あめいろぐカンファレンス

ここは、米国医療における最新の話題や論争のある題材について、あめいろぐメンバーが議論を交わす場です。

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第4回
2017年12月17日
『あめいろぐ予防医学』出版記念-予防医学の考え方と課題-
モデレーター:反田 篤志
メンバー54読者0
コメンテーター: コメントを投稿
青柳 有紀
津川 友介
樋口 雅也
2018年1月31日に、あめいろぐ書籍化シリーズ第一弾『あめいろぐ予防医学』が丸善出版より発売されます。

今回は出版を記念し、著者である反田篤志、青柳有紀に加え、医療政策学・医療経済学の専門家である医師の津川友介氏、米国家庭医療・老年医学専門医でありアメリカで日々予防医学に携わっている樋口雅也氏を迎え、様々な角度から予防医学を論じます。

予防医学の考え方、課題、そして日本の現状と問題点まで、鋭く切り込んだ議論を展開していきますので、ぜひお気軽にコメントおよび感想をお寄せください。

『あめいろぐ予防医学』に関して、詳しくはこちらのページをご覧ください。
http://ameilog.com/c/book/
カテゴリー: 公衆衛生・予防医学
45樋口 雅也 2018年01月10日 07:25
"推奨されるミニマムな予防医療のリストを公開する"ことは大変効果的だと思います。 
「世の中には様々な予防医療がありますが、まずこれらを考えてみて下さい。(余力があったり、個別の条件・考え方であれば、他の予防医療も考えてみましょう)。」など優先順位を付ける助けになるのはとても重要だと思います。

限られた診療機会・時間の中では全ての予防医療のを話し合うことは出来ません。なのでクリニック勤務時には前述されていたUSPSTFのまずAとB推奨を最優先して相談するようにしています。定期的にエビデンスにもとづき更新されるので、大変助かっています。
46樋口 雅也 2018年01月11日 07:50
また、現場における広い意味の予防医療では
健康増進(promotion of health, primordial prevention, prevention of risk factor) と
疾病予防(prevention of disease)の
両方を実践しているということも大切なポイントになると思います。

健康は 環境、バランスの取れた食事、運動、精神衛生など様々なことが合わさり達成することが出来ると言われています。病にかかりにくい身体や心、また健康を維持する基礎力を養うこと、これが健康増進とされています。とても大切なことです。生活や嗜好など様々な要素が関連するため、継続的に何を、どのように、どれだけ、といった具体的なアクションは一人ひとり違うものになるでしょう。

対して、疾病予防は「特定の病気」などにかかること予防、早期の診断、悪化を防ぐなどです。特定の病気を対象とするため、研究がし易いという側面があると思います。(疾病予防の「エビデンス」を得られやすい)=誰に(何歳の人に)、いつ、どれくらいの頻度で(辞めることも含め)、どのような方法で、とエビデンスに基づいた推奨としてメッセージし易い傾向があると思います。

医療現場では「健康増進」としてはある程度推奨できることなのか、または特定の「疾病予防」のためにエビデンスがあること(ないこと)なのかを分けて考えることも必要なのだと思います。
47樋口 雅也 2018年01月12日 07:59
前述された”正しい”予防医療が患者に効果をもたらすため数多くのステップを乗り越え、患者が連続的な実践・行動を続けるための鍵は大きく3つあると考えてます。
1、エビデンスに基づいた間隔での定期的な診察、介入、フォローアップ(パッケージ化・あわせ技含め)
2、診療チーム全員で一貫性・継続性をもった診療の実践
3、個人のためのカルテ と 診療の対象となるコミュニティー全体のためのカルテ を用いた情報整理・管理
の3つです。

1、「なんとなく」1年に1回の人間ドック、と考えるのではなく、エビデンスに基づいた間隔でそれぞれの予防医療を実践してゆくことです。
連続的な実践・行動が必要な生活習慣への介入などは、診療時における行動科学に基づいた動機づけ面接(本書のSMARTなど)。そして様々な診療機会を予防医療とパッケージにして提供(機会を最大限活用)することです。

例としては、禁煙治療中の患者さんです。
この患者さんが3日間続く息苦しさで来院したとします。
この際息苦しさの原因を診断し治療するだけでなく、禁煙治療のフォローアップとしてもこの機会を活用することです。また2ヶ月後に(3年ぶりの)子宮頸癌検診の予定に合わせて、禁煙治療のフォローをすることも提案できます。
このように継続的な実践・行動が必要な予防医療の場合、定期的なフォロー、動機づけ面接などが有効とされています。ただ、予防医療だけのために来院すること自体が大きなハードルになりかねません。ですから頻回にフォローが必要な場合はこのあわせ技が大変重要になります。
(苦しい→タバコが関連とわかる→更なる禁煙継続への動機づけ になるかもしれません)
また電子メール、電話、ソーシャルメディア、スマートフォンアプリなどを最大限活用する試みも始まっています。

2、は1をチームで実践することです。
もちろん医療者個人の継続的な診療、そして患者さんとの繋がり・医師-患者関係は大切です。それを更に効果的に、または補うためのチーム医療が予防医療には欠かせません。
ともに働く医師・看護師・医療事務・ソーシャルワーカー・薬剤師などが予防医療に関してアプローチやゴールを共有、役割を明確にすること、これがチームで継続性を実践する鍵になります。

