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放射線科の臨床留学や耳慣れない&見慣れない放射線科医の日常をお知らせできればと思います。

鈴木 ありさ

Bostonのブリガム病院にて放射線科医をしています。インターンもレジデントもすっとばしてフェローから始め、指導医3年目にアメリカの放射線専門医を取得しました。上がやめないので新人が入らず、万年下っ端です。

鈴木 ありさのブログ
2014/01/29

保険会社とのたたかい

アメリカの保険システムの複雑さはこのあめいろぐでも散々話題になっているので、ご存じの方も多いと思われます。先日、医療保険会社と2つの戰いを終えました。一勝一敗、五分五分でした。

一戦目。

静脈瘤クリニックからの紹介の、静脈奇形の患者さんです。順調に外来、麻酔科術前検査を済ませて、いざ、来週は手術となった段階で保険会社から「Aさんの保険では一切の静脈硬化治療は認められていません。」ぺらりとした手紙一枚でおしまいです。よくあるミスなので、こちらもコーディングの本を片手にセクション内の保険専門家(コーダー)と横に並んで、保険会社に電話です。800番から始まるトールフリーの電話を入り口に、あっちのセクション、こっちのセクション、また元のセクションへと回し回され、10分、20分単位で保留され。2時間後、結果は「却下」

静脈「瘤」への硬化療法は認められない、の一点張りです。

だーかーらー、これは静脈「瘤」ではなく、静脈「奇形」への硬化療法ですっ、と10回も20回も言ったのに、ファックスで診断書も提出したのに、患者さんの最初の症状が静脈瘤だとコーディング(保険請求に必要な病名登録)されているために、結局この手術はキャンセルになりました。静脈奇形が静脈瘤を形成していたためです。結果、患者さんはこの保険会社をキャンセルし、他の会社に切り替えました。時期が来れば、もう一度、事前請求を新しい会社を経由して行う予定です。

 

二戦目は、一戦目の直後に行われました。

2時間以上の不毛な戦いの後、今度は私の保険会社に電話です。夏前に私自身が受診した外来、しかも、身内のブリガムの請求会社から4000ドルを超える請求書です。最初の請求書が届いた9月から数えて2回目の電話です。1回目は保険の登録者番号が違っていたとかで、5分で終了。「もうこれで大丈夫です。請求書は無視してください」と電話先の感じのよいお兄さんに言われ、すっかり安心した12月、今度はぞっとする金利のついた新しい請求書です。私は怒り心頭です。が、怒りのままに電話をしてしまうと、勝てる戦も勝てませんので、電話口の感じのよいお姉さんに、カクカクシカジカと5回目か10回目かの説明をすると、今度は病院にかけてみろ、といわれました。さすがに疲れてきたので、私はその病院からかけている。私は同じ病院に勤務する医者なので、もっとストレートに話をしてくれ、と言いました。すると、「あなたの保険では症状のない時の受診は認められていないのです」と一言。もはや、あっけにとられたというのはこのことです。症状があるから受信したのに。この会話を聞いていたのが、ついさっき、一戦目をともに戦ってくれた保険請求のスペシャリストのデビーさん。素早くコーディングの本を広げ、該当するページと症状名を指差します。私は「受診理由はXXX.XX, YYY.YYだから、無症状ではない」と、コーディングの番号を直接いくつかならべて交渉です。すると、ようやく、保険会社も、「ああ、その症状での請求は通りますね。よく見ると、2番目、3番目のコーディングはおっしゃった番号でされています。1番目に無症状のコーディングがあるために、自動的にリジェクトされたようです。私の方から、クリニックに電話をかけて、コーディングの順番を変える請求をします。それで大丈夫です」

これで、4000ドルの借金から開放されました。4000ドルの請求に困っている、と言ったら一緒に電話をしましょう、といってくれたデビーさんに感謝です。彼女がいなければ、また、たらい回しの上、請求はそのままであったかもしれません。デビーさんがさっとコーディングを出してくれたために、先方もこちらがその道のプロであると気づき、話を進めてくれたからよかったものの、これを独りでしていたことを思うと、ぞっとします。コーディングは医療、症状、診断といったものを数字に置き換えて保険会社に回し、お金に変える作業です。私は医療の部分には詳しいけれど、保険はわかりません。保険会社の窓口はコーディングの数字からお金を測る人たちです。コードと支払いには詳しくても、医療は知りません。その真中を取り持ってくれるのが、デビーさんのような、カルテや記録からコーディングを起こすコーダーと呼ばれる人たちです。もちろん、コーダーを雇わずに医師や秘書がコーディングをするクリニックも多くありますが、コーダーを雇ったほうが人件費を差し置いても明らかに利益があがる、とのスタディも出ています。

 

医療を行う側であるはずの私ですら、自分の誤った請求書を取り下げさせるのに数ヶ月ようしたのですから、一般の方の苦労は如何ほどかを考えると、それだけで背中が寒くなるような、そんなアメリカの保険事情でした。

3件のコメント

  1. 宮島説子 より:

    アメリカの医療保険、本当に頭が痛いことが多いですね。
    実は、私はオンラインで勉強してCoderのCertificateを取ろうかと考えています。、医療関係の仕事をしたことがなくても、AHIMAのオンラインプログラムは大丈夫だ(実際に仕事が出来るレベルになる)とおもっていましたが、先生の記事を読んで、少し不安になりました。先生の経験、またはデビーさんの経験から、よいcoderになるためのアドバイスがいただけたら嬉しいです。(私は、ロサンゼルス在住です)
    よろしくお願いします。

    • 鈴木 ありさ より:

      宮島さん、

      コメントありがとうございます。
      コーディングの勉強をされているのですね。

      詳細なことはよくわからないのですが、いろいろなバックグラウンドの医師や看護師のチャートを読まねばなりませんから、やはり、英語に堪能であると良いのではないでしょうか? お恥ずかしながら、私のようにひどい英語でチャートを書く医師もおりますので。

      これからも頑張ってください。

      • 宮島説子 より:

        お返事ありがとうございます。

        アメリカ人のライティングは、ただでさえ読むのが難しいので、医療関係のバックグラウンドを持ってGuessできないといけないということですね。 頑張ってみます・・・・・・・。

        先生のブログ、これからも楽しみにしています。

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