね笑 医療の現場ではきわめてセンスあるネーミングがしばしば見られるのはなぜなのでしょうか?

コメディカルの独立性およびプロフェッショナリズムは、僕も日米で大きく違うように感じました。決して日本のコメディカルの方々が優秀ではないとは思いません(むしろたくさん優秀な人いますよね)が、構造的に活躍しにくい(権限が明確に分かれていない、文化・心理的障壁が高い)ように見受けられます。これを進めていく弊害があるように思えませんので、特定看護師の拡大も含め、日本ではさらにコメディカルが活躍できる体制を整えていくべきだと思います。

本書では特に「日本の医療現場で軽視されている」「専門性の隙間に落ちている」領域を重点的にカバーしたと考えています。血栓症、アルコール関連疾患、肺炎、尿路感染症、せん妄、血糖マネジメントなんて、特にそうですよね(というかほぼ全ての章を挙げてしまいましたが…)。まあ有体に言うと、こういった主診断で入院した場合「入院科の選定に困る」ものです。

特に石山先生など、このような領域でベストプラクティスを自らが実施するのにも、診療科や病院全体としてそれを広めていくのにも苦労が絶えないかと思いますが、差し支えない範囲でそのあたりのことを教えていただけますか?そして、そういった課題をどうやって乗り越えていくべきなのか、ちょっと議論できればと思います。
13石山 貴章 2018年03月22日 04:13
反田先生、ありがとうございます。まずは、プロフェッショナルの部分から(私も、このことはもっと書籍で述べるべきだったなあ、と後悔しています)。。

おっしゃる通り、日本で仕事をしていると、コメディカルが大人として扱われていないなあ、としみじみ感じます。何かオーダーをしても、すぐに指示簿に記載してください、とよく言われます。多数の看護師にまたぐ場合であればまだ理解できますが、いっときの指示であっても、です。また同様に、薬剤師に薬の変更を頼んでもできない。看護師は看護のプロ、薬剤師は薬剤のプロ、であっても、です。ここは残念ながら、こちらが我慢をしつつ、少しづつ問題提起をしていく、しかなさそうです。

あとは、日本でホスピタリストを広げて行くために障害となる点、それがこの、「カバー領域」の話だと思います。今回の書籍でカバーした部分は、ホスピタリストの仕事として非常に大切なものばかり、です。ただご存知の通り、米国では「これだけではなく」、基本全ての内科疾患をカバーするわけです。翻って日本では、「専門性の隙間に落ちている」疾患がメインになるわけで、これでは若い人にその面白さが伝わりにくくならざるを得ない。「どうせ、誤嚥性肺炎だけ見るところでしょ」と言われてしまう(私のところにきてくれた後期研修医が、そういうことを以前に言われたそうです)。

ここは、これからの課題かと考えます。野木先生、いかがですか?
14野木 真将 2018年03月22日 05:44
 そうですね、「まず専門内科への入院」がアルゴリズムの最初にある入院管理システムではなかなか総合内科の本領は発揮できないですね。一昔前は、「慢性頭痛があるから脳神経外科受診の予約をとる患者」「息切れがするから呼吸器内科受診の予約をとる患者」という患者主体の診療科選択が入院の前段階としてあったのですが、このあたりは紹介状を持って受診を促す病院が増えたことで少しは解消されたのではないでしょうか。

 とにかく「まずは総合内科に入院してから、専門内科の関与を検討する」というパラダイムシフトが必要だと感じます。その障壁となるのが何か?「自分の所属科に入院をさせたがる専門医」の思考パターンや「専門内科への入院数を減らしたがらない病院管理職」の思考パターンが気になります。これは"boundary conflict" (境界領域に関わる衝突)以上の心理的な背景を感じます。

 もし専門医からの障壁として「ホスピタリストへの信頼度の低さ」があるのであれば、それは時間とともに信頼関係を作っていくしかありませんよね。もしその信頼度の低さが、「胆石胆嚢炎なのに消化器内科入院にならないのですか??」という患者側からくるのであれば、それは全ての職員からの啓蒙教育が必要となってきます。

 ただ単に、「昔からうちの病院は各専門内科がしっかりやってきたから、今さら変える必要はない」という変化への抵抗感だけでも説明はつきますが、それでは超高齢化社会と医療技術の進歩、過疎地域での専門医獲得の難しさを考慮していない、ただの心理的抵抗感による思考停止ではないかと心配になります。

 私はそれらの歴史的、院内文化的、心理的な障壁以上に、経済的な理由があるのではないかと推測しているのですが、なかなか本質に迫ることができていません。

 この辺りは公衆衛生や医療政策に明るい反田先生のご意見も聞きたいところです。

15反田 篤志 2018年03月24日 10:11
難しいところですね。

経済的な理由があると仮定したときに考えられるとすれば、やはり前述の「コンサルテーション料」の部分でしょうか。日本では、院内でコンサルテーションをしたとしても、病院にもコンサルテーションを受けた専門医にも経済的なメリットは確かに生じません。経済的な側面からは、積極的に「ホスピタリスト」型の診療に移行する利得はないわけです。

