あめいろぐカンファレンス

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読者からのコメント

アーカイブ 第3回
2014年08月21日
エボラ出血熱に私たちはどう対峙するべきか?
モデレーター:反田 篤志
メンバー38読者1
コメンテーター:
小林 美和子
青柳 有紀
エボラ出血熱が、西アフリカで収束の兆しを見せていません。2014年8月21日時点で、疑い例も含めた感染者は2400人、死者は1300人を超えています。ギニア、リベリア、シエラレオネの三国を中心に感染が広がっており、アフリカの国々および世界中の専門家たちが感染の収束に向けて力を合わせています。

現地で患者の治療にあたっていたアメリカ人医師が感染し、アメリカ本国に移送されたことをきっかけとして、先進国への感染の広がりが危惧されています。しかしながら、実際にエボラ出血熱がどのような病気で、何に気をつけるべきか、正しい理解が十分に広まっているとは言えません。今回は、感染症および公衆衛生学を専門とする医師たちと一緒に、エボラ出血熱をどう考え、それにどう対峙したらよいのかを考えたいと思います。

なお、本カンファレンスに参加するコメンテーターおよびモデレーターの意見は、CDCを含めた公的機関や、所属する機関の見解を示すものではありません。CDCの正式なコメントおよび最新のデータに関しては、こちらのページをご覧ください。http://www.cdc.gov/vhf/ebola/
29青柳 有紀 2014年09月07日 05:33
CDCによるquarantineの定義は、"to separate and restrict the movement of persons exposed to a communicable disease who don’t have symptoms of the disease for the purpose of monitoring"です。CDCによるエボラウイルス感染症に関する曝露の評価とその対応については、

http://www.cdc.gov/vhf/ebola/hcp/monitoring-and-movement-of-persons-with-exposure.html#Conditional

に詳しくまとめられているので参考にするといいと思います。反田先生の質問に答えると、最もハイリスクな曝露でも、アメリカではquarantineは必要とされていません。必要とされているのは、症状が現れるかどうかの自分でモニタリングし、現れた場合に関係機関に通知すること、そして旅行や公共交通機関の利用制限などです。症状が見られないうちは、エボラウイルスが周囲の人に感染することはないので、理に適っています。もちろん、こうした曝露者の追跡や継続的なコンタクトの維持、曝露者の疾患に関する理解と協力、症状が現れた場合に必要とされる医療施設への迅速な収容と隔離などは、そもそも社会的インフラが高度に整っていなくては不可能です。アメリカや日本に関する限り、quarantineは現時点では必要ではありません。
30反田 篤志 2014年09月08日 10:31
大変分かりやすい解説ありがとうございました。感染患者が出ても、Quarantineは日本では必要ないだろうというのはやや意外でしたが、論理的に考えると納得です。感染拡大の予防策も、その地域や国のインフラ、社会的状況やシステムによって変わるということですね。

一方で、西アフリカから入国→数日経って発症→診療所や病院を訪れる、というシナリオも考えられます。もちろん日本でも、厚生労働省を始め多くの病院で対応マニュアルが作成されていると思います。国立国際医療研究センターには、エボラの一般的な情報のみならず、病院や診療所がどのように対応するべきか、詳細な情報が提供されていますね。
http://www.dcc-ncgm.info/topc-エボラウイルス感染症/

発熱の閾値をCDCが定める38.6度ではなく、38度としているところが少し面白いと感じました。閾値を低めに設定することで、可能性のありうる症例をできるだけ拾い上げる意図があるのかもしれません。特に渡航者を診察することが多いクリニックでは、疑い事例をどう拾い上げるか、疑い事例が生じた場合にどう対応するのか、感染防御や隔離・搬送はどうするのかを含めて、プロトコールを作成し、全職員で確認しておくことが強く勧められると思います。

また、仲本先生から右にコメントいただきました。各種媒体で紹介いただき、ありがとうございます。
31反田 篤志 2014年09月08日 10:34
さて、また少しギアをシフトして、最後にアフリカの現状について話したいと思います。小林先生がちらっと触れてくれたように、現地の医療風景は私たちが想像するものとかけ離れている可能性があります。日本やアメリカでは流行しないだろうと言われているのに、なぜ西アフリカでは未だに感染が拡大し続けているのか、アフリカからの知見を教えていただけないでしょうか?
32青柳 有紀 2014年09月09日 11:46
リベリアやシエラレオネといった国々における貧困問題は私たちの想像を超えるものです。二度の大きな内戦を経験したリベリアの貧困層は全国民の80%を占め、今回のエボラウイルス感染症が流行する前の段階で、人口10万人に対し、何と医師は1人しか存在していませんでした。首都モンロビアにはウェストポイントというスラム街が存在していますが、ここには下水設備もなく、人々は浜辺で排泄しています。シエラレオネでも2002年まで10年以上も激しい内戦が続いていました。この国の医師数は人口10万人あたり2人です。また国民の識字率は50%以下です(このような状況で、一体どうやって人々がエボラウイルスやその感染制御に関する正しい知識を効率的に得ることができるでしょうか)。このような凄まじい貧困が今回の問題の根底にまずあるということを、私たちは理解すべきです。