3、そして最後に2種類のカルテ(医療情報の記録、蓄積、その情報へのアクセス)です。
1つ目は患者個人のためのもの。過去、現在行っている予防医療。またエビデンスに基づきこれから始める、辞める予定の予防医療一覧*。毎回の診療時に大変役立ちます。
もう一つは患者全体を見渡せるようなカルテです。例えば Aという予防接種を受けてたことがあるのは通院している65歳以上の人の何%か?という質問に答えられるような情報の記録方法です。
この数字があることで、医療チームとしてどのように日々の診療を変化させてゆくべきか、どのようにしたら「正しい」予防医療が適切な人に、タイムリーに届けられるか。といった予防医療の質の向上に繋がるからです。

この3つが継続的な予防医療実践の鍵だと考えています。
*Medicare(米国高齢者などが対象の公的医療保険)の定期検診での必須項目の1つに「5年~10年後におこなうべき予防医療のリストを提供する」ことがあります。
またこれを提供できていることが医療者の質評価や保険診療請求額にも関連することがあります。
https://www.cms.gov/Outreach-and-Education/Medicare-Learning-Network-MLN/MLNProducts/downloads/AWV_chart_ICN905706.pdf
"Establish a written screening schedule for the beneficiary, such as a checklist for the next 5 to 10 years,as appropriate"
48反田 篤志 2018年01月13日 00:18
なるほど。効果のある予防医療をきちんと評価すること、それに基づき推奨されるミニマムな予防医療のリストを公開すること、それらの知見を元に現場が予防医療に総体的に取り組むこと、さらに、その取組みをデータで可視化し継続的な改善につなげること、この四つが合わさるとことで効果的な予防医療が提供できるようになると考えられますね。

まとめに入る前に、そもそも予防医学・予防医療は何を目指すべきなのか、という点について少しだけ。本書でも触れていますが、私の理解では、予防医学の目的は医療の価値の最大化、すなわち、集団として最小のコストでQALY(Quality-adjusted life year)を最大化することだと考えています。よくある誤解として「医療費を下げるために予防が重要だ」というものがありますが、そもそも予防医学は医療費を下げることを目的としていませんし、実際に予防に注力したからといって医療費が下がるわけでもありません。そもそもの予防医療の”目的”がきちんと共有されることが、効果的な予防医療を広めていくうえで重要だと思っています。

さて、本カンファレンスもそろそろ終わりになりますが、コメンテーターの皆さんに最後に一言ずついただきたいと思います。まずは津川先生、いかがでしょうか?
49津川 友介 2018年01月26日 03:16
大変勉強になるディスカッションに参加させて頂き、ありがとうございました。国民の健康と、持続可能な医療制度を構築することは全ての先進国が達成しようとしており、そして苦しんでいることでもあります。もちろん全ての予防医療が医療費削減につながるわけではありませんが(https://healthpolicyhealthecon.com/2014/07/17/preventive-medicine-and-health-spending/)、それでも予防医療が医療費抑制のカギであることは間違いありません。世界で最も少子高齢化が進んでおり、最も借金の多い日本では、今後数年以内に大幅な医療改革が必要になってくると私は考えています。その時に、「治療から予防へ」の考えが必須である一方で、「予防なら何でも良いのではなく、きちんとエビデンスに基づいた予防医療に注力する(エビデンスの弱い予防医療は避ける)」という考え方が重要になってくると思います。反田先生と青柳先生の本がきっかけとなり、日本にもきちんとエビデンスに基づいた予防医療が根付くことを切に願っております。ありがとうございました。
50反田 篤志 2018年01月28日 08:16
ありがとうございます。まさにマクロな視点から、エビデンスに基づく予防医療の普及は重要課題だと考えます。

次に樋口先生、コメントをお願いできればと思います。
51樋口 雅也 2018年01月29日 20:26
予防医学・予防医療と医療費に関しての複雑な関係も、一般にはとても伝わりにくいものです。費用対効果の計算も複雑で、完璧ではありません。
だからこそ「きちんとエビデンスに基づいた予防医療に注力する(エビデンスの弱い予防医療は避ける)」ことと、そのメッセージを正しく伝えてゆくことが大切だと思いました。
そして本書を通して多くの人に、この大切なメッセージが伝わることを願っております。
今回はこのような機会を頂きありがとうございました。
52反田 篤志 2018年01月31日 18:56
樋口先生ありがとうございます。それでは最後に青柳先生からも一言いただきたいと思います。今回の議論を振り返って、いかがだったでしょうか?
53青柳 有紀 2018年02月03日 03:59
アメリカを拠点に世界的に活躍されている津川先生と、同じくアメリカを拠点に老年医学・緩和医療の第一線で活動されている旧知の樋口先生(初期研修時代の同期です)の貴重なご意見を伺うことができ、非常に刺激を受けたカンファレンスでした。(予防医学に限ったことではありませんが)とりわけ日本における予防医学に関しては、エビデンスに基づいた合理的判断と政策が求められていると改めて感じました。後半で樋口先生から日々の臨床に役立つ実践的な提言もあり、多くを学ばせていただきました。予防医学は既存の医学専門領域の枠組みを超えて横断的にpopulation healthのあり方にインパクトを与えることができるクールな分野です。より多くの医療関係者や一般の人々に関心を持っていただければ幸いです。今回はどうもありがとうございました。
54反田 篤志 2018年02月04日 06:54
青柳先生、ありがとうございました。今回のカンファレンスを通じて、より多くの人に正しい予防医学のあり方を知っていただくことの重要性を再認識しました。まずは医療従事者がエビデンスに基づく予防医療の普及を推進していくための手助けとして、『あめいろぐ予防医学』をぜひご活用いただければと思います。

津川先生、樋口先生、青柳先生、今回は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
カンファレンスは進行中です。
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