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浅井章博

ブログについて

Born in Japanだが医者としてはMade in USA。日本とは異なるコンセプトで組み立てられた研修システムで医師となる。そんな中で、自分を成長させてくれた出会いについて一つ一つ綴っていく。

浅井章博

岐阜県産 味付けは名古屋。2003年名古屋大学医学部卒。卒業後すぐにボストンで基礎研究。NYベスイスラエル病院にて一般小児科の研修を始め、その後NYのコロンビア大学小児科に移り2010年小児科レジデント修了。シカゴのノースウェスタン大の小児消化器・肝臓移植科にて専門医修了。現在はシンシナティー小児病院で小児肝臓病をテーマにPhysician-Scientistとして臨床と研究を両立している。

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アメリカでのお産に関連して 小児肝臓の専門の立場から1つ提言があります。

日本人の友人がアメリカで出産して、その時に言っていたコメント,
“誕生翌日にB型肝炎のワクチンを打つことに同意を求められたけど、別にリスクが見当たらなかったから断ったよ”

たしかに、母親が慢性感染になっていなければ、赤ん坊に差し迫ったリスクはありません。現代の日本に生まれ育った一般の人ならば、B型肝炎の話すら聞くことも少ないでしょう。 しかし、本当にリスクはないのでしょうか?
実は、それは全く反対で、日本にいるからこそB型肝炎は逆にアメリカにいるよりも気を付けなければいけない病気なのです。 アジア、特に東アジアは世界でもB型肝炎が最も多くの人に感染している地域なのです。日本では全人口の2-4%, 中国では5-18% そして台湾、東南アジアでは人口の15-20%もの人が慢性感染しています。アメリカでは1%以下です。乱暴なたとえですが、プロ野球のドームが満席になったら4-5万にですが、おおよそその中に最低でも800人はB型肝炎ウィルスキャリアーがいます。 B型肝炎は、出産時の母子感染が一番頻繁にある感染経路ですが、その他に性行為、血液の混入(同じ注射針を共用するような状況)によって感染します。感染した人のうち、一部の人がウィルスを撃退することが出来ずに、慢性感染という事態になり、長い年月をかけて肝硬変、肝癌となり、命に関わる事態になります。現在の医学の進歩により、ウィルスを撃退することが可能になってきましたが、治療には大変な労力が必要な 難しい病気です。

つまり、かからない方法があるなら全力で持って防ぐべき病気です。

今産まれた子供が成人するころ、日本はアジアの中でどういった状況になっているかわかりませんが、今よりもっとアジアの人との交流が増えていることはたしかでしょう。中国の人と国際結婚するかもしれませんし、韓国の人と恋におちるかもしれません。もちろん、これらの国でも現在感染拡大の対策が取られているので、その頃にはもっと少ない人がウィルスを持っているでしょうが、決して0にはなりません。そこに確実にリスクは存在します。日本人の中にも、ウィルスキャリアーは確実に存在します。ウィルスを持っているかどうかしっかりと検査をしたことがなければ、本人さえ気が付かずに成人して結婚していきます。性行為による感染リスクは十分考えられます。

今の病院の肝臓病外来では、毎週4-5人の東アジア系移民の子供のB型肝炎慢性感染の子供がきます。皆、母親からの出産時の感染です。どの子も病気は進行していないので、外来ではすこぶる健康に見えますが、将来に翳りがあるのは否めません。どの親子も、母親が妊娠時に検査で見つかったというパターンです。あとは、中国の孤児を養子にもらったら感染していたという例もあります。

ワクチンは目に見えにくいリスクを回避するための強力な方法です。 確かに産まれたばかりの子供に注射をするのは気が引けますが、ここは感傷的になるのをぐっと堪えるべきだと思います。実際自分も、わが子が生まれた次の日にワクチン注射をするというときは、胸が痛みました。 必死に理性で自分を説得したのを覚えています。

少し大きくなってからでもワクチンは受けれますが、3回打たなければいけないので、大きな子供にはなかなか手間な通院になります。どうせ赤ちゃんの時に小児科に頻回に通うことになるので、それをチャンスに済ませておきましょう。

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