あめいろぐカンファレンス

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読者からのコメント

アーカイブ 第2回
2014年06月17日
ビタミンサプリはがん予防に効果あり?
モデレーター:反田 篤志
メンバー31読者1
コメンテーター:
中釜 知則
野木 真将
吉良 信彦
宮下 麻子
浅井 章博
ある日の外来に、50代の男性がやってきました。その患者さんは、テレビCMで”マルチビタミンはがん予防に効果あり”と謳われているのを見て、自分もマルチビタミンを摂るべきかどうか、疑問に思っています。その患者さんは高血圧の既往があり、やや肥満気味ですが、その他は特に健康上の問題はありません。

この患者さんに対して、どのような説明をするべきでしょうか?マルチビタミンにがんを予防する効果は、本当にあるのでしょうか?もしあるとしたら、どのような人にマルチビタミンをサプリとして摂るかどうか勧めますか?
カテゴリー: 公衆衛生・予防医学内科
22吉良 信彦 2014年07月18日 02:43
昨日は、コメントを書きながら寝入ってしまい、尻切れトンボの文章になってしまいました。続きを書きます。

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)から言えることは、アメリカはばらつき、流入が大きいダイナミックな社会なので、単純に平均値を持ち出して議論することは無意味だということです。

ビタミンの研究に話を戻しますと、この研究はデザイン的に妥当なのかと首をかしげてしまいます。

つまり、ビタミンの効果は、(食事由来)+(マルチビタミン由来)+(体内合成分)で規定される点が、抗癌剤などの処方薬と大きく異なります。しかも、食事由来の影響の方がマルチビタミン由来のそれよりはるかに大きな影響を持っていると思います。にもかかわらず、3つあるパラメーターのうち2つは完全に無視して、処方薬の承認の際に使われる臨床試験のような手法で結論を導いています。

たまたま、被験者に栄養不良の人が多ければ、マルチビタミンは有効という方向に結論は振れるでしょうし、逆に栄養過多の人が多ければその逆になるでしょう。食事由来の部分は、社会経済的な要因に大きく依存しているので、それを無視して結論付けることに違和感を感じます。

やくざの難癖でしょうかね・・・。
23反田 篤志 2014年07月18日 07:35
非常に興味深い議論をありがとうございます!

吉良さん、私も全くもって同意見です。実際に、貧困国の栄養失調の乳幼児にビタミンAをあげると死亡率が下がることが分かっています。PHSIIで実際に栄養失調だった人は極めて少ないでしょう。生活に困窮している人にとっては、野菜やフルーツを買うよりビタミンを買う方がはるかに安上がりです。臨床研究はその性質上、どうしても一定の狭い範囲に焦点を絞ってしまいますが、おっしゃる通り、マルチビタミンに関してはそういったやり方が有効なのかどうか疑問に思います。ですから、さまざまな理由で食事から十分なビタミンを摂ることが難しい人、特に生活に困窮している人には、本人の好みに応じてマルチビタミンを摂ってもらうのは理に適っているように思います。もちろん「マルチビタミンを摂っているから不摂生でよい」と考えてもらっては困るわけですが。逆に、健康的な生活をしている人がマルチビタミンに加えて様々なビタミンやサプリ(ビタミンD、Co-Q10など)を摂っているような場合、「少し減らした方がいいのでは?」と提案することがあります。

宮下さんのコメントの中で、「鉄剤を飲むお子さんが多い」とありますが、私も驚きました。これは、貧血になる子どもが多いということでしょうか?貧血のなりやすさに人種差があるのでしょうか、それとも食生活で鉄分が足りなくなりがちなのでしょうか?はたまた、日米で小児科医のアプローチが違うのでしょうか?浅井さん、教えていただけるとありがたいです。
24浅井 章博 2014年07月28日 21:33
鉄剤についてのコメントですが、なかなか難しいトピックです。Pubmedをサーチしてみましたが日本人とアメリカ人を比較したスタディはなさそうでした。
ただ、NYでの小児科研修の時の経験から言えることは、米国では1歳時の健診に貧血のスクリーニングがはいっていることから、貧血が人口ベースでも比較的多いのだと想像します。全例対象でスクリーニングするということは、それだけ介入するべきケースが有るということだと思っています。
宮下さんのコメントが、どの年齢層の子供を指しているのかにもよりますが、一般的にいって健診外来で鉄剤を飲むように勧める事は毎週のようにあってもおかしくありません。特に、乳児から2-3歳になる時に、牛乳を大量に摂取している子供は、鉄欠乏性貧血になりやすいです。水の代わりに牛乳を飲むような、大量摂取です。牛乳に含まれる鉄分は、その年令の子供にとっては吸収しにくいので、その他の食事のバランスが悪い場合は貧血になりやすいと思います。おそらく、この"その他の食事のバランスが悪い"という点が、日米の最もな差になっていると思います。日本食には、米国の貧困層における一般的な食事に比べ、鉄分、ミネラルの含まれる食材が多いように思います。
以上、多分に想像が入ってしまいましたが、NYの都市部で主に貧困層を診ていた研修医時代の経験からのコメントでした。
25宮下 麻子 2014年07月29日 16:51
浅井先生のおっしゃる通り、鉄剤についてのコメントはとても難しいですね。前回の私のコメントの中での子供の年齢層は2~5歳位です。浅井先生と少し内容がかぶってしまいますが、学生だった頃、ニューヨークのサウスブロンクスや東ハーレム(低所得者が多く住む地域)で3~7歳くらいまでの子供達に栄養教育の実習をした事があるのですが、貧血と診断されている子供がとても多かったのを覚えています。カラフルなお野菜や果物を販売するスーパーもその当時は少なく、彼らの貧血の原因は栄養不足/偏りからとも言えるでしょう。
26吉良 信彦 2014年08月02日 12:48
小児に話が移ったので、それについて軽くコメントさせていただきます。

