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反田篤志

ブログについて

最適な医療とは何でしょうか?命が最も長らえる医療?コストがかからない医療?誰でも心おきなくかかれる医療?答えはよく分かりません。私の日米での体験や知識から、皆さんがそれを考えるためのちょっとした材料を提供できればと思います。ちなみにブログ内の意見は私個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

反田篤志

2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修後、ニューヨークで内科研修、メイヨークリニックで予防医学フェローを修める。米国内科専門医、米国予防医学専門医、公衆衛生学修士。医療の質向上を専門とする。在米日本人の健康増進に寄与することを目的に、米国医療情報プラットフォーム『あめいろぐ』を共同設立。

(この記事は2013年3月号(vol90)「ロハス・メディカル」 およびロバスト・ヘルスhttp://robust-health.jp/ に掲載されたものです。)

日本の研修医の働き方をご存じでしょうか? 病院によってまちまちながら、当直が月に10回を超えるような場所もあります。当直は、寝ていてたまに呼ばれる業務というイメージがあるかもしれませんが、忙しい病院ではほとんど眠れないことも多々あります。しかも当直の翌日に休めるのは恵まれている方で、多くの場合翌日も通常業務です。従って、36時間連続勤務はよくあることです。研修医に限らず、上級医になっても似たようなものです。

研修医にとって研修が忙しいことは、必ずしも悪いことばかりではありません。多くの症例を経験し、継続的に患者さんをケアし、責任を持って診療にあたることで学べることは多くあります。実際、私にとっても沖縄での研修は、医師としての礎を築いてくれました。

その一方で、診療の安全性と、医師自身の健康及び労働環境の点からすると問題が多いように思います。24時間起き続けた場合、軽度の酩酊状態と同程度の思考能力しかなくなることが研究により分かっています。しっかり寝て元気な医師と、寝ていなくてフラフラの医師のどちらに自分の手術をしてもらいたいか、答えは明らかです。また、睡眠不足や過労はうつ病の発症や燃え尽きの原因になります。医師はそうでなくともストレスの多い仕事で、他職種より燃え尽き症候群が多いと報告されています。

医師のミスが許容されず、すぐ訴訟につながってしまう米国では、研修医を過労から守るシステムが発達しています。週の労働時間は80時間に制限され、夜間は夜勤シフトの研修医が病棟を担当します。日本でも救急はシフト制を敷いていることが比較的多いですが、病棟でシフト制を採っている病院はなかなかないと思います。

米国の病院では研修医のみならず、指導医もシフト制を採ることが多くなってきています。看護師や薬剤師など、その他の職種がシフト制で働くことを考えたら、ある意味当然のことのように思えます。しかしシフト制にすれば人件費は多くかかるので、それに見合う収入が病院に必要になります。

夜間病棟を元気な研修医が担当するシステムは、病院管理の観点からは良いことが多そうです。例えば、救急から病棟への夜間の入院を制限する必要がないため、ベッドを24時間フル稼働で効率よく使えます。また夜間の緊急対応も上級研修医であれば大抵は対処可能なので、指導医に病院内に待機してもらうよりは、給料の安い研修医に担当してもらった方が病院としてはお金を節約できそうです。

現場レベルでは、夜間の患者対応が丁寧になる利点があります。やっと眠りについた午前4時にPHSが鳴り、「患者さんが眠れないと言ってます」と呼び出しを受けると、どんなに温厚な研修医でもイラッとくると思いますが、日中十分睡眠を取っていれば、「分かりました、すぐ行きます!」と元気に返事できる……はずです。

1件のコメント

  1. アメリカでのご活躍素晴らしいですね♪

    日本人としてこれからも応援しております

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