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生命が生まれてくるのは世界共通。でも、そこに関わる医療や文化には大きな違いが・・。アメリカでの妊娠・出産事情や母乳育児の現状を日本との比較を通して紹介していこうと思います。

今井 あゆみ

京都出身。日本で助産師として10年間働いた後、渡米。カリフォルニア大学サンフランシスコ校にて、助産師および婦人専門のナースプラクティショナーとして修士号を取得。現在、サンフランシスコベイエリアで助産師として勤務。また、国際認定ラクテーションコンサルタントとして母乳育児の推進にも積極的に活動中。

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2013/09/14

アメリカ出産事情ー帝王切開考 その2-

帝王切開を含め、現代の外科処置や手術は100年前の医療技術なら亡くなっていた何千何万という命を救ってきました。まさにライフセーバーとしての帝王切開術は人類が築き上げてきた科学の進歩の象徴ともいえます。しかし、身体にメスを入れるその手術には、さまざまなリスクがあります。

まず赤ちゃんへの影響ですが、帝王切開で生まれた赤ちゃんは自然に経膣分娩で産まれた赤ちゃんに比べ、圧倒的に罹患率や死亡率が高いのが現実です。(これは、緊急に行われるリスクの高い帝王切開を除いて比較されたデーターによる結果です)。その主な原因は、赤ちゃんの呼吸器疾患、特に肺高血圧症(自然分娩の4倍)や生まれてすぐに起こる一過性の呼吸障害などです。自然に生まれて来る赤ちゃんは、お母さんの狭い産道を通る間に胸を圧迫され、肺の中の羊水が搾り出されるような形で排出され第一呼吸に備えることができますが、帝王切開で取り出された赤ちゃんの肺は羊水が排出されにくいようです。長い陣痛と子宮の収縮というストレスに耐えて産まれてくる赤ちゃん達の身体にはストレスホルモンが作られますが、このホルモンがお母さんの身体から生まれ出た時に受ける寒冷刺激などと相まって、最初の呼吸を促す重要な役割をになっています。自然の仕組みとは、本当にうまく、そして無駄なくできていると思いませんか?それから、子宮を切開する時に赤ちゃんの身体の一部を切ってしまう・・・ということもあり得ます。その率は、たとえば逆子の場合などは6%・・・・、以外に高くありませんかね、これ・・・。

お母さんの方はと言うと、2003年に比較されたデーターを見てみますと、母体の死亡率は10万件あたり帝王切開による死亡率は36件、その一方で経膣分娩の場合は9件でした。帝王切開によって起こる合併症は、術中および術後の多量出血、術後の感染症、肺塞栓(血管内にできた血の塊が肺などの大きな血管に詰まって起こる)、それに手術そのものによって膀胱などの周辺臓器が傷つけられる・・・といったものです。さらに、上記に書いたように帝王切開で生まれた赤ちゃんのリスクが高いために、アメリカの多くの病院では術後赤ちゃんは新生児室で管理され、お母さんはリカバリールームで状態が安定するまで過ごすことが多いのですが、この為産まれてすぐに赤ちゃんと過ごせないことによるストレスや、哺乳開始が遅れるなどの影響もあると言われています。最近、帝王切開でも状態が安定していたら、手術直後から母子を一緒にしよう・・・という病院が増えてきました。良いことだと思います。

さらに、将来の妊娠に及ぼす影響も無視できません。帝王切開後、自然分娩後に比べるとわずかですが流産する率が高くなります。また胎盤の定着異常を起こすこともあります。子宮破裂の危険性は、帝王切開の回数に比例して高くなっていきます。「下から産むと、年を取った時に緩んじゃう(尿失禁などが増えるの意)のよね」という世間のうわさは本当でしょうか?50歳以上の尿失禁に悩む患者さんに行われた調査によると、経膣で産んだ人も帝王切開で産んだ人も、尿失禁をわずらう率には差がなかったそうです。むしろ、何人産んでいるかや、家族性の遺伝による傾向などが尿失禁と大きく関わっていることがわかりました。

で、怖いことばっかり書きましたが、私は帝王切開反対派ではありません。念のため・・。むしろ、帝王切開という手段をライフセーバーとして、大切に思っています。産科医の助手として一緒に手術に臨みますが、ほとんどの帝王切開は優れた医療技術と病院のスタッフのチームワークで何事もなく終わります。どんな生まれ方にせよ、子供たちが、そしてその家族が無事人生の一歩を笑顔で踏み出せるならそれで良いと思います。ただ、安易で楽チンだからという理由で帝王切開を選ぶのは、(それもアメリカ的にいえば個人の選択なのかもしれませんが)、もう一度こうした手術によるリスクも良く考えたうえで選択して欲しいと思います。

帝王切開で元気に産まれてくる子供たち。お母さんたちは、大変な状況を経てがんばって帝王切開で出産されました。沢山のリスクをくぐり抜け元気に生まれて来てくれた子供達、それに文字通り命がけで手術に挑んだお母さん達に心から拍手を送りたいと思います。

注)この投稿は、私と友人がオーガナイズしているサンフランシスコベイエリアの日本人妊婦および小さなお子さんをお持ちの家族をサポートする地域グループ「わいわいママ」のブログに寄稿したものを編集したものです。

1件のコメント

  1. 長井菜摘 より:

    こんにちは!ブロフを拝見しコメントさせていただきました。
    国立大学に通う3年生で看護学を専攻しております、長井菜摘と申します。わたしは、2年後大学を卒業し日本の看護師免許を取得後、渡米し最終的にCNMまたはNPになることを目指しております。

    渡米した後は、既に日本で免許を取得している予定なのでそれを利用しNCLEXのみ受験するという選択肢もありますが、言葉の壁があり現地の病院で働ける自信がないため、わたしの場合は、1米国大学に再入学、2大学院にて修士号を取得の2択を考えています。1のメリットは4年かけて現地で医療英語を学ぶことができ、かつ現地で学士を取得しているため就職に有利、就職後も言葉による障害を減らすことができる。デメリットは、日本で既に4年大学で学んでいるため、時間の無駄。莫大な費用がかかる(4年で2000万円弱)。2の場合のメリットは、時間の短縮、1に比べ費用を抑えることができる。デメリットは、2年で問題なく病院で働けるような英語力をつけられる不安。

    1も2もどちらもメリットデメリットがあり、現時点では自分で優劣をつけることができないでいる状況です。わたしが目指しているのは、米国でCNMまたはNPの取得です。選択肢1を選んだ場合は、働きながら院に通い資格を取りたいと思っております。費用面、語学面、就職、時間の側面からどちらの選択肢が良いか、アメリカの臨床で働いた経験からお答えいただけなおでしょうか?また、別の選択肢もあるようでしたら教えていただければと思います。

    もし可能でありましたら、メールアドレスにお返事を頂けますと幸いです。

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