以前、私は、ビタミンの効果は、(食事由来)+(マルチビタミン由来)+(体内合成分)で規定され、食事由来が最も大きな影響力を持っているにもかかわらず、USPSTFやPHS IIでは、被験者の栄養状態、社会経済的な要因が無視されているため、研究デザインとし妥当なのかと疑問を投げかけました。

小児、特に、乳児の場合、食事=母乳かフォーミュラ (母乳 代替食品)であり、母乳間の成分、フォーミュラ間の成分にはそれほどばらつきがないため、たとえば、「母乳栄養だけだとビタミンKが不足しがちになる」などという研究結果には説得力を感じます。また、乳児の場合、日常の活動量にもそれほどばらつきがないと推察され、だとすると、1日当たりの推奨量(Recommended Daily Intake)も成人に比べて、規定しやすいのかもしれません。
27浅井 章博 2014年08月05日 07:50
吉良先生の仰る通り、小児では栄養ー発達の分野の研究はとても重要視されます。普段、病気については、成人に比べて研究調査の困難な小児科の分野ですが、この分野に関しては信頼できるデータが多い印象があります。

さらに言えば、米国にはフォーミュラ(粉ミルク)を作る会社がしのぎを削っており(もちろん間接的にではありますが)、この分野に対して多大な出資をしているのも、研究が進んでいる原因の一つです。食品ー栄養サプリ業界は、製薬業界に匹敵する資金源なのではと思っています。

そういえば、今回のディスカッションで、栄養サプリ業界についてのコメントは出てきませんでしたね。米国では、小児科医に対する業界からのセールスは厳しく制限されており、病院内で製薬会社のMRさんのような人に合うことはまずありません。同様に、食料品ー栄養サプリ業界からもセールスはほとんどありません。成人の病院、クリニックにおいてはどうなんでしょうか?ビタミンサプリを売り込もうという業界の動きはどうなのでしょうか?
28吉良 信彦 2014年08月09日 11:50
成人の病院、クリニックでも、同様だと思います。

アメリカでは、テレビコマーシャルでよく、”Ask your doctor if xxx is for you!”(「XXXという薬を出してもらえないか主治医に聞いてください」)というたぐいの文句を聞きますよね。研究開発に多大な投資をしている処方薬の場合、こうしたアプローチは企業側にとっては有効なのでしょう。

また、特許が切れていない新薬で、かつ、患者さんが効果をすぐに体感できる薬の場合、無料サンプルを患者さんに提供するという戦略もしばしばみられます。たとえば、ED治療薬のCialisがこの範疇に入ってきます。Viagraの特許がきれ、そのジェネリックが廉価で購入できるようになった今、Cialisの製薬会社もそちらへの流れを食い止めるため必死になっているのが分かります。

ビタミン剤はこうしたものとは違い、あくまでもサプリメントであるので、その流通経路は大きく開かれていて、薄利多売の典型と言えると思います。よって、宣伝のターゲットも、一般大衆に直接的に働きかけているように思えます。また、効果が実感しにくいため、おいしい味をつけたり、飲みやすい剤形にしたりして、消費者に長く服用してもらうことに重点を置いている商品も見られます(たとえば、Gummy Vitamins)。お菓子をほおばるような感覚で、Gummy Vitaminsを摂っている子供、大人も多いと思います。
29野木 真将 2014年08月10日 13:31
浅井先生、吉良先生、
うちの娘がディズニーのプリンセスがラベルに書かれたマルチビタミンのGummy vitaminを欲しがるのを見て、うまいこと販売促進しているのを実感しております。