また、社会文化的な要因も無視できません。エボラが流行している西アフリカ地域では、死者を弔う際に、彼等の身体を洗い、また葬儀では彼等の身体に直接触れたり、接吻するといった行為が習慣となっていました。そのように死者を弔うことができなければ、「魂が(現世に)帰ってくる」といったような民間信仰もあったようです。エボラウイルスは患者の体液に直接触れることでヒトからヒトへの感染を起こします。この地域で感染が拡大した主な理由の一つに、こうした現地の人々の伝統的な慣習の存在があります。

この地域で不足しているのは医療従事者だけではなく、グローブやマスクといった感染制御のための基本的な物資も十分ではありません。リベリアやシエラレオネと比較して医療資源に恵まれたルワンダでさえ、先進医療施設における断水など珍しいことではありません。感染制御が十分にできない状況で、このような病気に罹患した複数の患者に対し、限られたスペースで対応しようとすれば、医療従事者に犠牲者が増えるのも当然です。また、このような国々の医療施設では重症の患者の容体を隔離したまま適切にモニターすることも極めて困難でしょう。

残念ながら、実際にアフリカで医療に従事している私には、エボラウイルス感染症に関する報道の多くが、その致死率や感染性の高さのみに着目し、問題の本質を捉えていないように思えてなりません。

33反田 篤志 2014年09月11日 12:51
なるほど。経済、文化、社会的な要因が複雑に絡み合って感染の収束を困難にしているわけですね。アフリカの感染対策の現状に関しては、沖縄中部にいる高山先生も非常に分かりやすい記事をアピタルに投稿されていますね。
http://apital.asahi.com/article/takayama/2014081400006.html

WHO、CDC、World Bankなどが、緊急事態として多くの人員や資金を投入して、なんとか事態を収束させようと努力しています。日本やアメリカにいる者として、私たちにできることは何でしょうか?アドバイスがあればお願いします。
34反田 篤志 2014年09月12日 17:59
ここで皆さんにお知らせがあります。今回コメンテーターをしてもらっている小林美和子先生は、現在米国の機関で働かれていらっしゃいますが、先週からエボラ対策のため現地のリベリアに派遣されています。首都のモンロビアに数日滞在された後、目的地に到着されたようです。ちょうど連絡が取れましたので、現地の様子をお伝えいただこうと思います。英語でのコメントになりますが、私が翻訳を担当します。
35小林 美和子 2014年09月13日 03:43
Sorry for commenting in English. I have actually been deployed to work in one of the Ebola-affected countries in West Africa. I am right now in one of the counties with limited (compared to the capital) access to water, electricity and internet.
While my impressions on the outbreak is restricted to what I have seen and experienced, I thought it might be worth giving some of my personal observations (and by no means does it represent the opinions of my institution).

As Dr Aoyagi mentioned, lack of resources is daunting. Until now, most of the resources mobilized for the response have been pouring in to the hardest-hit counties. They have their own challenges as you may be hearing in the news. Right now, I am in a county with moderate amount of cases but with very limited resources. They have to carry the sick patients to a neighboring county as they do not have (as of now) treatment centers of their own. Existing treatment units are already overloaded with cases, so sometimes the sick people are just sent back to their communities. Sometimes, the vehicles cannot reach the communities for a few days to pick up cases (or sometimes dead bodies) because there aren’t enough staff members/vehicles etc to handle the needs.

While the county together with the international aid community is trying to establish more treatment centers, there is a large need to provide sufficient training and supplies for appropriate infection control practices for the staff who will be working there. There were already few health care providers to begin with, and a lot of them have unfortunately been affected by the Ebola outbreak.
36小林 美和子 2014年09月13日 03:48
People are scared —to the point that sometimes villages that had cases are ostracized, meaning that no one wants to interact with that village. I went to one of those villages, and they were complaining of lack of access to necessities like food because others would not want to interact with people from that village.
This is just part of what I am viewing.