しかし私は、「ホスピタリスト」型の診療が広がらない根本原因は、経済的な理由ではないと考えています。むしろ、医学界・医療界の文化・価値観に根差すものではないでしょうか。具体的に言えば、「主治医制」「ヒエラルキー」「縄張り」「縦割り」の診療。さらに言えば、これは大学病院・医局の昔ながらの価値観、そしてやり方に起因するのではないかと考えています。「自分の患者でないのだから、私には関係ない」-ここまで極端でなくても、そういった考えをある程度持つ医師も、まだまだ多いのではないでしょうか。このような考え方は、ホスピタリストが体現する「コンダクター」としてのチーム医療、そして本当の意味での患者価値を主眼に置いた医療とは対極をなすものです。

日本の医療の現場に、こうした考えを持つ医師がまだ一定数以上いるとすれば、ホスピタリストが可能にする医療の形、そしてそこからもたらされる価値に対する理解が浸透しないことにも納得がいきます。ホスピタリストの付加価値が「腹落ち」しきっていないのであれば、従来の専門科主体の入院行動を変える(行動変容を起こす)のは難しいでしょう。

この考えが正しいとすれば、それに対する打ち手も見えてくるのではないかと思います。考えうる打ち手も書いていきたいところですが、ここでいったん止めておきます。かなり言い切りましたが、大丈夫でしょうかね…。的外れでなければいいのですが。
16野木 真将 2018年03月29日 08:16
反田先生、興味深い意見をありがとうございます。このように本音が聞けるのがウェブカンファレンスの醍醐味ですね。

縄張り、文化などの問題は米国でも1990年代にホスピタリストの黎明期に浮き彫りになった点ではないでしょうか。そこからどのようにコンセンサスを得てきたのかは歴史的に面白い点ですね。

個人的には「医師の働き方改革」「僻地の人材不足」「高齢化」などの切迫した問題が、理屈ではなく心情や態度の部分にテコ入れをしてくれるのではと期待しているのですが、じゃあ誰が、どのようにイニシアチブを取るのか?がまだ見えてきませんね。学会主導では戦国時代や幕末時代と変わらない気がします。ホスピタリスト界の薩長連合が必要です。
17反田 篤志 2018年04月15日 01:26
野木先生、石山先生、ここまで熱い議論をありがとうございました。本書の発売から約一か月となり、各方面から嬉しい反響をいただいています。まさに病院における総合診療医、ホスピタリストのニーズが高まっていることの証左ではないでしょうか。

最後に、今後病院診療を担っていく若手医師、これからの指導医に対して、お二方から簡単にメッセージをいただければと思います。
18野木 真将 2018年04月24日 06:53
反田先生、石山先生、楽しく熱いウェブカンファレンスの機会をありがとうございました。

これからの病院診療を担っていく若手医師、そしてそれを指導する医師、見上げる医学生のみなさんへのメッセージですね。

1)批判的に、建設的に、量よりも質を!
 母数が増えていく高齢者と終末期の診療、複雑化する検査と治療選択、経営危機になる病院の実態を前に、既存の医療を批判的に見る態度が必要となってくると思います。
High Value Careと表現されるように、「なんとなくやっている」慣習的な事はどんどんと見直し、診療の量よりも質を大事にする姿勢がホスピタリストに求められていると思います。

2)医療はチームで!
 医師だけで勉強会、医師だけでカンファレンスをしていませんか?患者のケアの質を考慮すると、医療従事者全体でコラボレーションをして情報を共有し、最良のアウトカムを求めるべきではないでしょうか。また、「一人のスーパーマン的な医師」の献身的な診療や教育体制に頼るのはよくないですね。お互いの職種がどのように考えて、どのような可能性を秘めているのかを学生時代からどんどん学ぶ機会が欲しいですね。

3)知識の暗記よりも、情報検索に長けた医師を目指す
 総合的に診療していく事の難しさの一つは、知識やスキルのアップデート範囲が広い事だと思います。医学生、研修医のみなさんには現時点のベストプラクティスや標準治療を学ぶ事と同時に、「担当患者に生じたクリニカルクエスチョンを上手に言語化して、情報検索して、集めた情報を批判的に吟味する」能力(Evidence Based Practice)を鍛えていって欲しいと思います。それができれば、研修医時代を終えた後の残り30年+の医師人生を推進していく強力なエンジンを積んだことになります。ホスピタリスト業務はその知的好奇心を刺激するのに最適な場でもあります。敬遠せずに飛び込んで行ってみてください。必ずその魅力を感じることができると信じています。指導医の先生方は、知識の詰め込みよりも上記の点を強調していただきたいと思います。

まだまだ書きたい事はありますが、このあたりで。米国でのホスピタリストの実務を見たいかたは、気軽にご連絡ください★楽園ハワイでおもてなしさせていただきます。
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