今回のカンファレンスでは多面的にサプリメントの話題を検討できて大変勉強になりました。

ちょっとマルチビタミンから話しが逸れるかもしれませんが、最近感じたことをひとつ。

先日グランドラウンドで、肝臓センターからハワイにおけるOxyElite Pro(痩せるのを促進するサプリメント)の肝障害事例とその経過、ハワイで肝移植の大変さを報告する話しがあり、大変衝撃を受けました。終了後の質疑応答で「FDA(アメリカ食品医薬品局)は今後サプリメントに対する品質評価検査・管理・規制を強める動きはあるのか?」という話題が盛り上がりました。
会場の総評では、「サプリメント業界はあまりにも大きくなっており、FDAはそのために新たな部門・人材を用意するのは不可能ではないのか?」という結論に至ってました。レッドクローバー、ドイツのコミッションEなどはそこで初めて知りました。
外来ローテーションではCAM (complementary alternative medicine)カンファレンスがあったのですが、レジデントが個々の興味あるトピックを選んで発表するという形式のものだったので体系的な講義は受けたことがありませんでした。

宮下さんのコメントにもあるように、サプリメント個々の商品名で検討して、どの会社のものかのか?内容が成分表示の通りなのか?他国での使用実績は?という情報を日々ケースバイケースで調べなければいけないな、と思うようになりました。



30吉良 信彦 2014年08月16日 23:16
野木先生がおっしゃっていた、Disney Princess Multi Vitamin GummiesをAmazonで見てみると、消費者受けするような工夫が随所に見られますね。
ボトルには、Great Taste! Fun to Eat!
Provides essential Vitamins and Minerals for your child’s healthy growth and development.
Almost 80% of children do not eat the recommended number of nutrient-rich fruits and vegetables.
These Gummies provide 11 Vitamins and Minerals including Vitamin A for eye health, B Vitamins for energy metabolism and Vitamins C & D for immune function.
Two gummies contain 400 IU of Vitamin D, which is the dosage recommended by pediatricians for children. Vitamin D promotes healthy bones and teeth and supports immune system health.
と書かれています。

この宣伝広告の中で、最初の1行(Great Taste! Fun to Eat!)は、実際にビタミンを摂ることになる子供に対するメッセージ、それ以外の部分はビタミンの購入をする親に対するメッセージであることがはっきり分かります。

具体的に申しますと、まずは、子供にアピールするため、ディズニーのキャラクターを使用し、剤形もディズニーのキャラクターを模していると思われます。また、砂糖も若干ながら使われていて、それなりにおいしいのでしょう。

そして、親にアピールする部分では、「約80%の子供は推奨量のフルーツ、野菜を摂っていない」「ビタミンXはYのような効果がある」「このGummyには、ビタミンがこれだけ含まれている」と言った、簡単には反論しにくいようなステートメントが並んでいるように思われます。

「このGummyは、~を予防する効果がある」などとストレートに宣伝するのは、法律上の問題があるのでしょう。しかしそれ以上に、既成事実を並べることで、宣伝文句に説得力があるように感じてしまいます。「約80%の子供は推奨量のフルーツ、野菜を摂っていない」と言われれば、好き嫌いが多いうちの子供もその80%に入っているのだろうと思う親も多いことと思います。

これを機に、Gummyを一本注文してみようかと思いました(笑)。今回は初めての参加でしたが、いろいろな意見が聞けて面白かったです。
31反田 篤志 2014年08月17日 11:36
皆さん、示唆に富むコメントありがとうございました。

今回はマルチビタミンに関する最新の研究から始まり、マルチビタミンに関して患者さんにどのように説明するか、幅広い視点から議論していただきました。そこからさらに、一般的な栄養指導と絡めた話、ビタミンDの話、小児におけるマルチビタミンや鉄剤の話と、ビタミンやサプリを取り巻く米国の現状について面白い議論ができたと思います。特に、最後のサプリ業界の取り組みと医療界の対応についての部分、非常に興味深く読ませていただきました。

日本でも米国でも、ビタミンを含めたサプリ市場は今後も発展し続けると思います。医療者および消費者ともに、その効果・効用、および副作用やデメリットに関して、理解を深めていく必要があるように感じました。今回のカンファレンスでの議論が、一人でも多くの方のお役に立てれば幸いです。

第二回カンファレンスはここで終了とさせていただきますが、今後も質問やご意見などあれば、お問い合わせもしくはQ&Aからご連絡ください。皆さま今後ともよろしくお願いいたします。
このカンファレンスは終了しました。