So what can we do?
First and foremost, I think it is important to show interest in what is going on here, and try to learn what actually is going on there, rather than relying on rumors. I am sure the readers of this site are all aware of this outbreak, but I was shocked when I learned that a person I was talking to (while I was in the US) did not know about the Ebola outbreak at all. Try to learn more about the context—not only viewing it as “a tragedy that happened in a place far away”, but the historical, cultural, and social background of these countries -- as Dr Aoyagi has mentioned earlier. I must admit that I am also in the process of doing this. At this day and age with increased mobility of people and resources across the globe, a problem at the other side of the globe can easily become our own.

This is only a little bit of my personal observations and thoughts. I truly hope the outbreak will cease soon.
37反田 篤志 2014年09月14日 11:53
現地からの報告ありがとうございます。以下日本語訳です。

「英語でのコメントで失礼いたします。私はエボラが流行している西アフリカのある地域に派遣され、現地で働いています。現在、首都と比較しても水、電気、インターネットへのアクセスが制限された地域にいます。私個人が経験した範囲に限られてしまいますが、知見を共有することに価値があると思いましたので、ここにエボラ流行に関する見解を記します(もちろん、これらの見解は私が所属する組織を代表するものではありません)。

青柳先生がすでに書かれているように、エボラ流行地域では資源が圧倒的に足りません。今までのところ、ほとんどの救援物資は(私が滞在している場所とは別の)被害がもっとも甚大な地域に送られています。それらの地域も、すでにニュースなどお聞きの通り、それぞれ大変な困難を抱えています。現時点で、私が滞在している地域にはある程度の数のエボラ熱の患者さんがおり、資源は極めて限られています。今のところ自前の治療施設がないために、発症した患者さんを隣接した地域に運ばなくてはいけません。現存する治療施設はすでに患者で溢れかえっており、時に患者を自宅に送り返さざるをえないこともあります。車や人手が全く足りないため、患者が出たとしても、その患者を搬送するまでに数日を要することがあり、搬送車が着いたころには患者がすでに亡くなっていることもあります。

国際支援団体の協力を受け、私のいる地域を含め、より多くの治療施設を作ろうとしています。しかしそのためには、そこで働く人々が感染を防御するための適切な訓練を受け、感染を防ぐための十分な備品がなくてはいけません。それらの訓練を施す人手も、備品も大きく不足しています。ここはもともと医療従事者が少ない地域でしたが、残念ながら多くの医療従事者がエボラにかかってしまったため、人手不足に拍車がかかっています。

人々は恐怖におびえています。エボラの患者が出た村が排斥される、すなわち、人々がエボラの患者が出た村と関わろうとしない、という事態も起きています。私はそういった村を訪れましたが、村の人々は食糧といった生活必需品が手に入らず困っています。というのも、誰もその村に住む人と関わりたがらないからです。これらは私が見聞きしたものの一部にすぎません。

では、私たちに何ができるでしょうか?

まず最も重要なことは、噂に左右されるのではなく、実際にここで今現在起きていることに興味を持ち、それを知ろうとすることです。もちろんこのウェブサイトを見ている方は、エボラの流行に関してご存じだと思いますが、(アメリカにいる)とある知人がエボラ流行に関して全く知らなかったことにショックを受けました。

青柳先生も述べられているように、エボラの流行を”どこか遠い国で起きている悲劇”として傍観するのではなく、これらの国の歴史、文化、そして社会的背景を理解しようと努めてください。正直なところ、私も現在進行形でそれらを学んでいるところです。物も人も世界中を簡単に行き来できる時代になっています。世界の向こう側で起こっている出来事は、すぐに私たちの問題になりえます。

以上、私が見聞きし、考えたことのほんの少しを書かせていただきました。この流行がすぐに収束することを心から望んでいます。」
38反田 篤志 2014年09月14日 12:32
現地の人々を支援し、エボラ熱の感染を防ぐために、寄付をするというのも非常に重要な支援策です。現地で実際に活躍しているNGOを紹介します。このウェブサイトを訪れた機会に、ぜひ寄付という形での支援を検討いただければ幸いです。

国境なき医師団 Medecins Sans Frontieres
USA http://www.doctorswithoutborders.org/our-work/medical-issues/ebola
日本 http://www.msf.or.jp/news/ebola.html

International Medical Corps
USA https://internationalmedicalcorps.org/
Donation Page https://internationalmedicalcorps.org/ebola

Save the Children
日本 http://www.savechildren.or.jp/scjcms/press.php?d=1619

こちらは、感染・貧困問題で世界的に有名なDr. Paul Farmerが言及していた、現地に根差す二つの団体です。
http://www.pih.org/blog/dr.-paul-farmer-discusses-ebola-outbreak
-with-pris-the-world

Last Mile Health in Liberia
http://lastmilehealth.org/

Wellbody Alliance in Sierra Leone
http://wellbodyalliance.org/
このカンファレンスは終了しました。