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ブログについて

最適な医療とは何でしょうか?命が最も長らえる医療?コストがかからない医療?誰でも心おきなくかかれる医療?答えはよく分かりません。私の日米での体験や知識から、皆さんがそれを考えるためのちょっとした材料を提供できればと思います。ちなみにブログ内の意見は私個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

反田 篤志

2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修後、ニューヨークで内科研修、メイヨークリニックで予防医学フェローを修める。米国内科専門医、米国予防医学専門医、公衆衛生学修士。医療の質向上を専門とする。在米日本人の健康増進に寄与することを目的に、米国医療情報プラットフォーム『あめいろぐ』を共同設立。

反田 篤志のブログ
2014/11/19

健康診断は必要?米国ではやりません – 内側から見た米国医療17

(この記事は2014年7月号(vol106)「ロハス・メディカル」 およびロバスト・ヘルスhttp://robust-health.jp/ に掲載されたものです。)

日本では、行政が実施する住民健診や企業健診、学校健診など、数多くの健診が実施されています。しかし米国では、日本でいうところの健康診断は存在しません。

大腸がんや乳がんなどを対象にしたガン検診や、リスクのある人が医者にかかり適切な検査や治療を受ける健康診断には、ある程度の健康改善効果が認められています。しかし、前述のような集団を対象にした一般健康診断は、人々の健康に寄与しないことが、海外の研究からはほぼ明らかになっています。直感的には、定期的に健診を受けることで高血圧や高脂血症などが発見され、それを治療することで健康が改善されそうですが、なぜそうならないのでしょうか?

第一の問題は、適切な人が健診を受けるかどうかです。住民健診では特にこの問題が顕著です。健康に関心のない人は、肥満であるなど不健康である可能性が高く、そのような人は健診を受けない傾向にあります。したがって、最も健診を受けるべき人が受けないという問題があります。健康意識が高い人は元々健康なので、健診を受けることによる改善効果も少ないわけです。

次に、異常が発見された人が、どれだけ医師の診察など適切なフォローアップを受けるかどうかです。残念ながら、一般健診で発見される異常の多くは無症状で、かつそれらの異常から”死ぬ可能性”を想起しづらく、医師を受診するなどの行動にはつながりにくいです。一方、ガン検診の場合の異常所見は、無症状であっても”ガンによって死ぬ可能性”に直結するので、その後の精密検査を受ける可能性が高まります。

さらなる問題は、適切な介入や治療が実行されるかどうかです。高血圧や高脂血症は生活習慣によりある程度改善可能ですが、食生活や運動などの生活習慣を変えるのは非常に難しいです。一時的に成功しても、長期間それを維持するのは困難で、それでは根本的な健康の改善につながりません。適用がある場合の薬物治療は効果的ですが、薬をきちんと飲み続け、常に正常な数値を維持できる人は実に半分以下です。

健診を実施することで人々の健康状態が改善されるためには、少なくともこれらの障壁をすべて乗り越える必要があります。そして、健診が健康を悪化させてしまう可能性にも留意しなければいけません。例えば、本当は異常でないのに異常と判定してしまう疑陽性は、過剰診断と過剰な医学的介入、及びそれに伴う副作用や有害事象の発生につながり得ます。本当は異常なのに異常がないと判定してしまう偽陰性は、余計な安心感を与え、精密検査を受ける機会の逸失につながり得ます。

健診が健康改善に寄与していないとしたら、それを実施する意味はあるのでしょうか?健診に使われるお金は、健診の効果を判別する研究に使ったり、健康改善効果が明らかな別の目的に使ったりすることもできます。もし”健康に良さそうだから”という理由で健診を続けているのだとしたら、再考の余地がありそうです。

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